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「十九章・神速」

第20地区からカシスの住まう城に

武装した3名の人間が攻め込んできた。

私たちは黄金庭園にてこれらを迎え撃つことになる。


手に持っている武器はカシスから盗んだ出力デバイスだろう。

頭に大きめのヘルメットのようなものをかぶり、顔全体を覆っている。

あの中にクローンをいれて脳波をださせているのかもしれない。


「なんだ、意外と数はすくないね。

 これなら、そんな大騒ぎする程のことはないんじゃないの。」


フリオは楽観的な様子でそう答える。


「敵を倒すのは俺とシスティナでやる。

 おまえは、足止めが精一杯だと思うぜ。

 せいぜい、死なないようにしろよ。」


はぁ・・・私も足止めがいいんだけど。


「ねぇ、カシス。

 あなたが盗まれたデバイスってどういう機能があったの。」


カシスの力をしっておく良い機会だ。

それに聞いておいた方が戦う際に断然有利だ。


「・・・・未来予見だ。

 周囲の原子配置を完全に分析し、ほとんど誤差なく未来を予測する。

 おまえとやりあった時に反応速度については勝ち目がなかったからな。

 そのためにつくったんだよ。」


私たち同じ力を持つ者同士の戦いは、相手の動きを正確によみ、

そこに適切な力を、迅速に送り込める方が勝機を掴む。


力の加減や転送速度は、デバイスの力に依存する。

カシスのものが最も優れており、私のものはそれにやや劣る。

フリオのデバイスは私のものよりも、さらに劣る。


一度に転移することができる力の数は、脳波の強さと

それを強化するデバイスの性能に依存する。

これは元々の脳波が強いフリオが優れており、私とカシスは同程度だ。


先を読む力は、補助デバイスの力と、その者の才能で決まる。

私たちの中では、私が最も早く、カシス、フリオの順になる。


カシスはその、先を読むための力を補うために

新たなデバイスをつくったようだが、まぬけにもそれを盗まれたのだそうだ。


「問題は、彼らのクローンが

 そのデバイスの力をどれだけ引き出せるのか、って所かしら。」


「まぁここまできたら、もうやるっきゃねーだろ。」


カシスはそういうと、目の前にいる3人に向かい

大量の力を送り込む。


だがすでに、カシスが力を出現させようとしたポイントには

転移を無効化させる暗黒物質が一足早く彼らによって設置されていた。

同一地点に転移させる、等という技はねらってもできるものではない。

その座標をあらかじめ知っておかなければ、できはしない。


これが、未来予見だというのか。


「ちょっ、よ、読まれてる!

 僕の攻撃も全部、無効化されるよ!」


フリオは力の数は弱いが大量の転移を同時に行使できる。

その全てが、転移を無効化されるか、即座に消滅させられている。


カシスのデバイスが、未来予見という方向に向かったのであれば、

私は彼との戦いにおいて、負けることはないだろう。

デバイスの性能や、脳波研究においてはカシスが格段に優れているが

技術力と、戦いのための技術というのは、また別なのだろうか。


「あなた達、なさけないわよ。」


私はそういうと、一瞬の後に、相手がかぶっている

ヘルメットのみを消滅させる。


「お、おまえ、なんだその力・・・。」


カシスが驚いたようにこちらを見ている。


転移の早さ、転移させる数、先読み。

それに共通して言えるのは攻撃や防御にかかる時間の速さである。

この速さを高めるために、先読みをカシスはとった。


だが、私にはそれは驚異でも何でもない。

相手が先を読む前に動けばいい。

動く速さが同程度にまでなって、初めて先を読むかどうか、という話になる。


私が3年の間に研究していたのは、速さを極限にまで高める方法。

目でとらえていては間に合わない。

目でとらえた情報をそれが脳に届くよりも速く脳波で自分に伝える。


相手の攻撃をさけるためには座標を固定してはならない。

常に自分の座標を高速で変化させ続けるために自らを転移させ続ける。

転移座標は常に、現在の状況をみて判断しなければならない。


そういう速さを積み重ねることが、先が読めていても

それに対処できないだけの速さを生み出す。


私は早々と二人目をうち倒していた。

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