第二章《異世界の時間》 1
『雑貨喫茶セピア』
店名の書かれた看板を提げた店の扉を開くと乾いたドアベルの音が勇輝の訪問を歓迎するように鳴り響いた。カラン、と乾いた音が耳に心地よい。
「なんか、喫茶店のイメージに忠実に作られたような内装だな」
物珍しさに見渡すと、どこかレトロチックなアンティークに彩られた店内は、喫茶店特有の芳しい香りに満ちていた。
「こんにちは~、アルさん。来ましたよ」
隣に立つアーティアが店の奥に向かって声をかけると、勇輝よりも頭一つ分背の高い、大目に見ても20代前半の男性が顔を出した。
「お、来たな。カウンター席空いてるから適当に掛けてくれ」
「あ、はい」
気さくにかけられたその言葉に頷いて席に着くと、店の主であるその男は勇輝とアーティアにコーヒーを差し出した。
「そいつは俺の奢りだ。もう少ししたら客も捌けて時間ができるから、それまでアティと話でもしながら待っててくれ」
そう言って男は再び店の奥へと歩いて行く。
「なあ、アーティア。さすがにお昼時に来たのは迷惑だったんじゃないか?」
「いえ、このくらいに来るとお客さんが少なくなっていることが多いですから。アルさんの言葉に甘えて少し待ちましょう。アルさんのコーヒーはサーベラスで一番美味しいって評判なんですよ」
優雅にコーヒーを口に運ぶアーティア。なんとなく、育ちの良さが伝わってくる振る舞いだ。
「そうなのか。……あ、ホントに美味い」
促されて口にすると、確かにそれは今まで口にしたどのコーヒーよりも美味しかった。
「そうでしょう。あとはナターシャさんの作ったケーキもオススメなんですけど、それはまた今度ですね。そのうちにまた来ましょう」
「ああ、そうだな」
アーティアの言葉に同意して、コーヒーをもう一口。やはり美味い。
「ん? 何?」
ふと、アーティアが自分の顔を見つめていることに気付いて手で口元を拭う、何かついていただろうか?
「いえ、何でもないんです。ただ本当に一週間で完治してよかったと思って。本当なら三週間はかかるって言われていたんですよ?」
「それに関しては俺も驚いてるよ。そんなに怪我の治りが早い体質でもないんだけどな」
そう、勇輝がこのファーレシアに来てから、既に一週間が経過していた。
始めの三日間は満足に動くこともできなかったというのに、四日目には痛みひとつ感じなかったというのは自分自身でも未だに信じられない回復力だ。
「まぁ、動けないよりは万倍マシだからいいさ。これから教会の手伝いもしないといけない訳だし」
あの教会で暮らすにあたって自分から申し出た条件のこともあって、傷の治りが早いに越したことはない。動けるようになったのだから今はそれでいいだろう。
「そうなんですけど、でもあまり無理はしないでくださいね。治ったばかりで無理をして大怪我をしたら本末転倒なんですから。……本当はもう少し休んでいてほしいんですけど」
「自分で言い出したことだからな。大丈夫、無理はしないよ」
そう言って、勇輝は一週間前にあった出来事を思い出した。




