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19話 ヴァルータ公開式典


 いよいよ「ヴァルータ公開式典」が迎賓施設で挙行される日がきた。


 アルベルトは最初に少し挨拶をしただけで、あとはソフィアに任せた。いずれ外交を担当してもらうソフィアの顔を売っておこうと考えたからだ。能力も申し分ない。


(ティボーデ会頭なら、あの交渉時に条件説明をした女性が、変身したソフィアであったことに気付いたことだろう)


 ソフィアは、エング辺境伯の長女であることを明言したうえで、ヴァルータがどのような都市なのかを過不足なく正確に伝えた。


(過不足なく、というのは極めて優秀な者にのみ可能だ。ほとんどの者は、過剰か過小かになってしまう。情報の受け手にとって何が必要で何が不要かを想像できないと不可能だからだ)


 そして、シルヴィによるスマポ・タプレの説明録画が巨大モニターで流れると、誰もが食事の手を止めて見入っていた。来賓たちはとても興味をもっている。


 これらは同時に外交・商業関係者が集まっているスタジアムの巨大モニターでも同時に流されていたが、そちらでは関係者たちが興奮し、あちこちで様々な意見が交わされたようだ。


 5大商店の本店と支店で同時発売する旨も公表した。


 そして同時に、1年後からヴァルータ入都にかかる入都税が発生し、その支払いはスマポ所有者のみ可能とし、さらに2年後からは全てのアルベルト商会店舗とヴァルータ認可店(複合娯楽施設や料理店など)においては、スマポ決済のみとすることも発表した。


 無事に公開式典を終え、来賓たちは係員たちによって富裕層用ホテルに案内された。ヴァルータ内部の(機密施設を除く)地図も渡された。


 翌日の外交・商業関係者による会見もソフィアが担当した。

 おおむね想定問答通りだった。

 アルベルトやシルヴィの正体については「公開しておりません」、今後のアルベルト商会のスマポ・タプレ以外の商売の多角化については「スマポのニュース閲覧アプリなどによって追って公開予定です」と回答した。

 スマポ・タプレについては、シルヴィの説明録画が有効だったのだろう、踏み込んだ質問はほぼなかった。


 なお、外交・商業関係者よりも諜報員の方が多かった。

 ただ、諜報員については、重要施設には全て結界が張ってあるため、(都市の入口で探知されて泳がされた後に身柄確保された暗殺者と違って)そのまま都市見学を楽しんでもらうことにした。


 重要施設の結界突破を2度試みた者は存在しなかった。1度のみ突破を試みた数十人はいたが、警告音声を聞いて諦めたようだ。

 3大国から様々なルートで事前に情報を得ていたのだろう。諜報員同士というのは相互利益のためつながりがあることが多い。


 なお、身柄拘束された暗殺者は、以前に結界突破を試みた3大国の諜報員たちと同様、記憶改変して情報送信術式を体内に埋め込まれ、そっと送り返されて、以降は多くの情報を寄越してくれることになった。


 来賓も外交・商業関係者も(そして多くの諜報員諸君も)、観光客用の複合娯楽施設(一般用と富裕層用)などを大いに楽しんでくれたようだ。


(諜報員諸君には内偵の任務があるのだから、楽しむためではない! という弁解も可能なのだし‥‥)


 ヴァルータ内では既にスマポ・タプレ販売店があちこちに設置されており、公開式典の日からかなりの数が売れた。


 ヴァルータから出る前に、マジックボックスを大容量に変更し、フードコートで大量の食事を買っていく者が続出した。

 事前にルシフェルが「絶対に持ち帰りに買っていくやつが大勢いる! ヴァルータの料理は世界一なんだから当然だろ! 特にカレーな! 持ち帰り用の安価な容器も大量に準備しておくべき!」と主張していたため、各種料理のテイクアウト用容器もかろうじて足りた。ルシフェル様様だ。

(後のドヤ顔さえなければ‥‥)


 こうして少し落ち着きを取り戻したヴァルータであったが、少ししてから施設や食事の噂が広がったため、大勢の観光客が途切れることがない状況になった。そのため、旅館やホテルも増築した。


 その後、スマポとタプレの噂が口コミで広がり、5大商店の大ヒット商品となり、公開式典から2年後から十数年に渡って、5大商会の年間純利益の4割を占めることになった。


 5大商会はその先見性と賢明さを発揮した。

 スマポ・タプレ関係部門の拡張によって、他部門の一部を中小商会に委託することにしたのだ。契約は年毎の更新とした。それによって中小商会も大いに潤うことになった。さすがといえる。


 なお、2年後に爆発的に購入者を増やすことになる原因は、各国でのアルベルト商会店舗とヴァルータ認可店(複合娯楽施設や料理店など)ではスマポ決済のみ可能としたこと、そして、ヴァルータの通貨政策によるものだった。



---



 ヴァルータでは、例えば料理部門の関係者には、調理工場、フードコートの店舗など、できるだけ多くの職場を経験してもらうことにしている。


 いずれ、世界中に展開されるアルベルト・ヴァルータの関係施設は、直営店のみならず、希望者には出資をして、料理店でも複合娯楽施設でも経営できるようにするためで、それは世界初の株式会社となる。


 他の模倣店との区別のため、それら施設や店舗は、光学術式で7色に変化し続ける「ヴァルータ認可店」の表示権利を得る。その効果は絶大であり、勝手に「ヴァルータ料理」などを名乗る模倣店などは駆逐されていく。


(料理関係者や娯楽関係者などがチームを組んで、出店申請をしてくれば、能力専用鑑定によって「部下/現在Lv.100人」以上が経営者であることを条件に、大型出資に応じることにした)


 前世において、株式会社(「有限責任」)は人類最大の社会的発明の1つとされていた。

 出資者において、損失は出資金額に限定され、利益は無限の青天井。

 リスクという名の変動幅の、損失幅を限定し、利益幅のみを拡大する。まさに発明であった。この発明により人類は豊かさを享受することになった。


 もちろん、申請者には、融資と出資の違いはきちんと説明した。

 ある程度の自己資金があるのなら、融資を勧めた。

 出資は返済する必要がないお金であるが、その代わり、利益が出るようになれば、出資者に配当金を支払う必要がある。

 それは、借金である融資の利子を遙かに上回ることが多いからだ。

 出資者に議決権も持たれることになるし。



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