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魔王様の行方

あの方目線のお話です。

あまりはっちゃけなかったのが残念ですが、完結です。

「なぁ、一緒に来るか?」


 旦那様と初めて出会ったのは戦場。最初は敵同士でございました。しかし、何度も死線を潜り抜け、何度も命をやり取りしている内に次第に心を通い合わせたのは過酷な戦いの日々が終わる数日前のことでした。


 他国と戦いつつも国の内側の膿を出し、周りを敵だらけにしながら勝ちぬいた男に、私は惚れぬいたのございます。


 あ、惚れたと言っても恋愛の惚れたではございませんよ。


 我が主、ロラン・デルフォード様に仕えることを決めたのは戦場の、たくさんの(むくろ)に囲まれた中でのことでした。

 

 さて、主が名将と呼ばれるようになった戦いから数年後。主は奥方様を迎えます。

 とても快活で愛らしい令嬢で、少しお年を召した(40代)の主にはもったいないぴちぴちの20代というやつです。

 

 わたくしもあの頃は若く、思わず禿げろと主を呪ってしまい、十円禿げができた主に呪いのことがばれて叱られたのはいい思い出です。

 いやいや、わたくしだって人としていろいろ間違っていたり、弱かったりした時があるのですよ。


 奥方様が来てからのお屋敷は華やいで、いつも笑いが絶えず、とても平和でしたよ。


 あ、そうそう、お二人に子供が出来ましてね。

 お嬢様です。


 いえいえ、チキ様ではございません。

 チキ様は残念ながらご養女ですが、お嬢様は旦那様の一人娘、アグネス様です。


 とてもかわいらしいお嬢様で、生まれてすぐに会いに行った私と旦那様を見てお笑いになり、旦那様よりも私の指を握ってくださって…あの時の旦那様の打ちひしがれる姿に日頃のストレスが…いえいえ、今のは秘密です。


 女性が増えると屋敷というのは華やぐもので、奥様がいらしたときも華やぎましたが、そこにお嬢様が増えたことでさらに明るさを増し、皆が幸せの絶頂におりました。


 でも、虫というものは次々と湧くのです。


 え? 意外とおいしいですか? 虫が?

 わたくしはあまり食べたことがないので何とも言えませんが、その虫ではないのですよ。


 害虫と言いますか、お嬢様に憑りつこうとする寄生虫と言いますか、とにかくお嬢様が15歳くらいの頃から増え始めましてね、後々旦那様になるフランツ様が現れるまで大変でしたよ。


 どう大変だったか?

 

 そうですねぇ・・・・


 お嬢様は大変愛らしく、何より地位が高い男の娘でしたから、たくさんの大人の男達に狙われておりましてね、闇討ち、監禁、脅しに未遂はしましたねぇ。


 されてませんよ、したんです。


 え? 何の未遂かって? それは、ふふふふふ・・・


 大人達は良かったのですよ。それで手を引いてくれましたから。

 それ以上踏み込むようなら容赦なく呪いをかける予定でしたが・・・。

 

 子供は厄介でした。

 お嬢様がそれはそれは可愛がる男の子がいましてね…、ロラン様の弟子なのですが、私達の存在も忘れて可愛がるものですから、ちょっと腹が立ちまして、その時も私はまだ若かったのでしょうね。ついつい呪いをかけてしまったのですが、その子はその後しばらく来なくなりましてね、私も忘れていたのですよ。


 ユリウス様のことかと?

 そうですがご本人には秘密に。

 

 あれがなければあの朴念仁は適当に結婚して適当に幸せな家庭を作ってしまい、チキ様に会えてなかったのですから、感謝して頂きたいですね。


 

 お嬢様がフランツ様と結婚して、幸せが続くと思った矢先に…

 えぇ、そうですね、悲しい話はやめておきましょう。


 それから数年後、チキ様にお会いしまして、わたくしにも弟子ができたのですよ。

 不肖の弟子ですがね。


 つい先頃、ようやく毛が生えたらしいですね。

 いえいえ、私の呪いを解いたのではなく、とても愛らしい年下の娘さんをお嫁さんにもらったのですよ。

 年増好きだったはずなのに…。年月は人を変えますねぇ。


 ちょっと悔しかったので将来禿げろと時限式の呪いをかけたのは内緒ですよ。ついでに足がクサくなるとか、娘にコケにされるとか、色々なオプションが付いてますが、弟子なのだからいつか何とかするでしょう。


 まぁ、何かあれば遺言でも書いてチキ様の娘のチヤ様に存分に呪っていただくことにしましょう。


 縁起でもない?


 そうですね。まだまだあなたを愛さねばなりませんしね。

 あなたも命尽きるまで共にあらねばなりませんよ。

 

 そうですねぇ…ロラン様同様に共に死ねるように呪いをかけておきましょうか。

 あ、そうそう、それでついでに次の生まれ変わり先にチキ様の周辺を選んで呪いをかけておきましょうか?


 我々がさらに楽しく長くやり直せるように。


________________


「て言うのをいちゃーどがゆってちゃ」

「呪われりょーて」


 ぴーちくぱーちく話すのは、チキの産んだ双子の男女、ダグとフレルだ。

 その報告を受けたのは双子の兄、二男のルイである。


「リチャード爺ちゃんにはあんまり近づかない方がいいと言っただろう? で、誰がそばにいたの?」


 最近リチャードが連れているという恋人が気になって尋ねれば、双子は素直に答えた。


「あえはねー」

「あえは」


「兄さん、リチャード様が来てるよ」


「「ヘンナだった~!」」


 タイミングが悪すぎた…

 すぐ下の弟カシが連れてきた老執事リチャードは、青ざめて振り返ったルイににっこり微笑み、告げたのだ。


「お早く奥様を迎えて下さいねルイ坊ちゃま。楽しみにしております」


 なにを!? とは怖くて言えないルイだった。


 

 ちなみにその頃、長年の戦いの末にようやく第五小隊隊長バーデの子供を宿したマリーのお腹に宿った赤ん坊と、リチャードの弟子のギルバート夫婦、チキの元侍女エマの幼い息子が同時にブルリと震えたのだった。



彼の来世生まれる場所も決定いたしました。

チートな呪いですね…|д꒪ͧ)…

彼がどちらの家に生まれるかは謎ですが、きっと来世も恐ろしいお方になることでしょう(笑)


ニワトリ番外編はひとまずここで終了いたします。

最後までありがとうございました。

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