第2話 ひどい環境だ
「さっきの賑やかな声からは想像がつかない、悲惨な町だな。」
ヒトラーは移動し、森から町の様子を見てみることにした。
まず目に飛び込んできたのは、町の人々が営む農業だった。
「見たことがない植物だ…」
ヒトラーは遠目に観察しながら呟いた。
それは異様に青い花をつけ、背が高く、葉が鋭い形をしていた。どこか神秘的な雰囲気を放つその植物は、彼が知るどの作物とも違っていた。さらに農作業の方法にも奇妙な特徴があった。
農夫たちはまず水を与え、その後、木の棒で茎を正確に6回叩く。そして、何かの呪文のような言葉を唱えた後、植物に向かって深々と礼をする。
「…後半の行為に何の意味があるのだろうか。」
ヒトラーはその不合理さに眉をひそめた。
森の影から様子を伺っていると、突然、町に鐘の音が響いた。
その瞬間、人々は作業を中断し、足早に同じ方向へと歩き始めた。
「一体どこへ向かっているのだ？」
ヒトラーは好奇心に駆られ、周囲を警戒しながら集落に足を踏み入れた。
人々の行列が向かう先は、町の中心にそびえ立つ立派な建物だった。周囲の貧しい家々と比べて圧倒的に豪華で、その存在感は異質だった。
「なるほど、少し覗いてみるか。」
ヒトラーは慎重に建物に近づき、入口から中の様子を窺った。
そこでは、人々が一人ずつ偉そうな服装をした男の前に進み出て、何かを話していた。その光景を見ていると、次第に声が荒くなり、壇上の男と一人の女性が激しく口論を始めた。
男が女性を指差し何かを怒鳴ると、二人の兵士が現れた。
女性は抵抗するも虚しく、無理やり地下への扉の中へと連れて行かれる。
ヒトラーは眉をひそめた。
「これは…この世界でいう“教会”か？」
さらに中を見渡すと、集落全体に奇妙な緊張感が漂っていることに気づいた。
「あのクソみたいな教会によって、町は狂わされているのかもしれない。」
そう判断したヒトラーは、周囲を伺いながら、近くにいた若い男に歩み寄った。
言葉が通じるかは分からなかったが、とにかく聞いてみるしかなかった。
第2話 終
