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MASK 〜黒衣の薬売り〜  作者: 天瀬純
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【後日談】アイツら

 夏季休暇中に心霊スポットで置いてけぼりにされた日から幾分かの時が経過し、私は大学で講義を受ける日々を再び送っていた。


 あの日、明け方近くに自宅であるアパートに着いた私は、部屋で電源を切っておいたスマートフォンを起動させてみた。案の定、膨大な数の着信履歴と留守番電話、そして全てを既読するのが嫌になるほどのメールの山が、そこにはあった。私に謝罪する者、無言で先に帰ったことに怒る者、居場所を尋ねる者などなど。私を突き飛ばした馬鹿からは一応謝罪の言葉があったものの、大事にしないでほしいという旨で呆れるばかりであった。


(捨てて来て、マジで良かった~)


 その後何度も馬鹿たちから連絡が来るので、全員にメールを1通だけ送信して着信拒否にした。ただひと言、


『許さない』


と。


 どのような経緯かは分からないが、連中が心霊スポットで私にした行為が噂として拡まっている。深夜のトンネルに女性を1人置き去りにして車で逃げた薄情な連中として。他にも真偽定かではない誇張された内容が数多く囁かれ、連中の信頼度は無いに等しい。恋人に捨てられた者、バイト先にまで噂が拡まって辞めた者、女の敵として白い目で見られる者。私を除いた全員が他人から距離を置かれている。


(大学に来なくなるのも時間の問題では?)


 1番驚いたのは、メンバー内で仕切り屋だった戸畑(とばた)が実は私に好意を寄せていたということだ。肝試しで私を先頭にしたのは、もしも私が恐怖で動けなくなったら、すかさず優しくリードして惚れさせる魂胆だったらしい。


(きもっ)


奴は今、“片想いの相手をパニクって置いてけぼりにした情けないゴリマッチョ”として語られている。


 茂木(しげき)にいたっては、女性を突き飛ばして怪我を負わせた上に口外しないことを迫ったとして、ご両親のもと大学を自主退学した。いや、させられた。私は単純に関わりたくなかったのと、あの日出会った不思議な薬売りのおかげで、とっくに回復していたこともあって、どうこうするつもりはなかった。けれど愚息の行為に青ざめたお堅い職業のご両親が、治療費として厚めの封筒を持ってアパートに訪ねて来た。突然のことで対応に困るとして、後日場所を改めて私の両親と一緒に会い、治療費とともに2度と関わらないという契約書を本人に書かせた。それ以降、馬鹿の顔は見ていない。


 そうそう。あの日、私を自宅まで送り届けてくれた屋根付き3輪バイクの付喪神は、今うちのアパートの駐輪場にいる。どうやら新たな持ち主を探している最中だったそうだ。意気投合した私たちは移動手段と持ち主募集を介して利害一致したことから、奇妙な同居生活を始めることとなった。ちなみに付喪神の彼は元々真っ白な姿であったが、女子大生が乗るには味気ないと判断したのか、今はオレンジ色と黒色を基調としたデザインになっている。かなり荷物を詰め込められるので、通学や買い物などで重宝している。保険やナンバーなどの細かい手続きは、彼の知り合いである妖がひと通りやってくれた。お礼に実家から送られてきて開けていない日本酒を渡してみたら、かなり喜ばれた。

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