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「十六章・粛正」

第13地区の地区境界線にはカシスが配った強化スーツを身につけた

数万人々が私を待ちかまえていたかのように布陣していた。


第13地区の人たちが身につけているのは

ただの強化スーツのようにも見えたが、一人をその手にかけた時、

その仕組みを知り、吐き気がした。


人が身につけるのではない。スーツの方が、人を身につけ、

人の意志を操り、人の肉体をエネルギーに変え、人の意志を奪う。

そういう仕組みになっているようだ。

おそらく一度身につけたら、二度と外すことはできないだろう。


これの、どこが反乱か。


今彼らを動かしているのは、彼ら自身の意志ではなく、カシスが

あらかじめその兵器に植え付けた、行動基礎ロジックによるものだろう。

私を試し、神の力を人々に再認識させる。

そのために、彼らは人身御供として選ばれたのだ。


彼らが完全にスーツに支配され、人としての意志を持たなければ

まだこの心が痛むことはなかった。


だが、彼らは兵器に心を支配され、肉体の自由を奪われても、なお人として生きていた。

私に恐怖し、逃げ出したいのに、兵器に無理矢理、戦わされる。

その自分自身の矛盾にとまどい、恐れ、苦悩の表情を浮かべる。


最初の数十人を払いのけた所で、標的を見つけたとばかりに

一斉に数万の大軍が私に押し寄せてくる。


「せめて、その苦悩を一瞬で終わらせてあげましょう。」


私の慈悲は、ただ死んでいく者達にのみ、ささげられる。


脳波を発し、身につけたティアラがそれを強化し、

私のもつ、細長い、剣のようにも見える時空制御デバイスに大量の指示が発せられる。


半端な火力では、あのスーツに守られ、彼らを死に導くことはできない。

あの兵器は外部火力すら、自らの爆縮機関に転用する仕組みができている。

あの兵器から人を解き放つには、4000度を超す超高エネルギーを

スーツの爆縮速度を超える程大量に降り注がなくてはならない。


どうやってこれらの兵器を大量に、彼らに身につけさせたのかはわからない。

だが、第13地区の数万に届こうかという人々が、全て兵器となりはてていた。

防護スーツといった名目であったのかもしれない。

最初はそれなりに機能するようにしていたのかもしれない。


だが、そんなことは後の祭り。

いま私の前には、大量の兵器が、人の意志をもてあそびながら、せまってくる。


防御性能の高い、これだけの数の兵器を相手にしては

私はその全ての力をつかわなければ、この場を納めることはできないだろう。

全てはカシスの思い通り・・・か。


私はさらに脳波を発し、転移デバイスを機能させる。

時空制御で大量の閉鎖空間を作り上げ、そこに大量の熱源を転移させる。

熱源は極限にまで凝縮され、触れた者のみを一瞬で焼き尽くし

消滅させる超高エネルギーの固まりへと変貌する。


それらの超高熱源は、私の周りに大量に生成され、彼らに向かって降り注ぐ。

彼らが放つ銃弾、砲撃すら全て塵とかして突き進む。

忌まわしき兵器は為す術もなく、消滅し続けた。


あぁ、先に彼らの視界を奪っておけば、この絶望的な光景をみせずに

もっと楽に死なせてあげることができたかな、と思ったのは

全ての兵器が灰燼とかし、異臭漂う荒れ果てた荒野で、一人たたずんでいる時だった。

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