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転生勇者とおまけの剣  作者: 帽子屋
獣人の森
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長弁と総括

「ですが、やはり一度は持ち帰らせて頂かないと、我々だけでは、どうにも。」

 狸獣人、名をポルコスという、が額に浮いた汗を拭いながらようやく口を挟んだ。

 なんで?どうして?まだ、わからないの?と、ばかりにニッコリとシロンが笑みを向ける。

 素敵すぎる笑顔は、生前から崇拝者は多数いれども友達が出来ない理由の一つだ。

「わ、我々は十三の部落に分かれていて、中には人間と手を組むなど考えもしない連中もおるんですよ。」

 自分達の事は棚上げし、そう言いつのる。

「そうそう。特に人間域と領を接しているカリオンは絶対に了承しないな。」

 狐獣人、アーミオが完全にひと事の顔で頷く。

 それを説得するのが貴方達の仕事でしょう?と、シロンが更にニコニコとプレッシャーをかけるが、通じない。

 先程まで子ども扱いしていたシロンにすっかり丸投げの獣人達である。

 おー、こりゃシロン様も大変だ。

 と、自身も丸投げのウィラードが、こちらも他人事感丸出しで腕組みなどする。

「わかりました。では、ウィラードさん。そのカリオンさんと顔つなぎして来て下さい。」

「俺が、ですか?」

 いきなり話を振られて、さっき後は任せてって言いませんでしたっけ?と目を瞬く。

「先触れだけで結構です。それと、実情を見てきて下さい。僕はその間に残りの部族を説得します。」

「はあ。…くれぐれも身の安全だけは確保願います。」

 いくら、俺がタフガイで、主人の貴方が優秀なヒーラーだからといって、またタコ殴りにされるのは本当に勘弁して欲しい。

 嫌な予感しかしない、ウィラードである。


 慌ただしくウィラードと、目付にアーミオを送り出す。

 同時に象獣人のゴーレンには他の部落長達の招集を手配させる。

 居残らせたポルコスへ、獣人の森について説明を求める。

 部落の場所、人数、気候や特産、長達の人となり。

 茶などを運ばせて雑談の体で洗いざらい聞き出してしまう。


 たかだか彷徨いこんだ人間二人、始末すれば済むことだろう。それを、いきなりの招集とは何事かと騒つく集まった獣人達の長へ。

「貴方がたの同胞が、森の外でいかな目に遭っているかご存知無いのか。」

 いきなり詰問口調でシロンが第一声をあげる。

「何?貴様ら人間の蛮行が、その原因だろう。」

 即、一人の獣人が噛みつかんばかりに怒鳴り返してくる。

「知っていて、貴方がたは何をした?ここで吠えているだけではないか。」

「無礼者!子どもだとて容赦せんぞ!」

 見れば丸腰の子ども一人である。獣人達はそうだそうだと声を上げ、シロンを威嚇する。

「遠慮は無用。これでも成年しております。」

 トーンを落としたシロンに獣人達はニヤリとする。

 生意気な事をほざいいたもの、やはり我らに恐れをなしたか、と。

 シロンを軽んじたその瞬間。

「貴方がたが動かぬなら、私と幻獣達とで囚われの獣人達を救ける。己が無能を一生恥じよ。」

「な、」

「確かに私は人族。だが、虐げられている獣人達に心痛め、人間であることを理由に己が同胞の蛮行を許そうとは思わぬ。」

 嘘偽りない、憤り。

「既に幾人かは助けた。しかし所詮は辺境の小領主にすぎぬ。だから私は幻獣に助力を求めた。人と幻獣の関係も決して良好では無い。厳しい試練と条件も課された。それでも我々は無辜の民を見捨てはしない。」

 己が身の危険も厭わない行動。

「幻獣達も我らの意思を了として共に立ってくれた。彼らの棲は神聖なもの。それを侵されるのも止む無しと万難を排して。だのに、貴方達はここで私を詰るだけなのか。人と幻獣が手を貸すのに、貴方がたは同胞をみすてるのか。」

 さあ、今こそ。

 またトーンを変えてシロンは説得する。

 幻獣という後ろ盾も出来、人間の中に反旗を翻し手引きする者もいる。何を、恐れるのだ、と。

 いつまで人間を畏怖し、虐げられ、仄暗い森に留まるつもりだ、と。

 貴方がたは人間と対等になるべきだ。

 事を起こすのになんの不都合があるのか。

 人間が闊歩する広い世界に出たくは無いのか。共に歩もうではないか。

 流れを引き寄せたら迅速に。相手に熟考の機会を与えず、利を畳み掛け儲けを匂わせる。

「ここに交易路が出来れば、必ずやヒト物金の要所となるでしょう。何人も貴方がたを蔑ろには出来ない。この森以外の獣人の郷も貴方がたの加護を求めてきます。ここは獣人の王都となる場所です。」

 版図を広げよと言ったり、都を作れと言ったりシロンの描く未来予想図がなかなか大変な事になっている。


 タイミング良く、ヌコを従えた煌華が戻る。

「皆さん、異議なしとのご判断ありがとうございます。協力感謝いたします。」

 シロンが素早く総括する。

 え?と、ポルコスの目が覚める。

 既に了承していた彼はシロンの熱弁をうつらうつらと聞き流していたのだが、一体いつ他の長も了承したのだろう。

 え?と、他の長達も顔を見合わせる。協力するって言ったっけ?とお互い探り合う。

 そこへ。

「まあ、獣人さん達が沢山いらっしゃるわ。この虫、いえ、人間にとやかく言われる事はなくてよ。おいたわしい獣人奴隷さん達は是非ともわたくし達幻獣と皆様でお助けしましょうね。」

 煌華がピシリと言ってのけた。


 にこやかに涎を拭う煌華に逆らえる獣人は無論いなかった。

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