「十五章・出陣」
別にそういうことを予想していなかったわけじゃない。
でも、実際に逃れられない現実を突きつけられると、少しは落ちこんだりもする。
最上階に招集され、銀の円卓でフリオも加えて3人が囲む中、
カシスから告げられたのは想像していた事態の中ではそれなりに重いものだった。
「システィナ。これは俺からの命令だ。拒否権はない。
第13地区で反乱が起きている。
いいか、おまえがいってこの反乱をおこした者を一人残らず処刑しろ。」
せめてもの救いは、この第13地区は、フィルのいる区域ではない、ということだろう。
「カシス!システィナは女の子なんだよ!
そんなことできるわけないじゃない!
ぼくが、それぐらい僕がやるよ!」
カシスと対面に座ったフリオが、反発する。
「ガキはだまってろ!
いいか、これはおまえみたいな力の弱い奴にはまかせられねーんだよ。
第13地区は、それなりの力を与えてやっていた所だ。
それを奴ら、調子にのって、これで勝てる、なんて思いこんでやがる。
実際、ロボットをいくら送り込んでもらちがあかねーからな。」
第13地区はかねてから、カシスが執拗な弾圧を繰り返していた地域だ。
そこにとってつけたような理由で強力な兵器を渡して、反乱をあおっている。
つまり、私に始末させるためだけに、こういうお膳立てをしているってわけだ。
「ここらで、神の威厳を見せるためにも圧倒的な力をみせておきたい。
そこで、戦上手なシスティナ様に、お得意の作戦で片づけてもらおうってわけさ。」
フリオと話していた内容が、腹立たしくてこういうことしてるなら、まだかわいげがある。
カシスの狙いは、私に全力をださせて、その力量をはかり、反乱を起こされても
完全に押さえ込むだけの対策を立てておくつもりなのだろう。
つまり私が全力をだして戦わなければ、勝ち目がないぐらいの兵器は与えていると思う。
そうであれば、正直フリオには荷が重い。
「別に、どうってことないわ。これぐらい。」
予想していたことだもの。こうなることはわかっていたことだもの・・・。
「そうかそうか、そうだろうよ。
それじゃ、報告をまってるぜ。
いいか、何度も言うが、反乱を起こした奴は皆殺しだから、な?」
こういう時、このオヤジはとことんウザイ。
「何度も言わなくても、わかってるわ、それぐらい。
フリオはこのオヤジが人間達の味方をして
私を殺そうなんて企まないようにみはっていて。」
「がっはっは!
それも悪くないが、俺はそんなもったいないことはしねーって。
おまえにはまだまだ働いてもらうからな。」
「し、システィナ!いいのかよ!こんなの・・・こんなの!
あきらめないって言ってたじゃないか!」
「えぇ、だから、行くのよ。」
私は自室にもどり、戦いのための準備をはじめた。
あきらめない・・・これぐらいであきらめるものですか・・・。




