彼は死んだ
「みんなに残念なお知らせがある...涼宮陸君が亡くなった。」
朝のHR、担任は開口一番にそういった。
俺の隣の席の人間が死んだ。
だからといって教室では誰かが泣いているわけでもなかった。
涼宮陸は顔が悪いというわけではなかったが特別親しい人間はいなかった。
加えて勉強は出来ず、無口で、冴えない男だった。
だから彼が死んだといっても皆それほど悲しいとも思わなかったのだろう。
しかし俺は涼宮陸のことを誰よりも理解していた。
「空君、涼宮君のこと残念だったね〜」
「あんなに良くしていたのに。」
HRが終わると周囲の女子が話しかけてきた。
俺たちは親しい、そんな風に周りは見ていた。
何もできない涼宮陸を空君がいつも面倒を見てあげている。そんな風に周りは思っていた。
実際にそうだった。陸はいつも宿題も勉強道具も弁当すらも忘れていた。そんな陸にいつも救いを差し伸べるのは空であった。
空は陸とは対照的な人間だった。
テストでは常に上位の成績を取り、スポーツ万能で、明朗快活で男女問わず友人が多かった。その上、涼宮陸の面倒まで見てあげていた。
周りはこの対照的な2人をそれぞれの名前を掛けて、天と地の差がある2人と比べていた。
「そうだな...死んじまうなんて。それよりみんなんだよ!陸が死んだのに誰も悲しまないのか!俺はそれも悲しい!」
「空君...そんなに涼宮君のこと考えてたなんて...」
「空君優しい...!」
俺の言葉を聞いた女子たちは悲しむどころか空への好感度をさらに増しただけであった。
俺は正直に悲しかった。まさかこんなにも悲しまれないとは。
涼宮陸という人間はそれほどまでに周りからはどうでもいい存在だったということだ。
しかしこれからは俺にとっても涼宮陸はどうでもいい人間になる。
なぜなら彼は死んだからだ。もう関わりようがない。
もうあいつとの関わりはなくなる。俺は嬉しかった。あいつと共にいる時間は苦痛でしかなかったからだ。
あいつがいなくなった分、学生生活を楽しむんだ。友達と遊び、女の子と恋をする。海にはそんな学生生活がある。
「そうだ、せっかくだしカラオケでも行こうよ!」
俺は周りに集まった女子たちを誘った
「えっ!?でも小鳥遊君が亡くなったばっかだし...」
「あいつに捧げる鎮魂歌を歌うんだよ!」
「なるほどー...」
「私行く!」
(海君かっこいいわ...)
女子を引き連れて俺はカラオケへ向かった。
彼女たちと歌いまくった。陸へ捧げるなんてことは最早誰も考えていなかった。
(女子とのひと時は堪らないものだ。)
俺はただそう感じていた。
そんな時間はすぐに終わってしまった。
「それじゃまたね海君!」
「明日は海君休みなんだよねーいいなー」
「休みっていってもお葬式でしょうが!」
そう俺は明日学校を休む。
陸の葬式にでなければならないからだ。




