獣衆無慚 伍 その10
防御時に、壁の光る色が変わる。
これは攻撃された術式の特性に、オートで対応しているからだ。
水属性の攻撃を防げば、青色。
火属性の攻撃を防げば、赤色。
ってな感じだ。
今はEG使いによる物理攻撃を防いでいるので、青白く光りながら一番近しい属性の色を薄く放っている。
――ん? ってことは一度でもこの壁で攻撃を受ければ、相手の属性が解かるってことか?
色んな意味で、なんともチート臭い防御術式だ。
波働も李楠と同じく、この安倍まゆらと闘う時にどうすれば良いのかを必死で考えながらも、虜にされている。
さらに問題は、まゆらの体術。
誰もが一度は聞いた事のある言葉。
結界内で、流行っている言葉。
高等な術師は高度な武術師。
実は元々、術師たちの間で広まった言葉。
まゆらは、それを体現している。
いや、それ以上だろう。
そんな言葉で、安倍まゆらを表現できない。
たったひとりの女子高生が、力こそが正義と言わんばかりの暴力男たちをまるで赤子のようにあしらっている。
骨格、筋肉量に歴然とした差があるにも関わらず、その体格差をものともしない。
ただ波働の頭にはこの時、もしかしたらの仮説が、また浮かんでいた。
――鬼道か、、、?
空海が持ち帰った密秘。
大きく分けると、それは三つの要素からなる。
肉体に鬼道。
精神に裏言。
持つは摩具。
技と呪と具を、それぞれ専門に振り分けられた人外の技術。
三つの秘術、、、転じて、“密秘”となる。
で、まゆらが使っているのが密秘の中で肉体に使う、鬼道なんじゃないかと波働は思った。
一度思うと、もうそうとしか思えない。
波働、以外に意固地。
俄然、まゆらの育った環境に興味が湧く。
土御門家と言えば、まあまあ名門。
術で言えば、陰陽系の土属性。
一般論で言えば、一つの属性術を極めるだけでも大変で、他所の術式に手を出してるヒマなんて無いハズだ。
なのに、全然系統の違う、、、ってか、まったくの“別モノ”である鬼道を使っている。
――そんな事があるのだろうか?
あるとすればまゆらに呪術を教えた人物が、実戦時に必要と思われるモノを同時に教え込んだ、んじゃないかと思う。
――土御門黒門か、、、やるな
16歳のJKの後ろに、土御門当主の影を見る波働。
もう一度、まゆらを見た。
何度見ても、そうだ。
見間違いでは、無い。
絶対そうだ。




