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35話 「世界代表者会議」開催の1週間前


 アルベルトの声明発表は、映像付きでスマポのニュース閲覧アプリで公開されたが、世界中の人々は、ゲデック帝国制圧の事実など既に忘れてしまったかのように、「全ての貨幣を無くす」というアルベルトの声明内容を、何度も何度も頭の中で繰り返して理解に努めた。が、現実感がなかった。

 

 しかし、スマポの為替レート表示を確認すると、あらゆる貨幣がenに対して下落し続けていたため、多くの人はこぞって、所有する貨幣をenに両替するため、両替商・各商会・en専用両替所に殺到した。


(この時点で、帝国内に設置したen両替設定所2万箇所のうち、5,000箇所を残して、残りは世界中に設置した。世界には約10万箇所のen専用両替設定所が存在した)



(「en専用両替所」という、「enとの両替(enの購入)のみ可能」という一方通行的な両替所を作ったのは、世界から貨幣を無くすためであった)



 スマポをまだ所有していない者たちは、5大商店に購入を求めて殺到した。


 アルベルトの声明発表がなされたとき、思わず「なるほど!!」と膝を打った人物が、世界に少なくとも2人存在した。

 5大商会の2人、ティボーデ会頭とシュヴァン会頭である。


 アルベルトらとの最初の会合(4年前のヴァルータ公開の数ヶ月前)から、これまでのアルベルト(ヴァルータ)の一連の行動が、ようやく全て繋がったのだ。



 アルベルト声明発表の1ヶ月後(後の「世界代表者会議」開催の直前)、金貨での為替レートの推移は以下となる。


・ヴァルータ公開前。旧3大国1枚=ベクレラ王国1.1枚=エング辺境伯領1.2枚。


・4年前(公開後)。旧3大国=ベクレラ王国=エング辺境伯領。(同価値に)

 

・3年前(公開1年後)。旧3大国1.1枚=ベクレラ王国1枚=エング辺境伯領1枚=100万en。(価値が逆転)


・2.5年前(公開1.5年後)。旧3大国1.2枚=ベクレラ王国1枚=エング辺境伯1枚=100万en。(逆転差が拡大)


・2年前(公開2年後)。旧3大国1.3枚=ベクレラ王国1.1枚=エング辺境伯領1枚=100万en。(逆転差が拡大。「en高」だ)


・1.5年前(公開2.5年後)。帝国・皇国1.7枚=ベクレラ王国1.3枚=エング辺境伯領1.2枚=ヴァルータ公爵領100万en。(大幅に逆転差が拡大)


・1年前(公開3年後)。帝国1.9枚=皇国2.1枚=ベクレラ王国1.4枚=エング辺境伯領1.3枚=ヴァルータ公爵領100万en。(皇国がいい感じに香ってきた)


・現在(公開4年後)。帝国50枚=皇国16枚=ベクレラ王国7枚=エング辺境伯領6.5枚=ヴァルータ公爵領100万en。



 ベクレラ王国とエング辺境伯領には、事前に「貨幣を無くす」という最終目標とその声明発表を知らせることはしなかった、というよりも、できなかった。


 他国に比して過剰な優遇となってしまうという理由もあるが、それよりも、世界の国々のなかでベクレラ王国だけが優越的な利益を得てしまうと、同国のプレゼンスが著しく低下する(「自分たちだけ利益を得ておいて、何かを発言する権利はない」と言われて世界との協調関係を築けない)ことが最大の不利益であると、アルフォンスは考えたのだ。



(ベクレラ王国上層部と辺境伯なら、そのことを理解してくれるだろう。まあこれまでに、ヴァルータの存在によってかなりの利益を得ていることだし。あ、辺境伯にはソフィアとマイヤが貨幣発行の停止を継続することだけは提言させたな‥‥ 家族思いということで‥‥ enへの両替までは提言していないし‥‥ ギリでセーフ!)



 なお、声明発表によっても、ほぼ影響を受けなかった平穏な地域が2種ある。


 1つはもちろんヴァルータだ。住民は貨幣をほとんど持っていなかった。


 もう1つは、都市部から遠く離れて(貨幣によらず)物々交換を行ってきた地域だ。それらの地域は、外部から必要な物を仕入れる際にも、行商人と物々交換を行っていたのだ。

(いずれはそれらの地域の代表者1人くらいはスマポを使うようになるだろうが、損失は全くなかった)



 あー、そうそう、帝国の拘束された重要人物たちは、後に解放されて、暴落しきった後、ようやく両替できるようになるけど、まあ、仕方ないよねぇ。


(その家族がスマポ購入とen両替してくれてればいいね‥‥ 家族に金庫の解錠方法や、貨幣の隠し場所などを家族に伝えてたらだけどね‥‥)



---



 アルベルトの声明発表から1週間後、ベクレラ国王が世界に呼びかけた結果、世界中の各国(国・自由都市連盟)19の代表者(およびヴァルータ代表者)が集まって会議を行う「世界代表者会議」が、声明の1ヶ月後に、ベクレラ王国の王城内の大会議室で開催されることになった。


 この時点で、ゲデック帝国は、以前に領土化されていた6王国が復活していた。

 また、ゲデック帝国の総帝には、無人島で指揮官に任命された(人望が厚く優秀な)伯爵が就任した。


(大陸全土:約700万平方km)

 ・ベクレラ王国:約200万平方km(旧テフヌト領土を含む)

 ・ゲデック帝国:約50万平方km(旧6王国復活により半分に)

 ・ザイデル皇国:約100万平方km

 ・自由都市連盟:約100万平方km(50の都市連盟)



「世界代表者会議」の前に、ヴァルータ、ベクレラ王国上層部、エング辺境伯領重臣、マーキュリー商業国上層部、自由都市連盟(50都市のうち10都市の代表者)、5大商会上層部らによって、事前の打ち合わせは完了していた。


 そして、「世界代表者会議」開催の1週間前に、以下の概案が、全ての代表者のみならず、スマポ所有者のニュース閲覧アプリに公開されていた。


・ヴァルータ公爵領は、ヴァルータ大公国として既に独立国となったこと。

(ヴァルータ公爵は、ヴァルータ大公となったこと)


・ヴァルータ大公国は、enの発行を含む関連術式を公開すること。


・各国は、貨幣ではないenのような通貨を独自に発行できること。


・ヴァルータ大公国は、ヴァルータ料理のレシピ(一部)と農業技術を始めとした各種技術を公開すること。さらに、ヴァルータ料理に必要な素材・調味料・器具などを(ヴァルータ商会を含む)6大商会と世界約1,000の中規模商会で販売を開始すること。


・ヴァルータ大公国およびベクレラ王国は、スマポ・タプリ・enの発明によって職を失った者、さらに孤児・貧困層を、ベクレラ王国の旧テフヌト領土において職業訓練を行った後、旧テフヌト領土で職に就けるよう尽力すること。また、その際の移動などについては、マジックボックスを一時的に(家財など全てが入るよう)無償拡張したうえ、転移門で旧テフヌト領土に無償移動できること。

(既に旧テフヌト領土では、ヴァルータ大公国とベクレラ王国の共同開発が大幅に進んでおり、職業訓練施設・教育機関・多くの集合住宅・複合娯楽施設・商会支店・ヴァルータ料理店なども準備ができていた)


・ヴァルータ大公国は、貨幣価値下落によって損失を被った各国に対して、enによって一定の補償を行うこと。各国に対する詳細な補償額については各国代表者にのみ情報送信し、その後の公開は各国代表者の自由裁量とすること。(但し、補償額に関する交渉・苦情は一切認められず、交渉・苦情を訴えた場合には補償が一切なくなること。あくまで「補償」であって「賠償」ではないこと)


・ヴァルータ大公国は、国のみならず、貨幣価値下落によって損失を被った個人に対しても、enによって最低限度の補償を行うこと。(但し、現時点でのen保有額が50万en以下の者に限ること。その他の但書は上項と同様とすること)


・ヴァルータ銀行は、6大商会本店・支店に設置され、個人・組織に対する融資・出資を行う予定であること。(融資・出資については別要項を参照のこと)



 ヴァルータの独立は、ベクレラ王国・ヴァルータ公爵領、そして世界中が望んだことだ。


 まず、世界としては、「武力・財力・情報収集力・技術力・人材が突出しているヴァルータ公爵領が、貨幣価値が高くヴァルータから各種技術などの提供を受けてきた豊かなベクレラ王国の一領地であるという状況は、とてつもない脅威であること」が理由だった。当然と言える。


 次に、ベクレラ王国としても、友好関係はこのまま是非とも継続したいが、あまりに強くなりすぎたヴァルータ公爵領が国内に存在することで、権力の均衡がいつ崩れるか分からない状況であった。こちらも当然と言えるだろう。


 よって、全ての意を汲んで、アルベルト・ヴァルータ公爵は、自ら独立を申し出たのである。


 同時に、アルベルト商会は「ヴァルータ商会」に、また、アルベルト銀行は「ヴァルータ銀行」と変更された。


 また、アルベルトは大公となった。

 事前打ち合わせの参加者の全員からは、「国王」を名乗るよう勧められたが、いや、さすがに国王は‥‥ とアルベルトは固辞した。

 しかし、せめて「大公」に!と押し切られたのであった。


 余談ながら、アルベルトはクルー10人にヴァルータ大公国の公爵位を授与した。

(ヴァルータ大公国にはこの11人以外に「貴族」は存在しない。アルフォンスは、他国との関係では「貴族」という肩書きは有効な場合もあるが、自国内で「貴族」など必要ないと考えていた。ベクレラ王国の腐敗貴族や、ザイデル皇国のあの「ちょっとアレな人たち」の存在がアルフォンスに与えた影響は大きいだろう‥‥)


 後に、ヴァルータ大公国の公爵10人は、実質的に他国の君主達と同等の扱いを受けるようになる。スプレーマ達とバルガスにはどうでもよいことだが、ソフィアとマイヤには便利な爵位となるだろう。


 いずれにせよ、アルベルトの声明発表によって、各国がスプレーマ達の存在を認識したことから、各国の君主達は自らスプレーマに跪くようになり、「同等の扱い」どころか、ほとんど神のような扱いを受けることになるのだけど‥‥


(「そういう扱いはケツが痒いんだよ!」などと言う下品なルシフェルを神のように扱うのはどうかと思うんだけど‥‥ っていうか悪魔なんだけど‥‥ 本人は「俺ちゃんは熾天使だって!」と否定してるけど‥‥ まぁそりゃぁ悪人ではないけど‥‥)



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