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第20話 森フクロウを捕まえろ

エルフの里、古代魔道具の保管庫。

巨大な大樹の根元に作られた空洞だった。

滑らかな木の壁に、精霊の紋様が淡く刻まれている。

その中央に、巨大な鏡が立っていた。

守護獣の目。

鏡面の奥で、淡い光がゆっくりと揺れている。


グラムベルクが腕を組んだ。

「ほう……」

低く唸る。

「これが古代魔道具か」

ルナシールドが言う。

「守護獣が見た景色を映す鏡です」

アリソンが鏡を覗き込んだ。

「つまり」

「遠くの景色をここに映す装置」

グラムベルクが頷く。


「仕組みは三つだな」

鏡の縁に刻まれた紋様を指でなぞる。

「一つ」

「守護獣と繋がる精霊通信」

アリソンが言う。

「それはグラムの精霊通信具で代用できる」

グラムベルクが続けた。


「二つ」

「視界の情報を取り出す術式」

ルナシールドが鏡面を見つめる。

「光属性の術式です」

彼女は指で空中に紋様を描いた。

「光は色と明るさを持っています」

「それを分けて読み取れば」

「見ている景色を再現できます」

アリソンが頷いた。

「なるほど」

「光情報の抽出か」

グラムベルクが三本目の指を立てる。


「三つ」

「鏡への表示」

鏡面を軽く叩いた。

「これは単純だ」

「普通の鏡を魔道具化すればいい」


アリソンが笑った。

「つまり」

「三つを組み合わせれば」

グラムベルクも笑う。

「守護獣の目を再現できる」

ルナシールドが言う。

「ただし」

「守護獣は使えません」

アリソンは頷いた。

「だから森フクロウ」

 

森の奥。

ミレイアは木々の間を歩いていた。

隣にはエルフの少年。

ライリー。

弓を背負った若い狩人だった。

ライリーが言う。

「森フクロウは賢い」

「普通の罠じゃ捕まらない」


彼は枝を調べ始めた。

風向き。

枝の強度。

地面の傾き。

細い糸を張り、枝に小さな滑車をつける。

餌を吊り、落下罠と拘束罠を組み合わせる。

複雑な仕掛けだった。

ミレイアが感心する。

「すごい」

ライリーは少し得意げに言う。

「エルフの狩りだ」


そして空を見上げた。

枝の上。

一羽の森フクロウが止まっている。

ライリーが小声で言う。

「警戒してる」

「時間をかければ捕まる」

ミレイアが言った。

「待たなくてもいい」

「え?」


次の瞬間。

空気がわずかに歪んだ。

枝が沈む。

重力。

フクロウの体がふわりと落ちる。

羽ばたこうとする。

だが。

空間が重い。

羽が動かない。

ミレイアが手を伸ばした。

「はい」

ライリーが固まった。

「……え?」

ミレイアが笑う。

「捕まえたよ」

ライリーはしばらく罠を見つめていた。

そして呟いた。

「……罠いらなかったな」

 

その頃。

古代魔道具の保管庫。

机の上に小さな鏡が並んでいた。

グラムベルクが工具を動かしている。

「鏡面の魔力反射を調整……」

金属音。

やがて小さな鏡が完成する。

「よし」

アリソンが言う。

「表示装置は完成」

ルナシールドが頷く。


「次は映像抽出ですね」

アリソンが紙に魔法陣を書いた。

光属性の小型陣。

「光情報を分ける」

グラムベルクが笑う。

「お前ほんとに学生か?」

アリソンは肩をすくめた。

「設計してるだけ」


その時。

扉が開いた。

ミレイアが戻ってくる。

腕の中には森フクロウ。

ライリーが後ろでまだ呆然としていた。

ルナシールドがフクロウを抱き上げた。

静かに額に手を当てる。

精霊の光が淡く揺れる。

「小さな契約を結びます」

森フクロウの瞳が静かに光った。

 

数時間後。

試作装置が組み上がった。

小さな鏡。

精霊通信具。

光属性術式。

そして森フクロウ。

アリソンが言う。

「やってみよう」


フクロウが夜空へ飛び立つ。

鏡の前。

全員が見守る。

鏡面が揺れた。

森の景色が映る。

枝。

月。

フクロウの視界。


ミレイアが声を上げた。

「映った!」

グラムベルクが笑う。

「成功だ!」

フクロウはさらに飛ぶ。

森の上空。

やがて。

岩の多い場所へ出た。

木が少ない。

その瞬間。

映像が乱れた。

光が弱くなる。

そして。

消えた。

鏡が暗くなる。

沈黙。


ルナシールドが言う。

「岩山は精霊が少ないのです」

「砂漠や街も似たようなことに」

アリソンは考える。

(情報量に対して通信帯域が狭すぎるか…)

その時。

消える直前の映像を思い出す。

岩。

乾いた地面。

精霊の気配が薄い。

だがその奥に、

細く光る水の流れが見えた。


「川はどうかな…」

大樹の隙間から見える。

月明かりの下を流れる大河。

セレネ河。

西の大森林を水源とし。

大陸を横断する川。

ルナシールドが言う。

「水は精霊を強く宿します」

グラムベルクが笑う。

「精霊の通り道ってわけか」

アリソンは頷いた。

「次は」

「セレネ河で実験だ」


精霊通話は、まだ完成していない。

だが。


世界を繋ぐ道は、

静かに形になり始めていた。

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