43話 記者会見(その4)
参加者たちはフードコートなどで昼食をとりながら、あちこちで様々な議論をしている。
「昨日に続いて、今日の午前もとんでもない記者会見になったな」
「こんなの、世界に中継して大丈夫なのかしら?」
「ヴァルータ大公国なら大丈夫だろうな‥‥ 戦力差がありすぎて、どの国も妨害工作などできないだろうしな」
「もう各国上層部は大慌てでしょうね‥‥」
「それにしても、ニュースの可能性、政体の在り方、もう考えることが多すぎて整理しきれんよ」
「しっかし、ヴァルータ料理は相変わらず旨いな。俺は複合娯楽施設が家から結構近いから、週4回はフードコートに行ってる。以前の直生活には戻れないよ」
「富裕層向けの複合娯楽施設のフードコート、いや、レストランでは、高級コース料理があって、最低3万enかららしいぞ」
「そうそう、それで貴族邸の専属料理人は、もはやただの買い出し人になってるらしいな」
「ああ、でも専属料理人を辞めて、この国で一から料理を学んでる人も多いそうだ」
「さて、午後の質問を考えないとな。ついにスプレーマ様のご登場だからな。緊張してしまうな‥‥」
司会はソフィアに戻り、午後2時から記者会見が再開された。
「では、まず、シルヴィ公爵にご質問のある方からどうぞ」
(20代女性)
「シルヴィ公爵閣下にお尋ねします。スプレーマ様たちはこれまで思念伝達などで連絡を取り合われたり、お会いになったりする頻度はどれほどだったのでしょうか?」
「そうですねぇ、個別に思念伝達や会うことは100年に一度か二度ほどあったかもしれませんね。特に仲が良いですとか悪いですとかはありませんね」
「では、大公陛下が5歳のとき、バルガス公爵を含む8人全員が一堂に会されたのは初めてのことだったのでしょうか?」
「ええ、初めてのことですね」
「それは、大公陛下の構想に共感されたという理由からでしょうか?」
「ええ。まず、私たちはアルフォンスのことを『若』と呼んでいます。最初は冗談半分だったのですが、そのまま馴染んでしまいましてね、ふふ。最初に若に接触したのは私です。アルベルトの容姿をした若が盗賊を討伐した後に偶然会ったのですが(本当は転生した瞬間に‥‥ まあ言えませんからね)、直感というのでしょうか、この方は我々の救済者になりうると感じたのです」
「救済者ですか‥‥ それはどのような意味においてでしょうか?」
「これは若にも当時伝えたのですが、長命種族にとって最も多い死因は、退屈です。刺激がない状態、興奮も充実もない状態、それが退屈です。ですので、若と会った際に感じた『この人には通常とは異なる存在であるという何かを感じる。この人と一緒にいれば退屈しなくて済む可能性がある。それは、救済』と、そのような意味です」
「なるほど‥‥ ありがとうございました」
ソフィア「では、次に、ルシフェル公爵にご質問のある方、どうぞ」
(30代男性)
「ルシフェル公爵閣下にお尋ねします。スプレーマ様全員がヴァルータ大公国にのみ存在していらっしゃるという不平等な状況を解消するため、定期的に各スプレーマ様が他国にも数年間滞在するということを検討頂くことは可能でしょうか?」
「なぜ不平等を我々が解消する必要があるんだ?」
「世界の平和のためです」
「なぜ我々が世界平和に貢献する必要があるんだよ?」
「それは‥‥」
「あのなー、シルヴィの言ったことを聞いてなかったのかよ。俺ちゃんたちは、若といると退屈しねーってんで、自らの意思で若に協力してるだけなんだよ。世界平和とかどーでもいいんだよ。だいたいなー、貨幣を無くすなんて突拍子もない発想、それを実現してしまう力、そんな者が他国にいるのか? いるわけねーだろ? おまけにヴァルータの料理以上に旨いメシがあるのか? ねーだろ? んじゃ俺ちゃんたちが他国に行く理由がないわな」
「ほ、他のスプレーマ様達も同じお考えでしょうか?」
全員が頷く。
「そ、そうですか。ありがとうございました‥‥」
ソフィア「では、次に、ウリヤーナ公爵にご質問のある方、どうぞ」
(30代女性)
「ウリヤーナ公爵閣下にお尋ねします。シルヴィ様の次に大公陛下にお会いになられたのは閣下でよろしいでしょうか」
「そやな、アタシや。シルヴィに呼ばれてな、旧エング辺境伯領の南部未開発地帯でな。そんときに『容姿は自由に変えられるけど、胸はどんなんがええ?』って訊いたら、『微乳だね』って若が」と言った瞬間、壇上にいる(ウリヤーナ以外のスプレーマ7人によって)参加者に被害が及ばないよう7種の強固な結界が張られると同時に、ウリヤーナの頭上に7種の極大魔術式が展開された。
(それはこの世界史上計測された魔力量の圧倒的最大値であったと後に報告がなされ、ニュース閲覧アプリにもその報告が投稿されたことで、スプレーマ7人の意図に反し、「大公陛下の微乳好き」という事実が大々的に知られることになった‥‥)
ウリヤーナが「冗談やがなー」と言いながら、全ての極大魔術式と結界をあっさり解除した。
シルヴィが「ウリヤーナ、悪ふざけが過ぎますよ、ふふ」と極寒の視線を向けた。
参加者たちは恐怖で固まっている。
司会のソフィアが「申し訳ありませんが、魔力の影響が残っている可能性がありますので、今回の記者会見はこれにて終了とさせて頂きます。みなさん、ご参加ありがとうございました」と終了宣言をした。誰からも苦情はなかった。
極大魔術式の(見た目に反して安全な)展開は、昼食休憩の間に決められたことだった。
理由はいくつかあったが、最大の理由は、スプレーマ達が「定期的にスプレーマが他国にも数年間滞在」という発言を不快に感じたことだ。ウピオルが「勘違いも甚だしいですね。どれほど甘えてるのでしょうか」と言い、ウリヤーナが「ほな、アワシが爆弾発言するから、そんときに」と計画を立てたのだった。
他の理由としては、「ひとまずスプレーマの力の一端を世界に知らしめる必要がある」こと、そして「質問のレベルが低すぎて、まだ時機ではない」とスプレーマ達が判断したことだ。
司会のソフィアが質問の相手の順番を決めたのも計画の一環だった。
終了後、アルフォンスは「ウリヤーナ、爆弾発言って、あんなの聞いてないよ‥‥」と orz になり、シルヴィも「さすがに私も焦りました。少々本気で魔力を開放してしまいましたよ、ウリヤーナ、ふふ」とまだ怒っている様子だった。
ウリヤーナは「まあまあ、ええがな。目的は達してんやし-」と何も気にしていないようだ。
(もうしばらく街を歩けないよ‥‥ 私的質問には回答しないとか言っておきながら、嗜好を暴露されるなんて、あんまりだよ‥‥)




