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魔法設計士  ― この世界の魔法、全部バグってます  作者: 有松
第5章 迷宮深層 ― 世界の源へ
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第52話 世界の再構築


「やけに涼しいな」


横穴を進むにつれ、異様な冷気があたりを満たしていく。

そして、その突き当りにひと際光を放つ空間があった。


「何か書いてあるよ!」


光に照らされた壁面に、それは刻まれていた。


 石碑


風化しているが文字はまだ読める。


「かなり古いな」


ミレイアがゆっくりと近づいた。


「これ……古代エルフ語に近いようだけど」


「読めるか?」


「だいたいなら……多分」


ミレイアは石碑に刻まれた古代語を読み解いた。


  ――魔力は巡るもの

  ――地より湧き、地へ還る

  ――溢れし力は形を持ち

  ――命なき獣となりて、再び還る


ターニャが小さな声で呟く。


「……それって」


「魔獣のことだ」


ミレイアはさらに読み進める。


  ――循環を維持するもの

  ――過剰な魔力を形に変え整える


(……維持するもの、か)


すべてが繋がる。


 常に不安定な溶岩流。

 その過剰なエネルギーを魔獣に変える迷宮。

 増えすぎた魔獣が地上に溢れ出る。


ブリッタが斧を振りながらアリソンを見る。


「この迷宮を止めたら、魔獣はいなくなるのか?」


「あぁ、その代わり溶岩が溢れ出てしまうんだ」

「この迷宮は、それを抑えてる」


「じゃあ、どうするの?」


全員がアリソンを見る。


「本当は、触るべきじゃないんだろう」

「でも、僕たちには大量の魔力が必要だ」


「だから…」


「魔獣の代わりに魔砂を作る!」


イリスは思わず、アリソンの肩に手をかける。


「代わりが魔砂とは一体… 」


「空になった魔砂を溶岩の魔力で満たす」

「再利用するんだ」


「…」

「本当にできるのか?」


アリソンは石碑に手をあてる。


「理論上はできる」

「だけど、確証を得るのはこれからだ」


イリスの表情が一気に晴れる。


「もし、それができれば…」

「帝国は魔力不足から救われる!」


「すごいよ! 大陸のみんなが喜ぶ」


グラムベルクは興奮を抑えきれず、アリソンの肩を掴む。


「それじゃ、迷宮を改造するんだな?」

「魔獣の生成を止めて、魔砂へ注入ってことだ!」


「いや、魔獣を完全に止めるのは危険だ」

「もしもの時の逃がし先が必要だから」


アリソンはグラムベルクを落ち着かせる。


「通常は魔砂へ注入」

「ただし、魔力負荷が高くなったら魔獣生成」

「この方針でいこうと思う」


グラムベルクが力なく苦笑する。


「あいかわらず、完全に制御しとるな…」



次の日。

―迷宮の入口付近―


ターニャとミレイアはご機嫌斜めだ。


「戻って早々に仕事って、酷い!」

「少しは休もうよ…」


アリソンとグラムベルクは既に準備を始めていた。


  ――壁の紋様の書き換え

  ――迷宮の再構成

  ――魔砂の再利用実験


「悪いけど、持ってきた物資に余裕がない」

「王都に帰る前にやっておきたいんだ」


「…」

「仕方ないわね」


迷宮の地図を眺めながら、グラムベルクは胸をなでおろす。


「迷宮を掘るなんて、わしらドワーフでも数年かかるとこだが」

「あのワームならあっという間だ!」

(最高の土木担当だ)


アリソンは設計図を書きながら、次に掘る場所をイリスに示す。


「イリスが使役してくれたおかげだ、助かるよ」


「礼は不要だ」

「これは帝国のためでもある」


ワームは地中を進む。

通路を掘り、繋ぎ、構造を変えていく。

そして、迷宮は瞬く間に姿を変えていった。


――まるで、巨大なプログラムを書き換えるかのように。



数日後。

迷宮の入口付近は、一同の生活の場と化していた。

ゴーレムが作業小屋を作り、船の物資を運び込んでいる。

アリソンは今後のことを皆に説明する。


「ここを魔砂の輸出拠点にする」


「船で運び出すのね」


「そう、ミレイアの重力魔法が頼りだ」

「ノルム支流から物資を運び込んで、各国へ魔砂を輸出する」


「これはもう一大産業だな!」


「帝国も積極的に関わって欲しい」


  魔砂

  ゴーレム

  魔獣


「全部、帝国の強みだ」


イリスは少し考え、そして頷いた。


「…協力する」

「これは戦争より遥かに価値がある」


アリソンはザイオン洞窟を見つめる。


「ここに町を作りたい」


「こんなところに町?」


「工業都市だ」

「きっと、魔砂はいくらあっても足りない」


グラムベルクがニヤリと笑う。


「ドワーフの出番じゃな」


「投資もしてもらう」

「ドゥルガン王に!」


ブリッタが叫ぶ。


「あの王は絶対乗ってくる!」

「間違いない!」


これから一旦王都へ戻り、あらためて本格的な開発を始める。

だが、あの巨大な力を本当に制御できるのか?


(今は気にしても仕方ない)


アリソンはゆっくりと深呼吸する。


「これで… 世界は回りはじめる」


ターニャが隣に立つ。


「すごいことしてるよね、私たち」


「バグ修正しただけだよ」


そう言いながらも、

その言葉の重さに自分でも気づいていなかった。


「帰ったらさ、またランポイ行こうよ」

「…」

「今度はちゃんとしたやつ」


アリソンは顔を上げ笑顔を浮かべた。


「それいいね、次はどこ行きたい?」


ターニャも笑顔で返す。


「うーん… 海とか!」


世界を支える魔力の循環。

そしてその上で生きる人間たち。

アリソンは振り返る。


「うちに帰ろう」


ターニャが頷く。


「うん!」


こうして地下迷宮ザイオンは。

魔獣の巣から世界を支える装置へと生まれ変わった。


しかし、このときアリソンはまだ知らなかった。

この迷宮の制御権が、世界の均衡そのものを握る鍵になることを。


そして――

それを握ったのが、自分であることを。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

第6章からはアリソンが世界の一翼を担い、国造り、恋愛、技術革命しながら広い世界に飛び出していくことになります。

是非、ご期待ください。


ここまで楽しんでいただけたら、

ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。

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