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魔法設計士  ― この世界の魔法、全部バグってます  作者: 有松
第5章 迷宮深層 ― 世界の源へ
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第46話 生成される魔獣


白鹿が消えてから、数か月。


森は――

静かに変わり始めていた。


森の中を岩の巨人がゆっくりと歩いている。

帝国から供給されたゴーレムを改造したものだ。


 歩く

 止まる

 周囲を観測する

 そしてまた歩く


その周囲では精霊の流れが明らかに安定していた。

ルナシールドが森を見渡す。


「……以前の状態に戻ってますね」

「素晴らしいです!」


近くでエルフの少女が火魔法を試す。

小さな火球が安定して浮かび上がった。


ターニャを悩ませていた守護獣の後継者問題は、このゴーレムによって解決された。


「ほら私が言ったとおり! アリソンならできるって」


「僕だけの力じゃない」

「帝国まで協力してるんだから」


だが。

グラムベルクが腕を組んだ。


「実は問題があってな」


アリソンも神妙な面持ちで頷く。

森を安定させるためゴーレムを常に動かしている。

その結果、魔砂の消費量が想定以上だった。


「こいつかなり魔力を食うんだ」


ゴーレムは歩きながら精霊通信を中継し、周囲の魔力を

整えている。

その制御には魔力が必要だった。


「魔砂の補充が追いつかん」


しかし、帝国の都市部でも既に魔砂不足が始まっていた。


 地下水の汲み上げ

 都市ゴーレム

 農業装置


そこへさらに西の森のゴーレムへの供給。

魔力需要が一気に増えたのだ。

ターニャも声を落とす。


「王国も似たようなものだよ」

「魔道具も魔導砲も全部魔力だし…」


問題ははっきりしている。


(魔力の供給源を見つけないと)

(このままじゃもたない)



数日後、アリソンは王都に戻っていた。

久しぶりに王立学院で調べたいことがあった。


「ミレイア、わざわざ案内してくれてありがとう」

「書物庫って初めてなんだ」


高い天井に壁一面の本棚。

魔法史や研究記録が並ぶ、学院で最も静かな場所だ。

アリソンはたくさんの棚を呆然と眺める。


「魔力の供給源なんてそう簡単に見つからないよな…」


「まずは過去の資料を調べてみる?」


そのとき、窓際の閲覧机に目が止まった。

一人の学生が紙の束に向かって必死に何かを書いている。

机の上の原稿。

そこに書かれた題名が目に入った。


 ――魔獣の生成について


アリソンは足を止めた。


「……生成?」


魔獣は普通、生き物として扱われている。

だが、生成。

その言葉が妙に引っかかった。

アリソンは机に近づき、紙を覗き込む。

そこには魔獣の様々な記録が並んでいた。


 ゴブリン

 トロール

 オーク

 出現地点

 出現数


そして。


(繁殖記録が ”無し”? ってどういうことだ)


アリソンが小さく呟くと、その学生が顔を上げる。

丸眼鏡をかけた小柄な少年だった。


「あ…」

「私この子知ってるわ」

「魔獣好きで有名なケプラーっていう下級生よ」


少年ケプラーは驚きのあまり固まっている。


「え!」

「ミレイア先輩……?」


少年の耳が赤くなる。

ミレイアが気さくに話しかける。


「こんにちは、何調べてるの?」


「この研究、面白いな」


ケプラーの目が輝いた。


「本当ですか!?」


アリソンは原稿のページをめくる。

そこには魔獣の出現記録がまとめられていた。

ケプラーは興奮気味に話し出す。


「そうなんです!」

「普通の生物なら子供が生まれるはずです」

「でも…」


「魔獣は ”生まれない” んです」


「魔獣の出現数は増えてる」

「生まれないなら、どこから?」


「…地下、です」


「…?」


自分の声の大きさに気づき、ケプラーは声を下げる。


「古い文献によると」

「魔獣は地下の魔力源から湧きだす…という記述があります」


ミレイアがぽつりと呟く。


「魔獣がどこから来たかなんて、考えたこともなかったわ」


アリソンは原稿をじっと見ていた。


 地下

 魔獣

 魔力源

 

もしそれが本当なら。

アリソンは小さく呟いた。


「魔力の供給源がどこかにある…」


それから数時間。

三人は書物庫の中で文献を調べ続けていた。


 古い冒険者の記録

 王国の地理誌

 魔法生態学の論文


ケプラーが地図を広げる。


「これ見てください」


魔獣の出現地点を赤い印で書き込んだ地図だった。

大陸すべてを網羅しているかは疑問だが、一目で出現傾向が見て取れる。


 洞窟

 山岳地帯

 古い遺跡


そして。

ある一点で、ひときわ印が密集している場所があった。

アルディオン王国の遥か北方。

広大な山脈の麓。


アリソンはその赤い点群を指さす。


「ここは?」


「えーと、巨大迷宮ザイオンですね」


ミレイアが目を丸くする。


「迷宮?」


「北方最大の地下迷宮です」

「古い記録によると、深さ十階層もあるとか」


「つまり…」


「えぇ、この迷宮が魔獣の発生源かもしれないです」


ケプラーは少し言葉を選んだ。


「ただ……」

「多くの調査隊が行方不明のままです」


アリソンの中で一筋の希望の光が見えた。

つまりそこには。


「巨大な魔力源がある…か」


大陸最大の魔獣発生地。

魔力の謎に迫る場所。


「行くしかないな」


王国と帝国の同盟。

その関係を保つための新たな魔力源の存在。

仮にそれが危険と隣り合わせだったとしても…

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