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竜滅者たちの進化論(おかげさまでPVが15万を超えました。ありがとうございます)  作者: 紫木翼
1章

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死闘

 一方のシュウは、自分が斬り裂いた空間が破られたことに驚いていた。

 使えるようになってからの数年間、誰にも破られたことのないシュウの盾、『空間切断』。

 それがたやすく破られたとなると、正面突破は難しいかも知れなかった。


 わけあって『空間切断』は多用できないので、時間をかけての削り合いはシュウに分が悪い。

 そう判断したシュウは、短期決戦で決めるため再び上空へと跳んだ。

 再びシンラ目掛けて跳んだシュウにシンラが重力球を撃ってきたが、今度は命中より威力を優先した様で攻撃は狭い範囲に集中していた。


 そのためシュウは重力球を防がずに回避し、そのまま『空間切断』で足場を創ってさらに踏み込んだ。

 それに対するシンラの攻撃は、重力球二十個を二回続けて放つ命中重視の攻撃だった。

 いくらシュウでもとてもかわせず、障壁二枚と足場を創りシンラの攻撃に耐えた。


 その後攻撃が止むとすぐにシュウは跳び上がり、今度は空中からの跳躍だったためシンラを間合いに捕えることができた。

 近づくシュウを迎撃しようとしたシンラの先手を取り、シュウは袖口に忍ばせていたナイフを投げた。


 腰の刀ばかり警戒していたシンラは何とかその攻撃を回避したが、その間にシュウの接近を許してしまった。

『万物切断』発動済みのシュウの刀をシンラは左の手のひらに創った重力球で迎撃した。

 しかしわずかに拮抗した後でシュウの刀はシンラの重力球を斬り裂き、そのままシンラの左手首までを深々と斬り裂いた。


 ここでシュウの使っていた刀の刀身が粉状に崩れ、シュウは舌打ちしながらシンラのあごを蹴り砕こうとした。

 しかしシンラが急上昇したことでシュウの攻撃は空振りに終わり、その直後のシンラの重力球の雨を受け、シュウは地上へと逃げた。


 狙撃手と影使いの攻撃を警戒しながら落下していたシュウは、空中では刀を抜かずに重力球を回避し、よけきれない重力球は拳で迎撃した。

 その後地上に到着したシュウが上空を見上げると、シンラが先程シュウと攻防を繰り広げた高度まで降りていた。


 おそらくあの高度が重力球で地上を狙えるぎりぎりの高度なのだろう。

 その後シュウとシンラはしばらくにらみ合った。

 再び自分に分がある空中戦に持ち込みたいシンラとそれを避けたいシュウがお互いに攻めあぐねた結果の拮抗状態だった。


 しかし面倒な腹の探り合いはシュウの趣味ではなかったので、シュウは再び上空に跳び込もうとした。

 しかしそんなシュウに先んじてシンラが地上に降りてきたため、シュウは刀を抜くだけに留めてシンラの出方を待った。


「何のつもりだ?」


 どうやって攻略するかを考えていた相手があっちから地上に降りてきたにも関わらず、シュウの表情は険しかった。

 相手の狙いが分からなかったからだが、そんなシュウにシンラは自分の意図を説明した。


「このまま空中から攻撃をしてもあなたには決定打にはならないでしょう。それに私にもプライドというものがあります」


 先程からシュウは、常にリンシャとガドナーからの攻撃を警戒しながらシンラと戦っていた。

 十代の少年に片手間で相手をされているという事実は、長年序列一位の隊長として戦ってきたシンラの自尊心を大いに傷つけた。


「あなた相手に安全策を取ろうとした私もいけなかったですね。…単純に力で潰します」


 そう言うとシンラは地面に手をかざして能力を発動した。

 シンラの前の地面が揺れ、シンラの狙いに気づいたシュウが動こうとしたが遅かった。


 シンラの前に直径十メートルはあろうかという球体の土の塊が出来上がり、シンラはそれを手にしてシュウに接近戦を挑んできた。

 鍛錬によってある程度は差を埋められるが、離れた場所から干渉するよりも直接触れた方が能力の通りはいい。


 直接土の塊を持ったシンラは、素手の時と一切変わらない速度でシュウに近づいてきた。そしてシュウとの距離を半分程に縮めたところでシンラは土の塊を撃ち出してきた。

 回避は不可能なタイミングで、防御しても生き埋めになってしまうだろう。


 そう判断したシュウは、少しも迷うことなく刀を抜くと魔力を込め、迫りくる土の塊に投げつけた。

 シュウに巨大な土の塊を撃ち出した時点で、シンラはシュウの勧誘という今回の目的をほとんど忘れていた。


 手加減できるような相手ではなかったというのももちろんあったが、久々に強敵と戦えて盛り上がってしまったというのが大きかった。

 それに今のシンラにはシュウならこの攻撃もしのぐだろうという信頼さえあり、実際シンラの見ている前で土の塊はばらばらに砕かれた。


「ったく、何て力技だ。それ振り回して戦った方が強いんじゃねぇか?」


 呆れた口調にシュウだったが、内心では驚いて、いや焦っていた。

 今の攻撃を連発されると正直きつい。

 先程の攻撃だって刀一本を犠牲にしてようやく防いだのだ。


 一度見た以上そうたやすく食らうつもりは無いが、受けに回るとシュウでも不覚を取りかねなかった。

 こうなったら先手必勝だと意気込んだシュウの前で、シンラが口を開いた。


「素晴らしい威力です。まさかあれだけ大きな土の塊を斬り裂くとは」


 シュウが破壊した土の塊は、砕かれたというには断面がきれい過ぎた。

 あまりに滑らか過ぎたのだ。

 そう、まるで斬り裂かれた様に。


「全てを斬り裂く。それがあなたの能力ですね?本当にすさまじい能力です。何せ空間さえ斬り裂けるのですから」


 シュウの能力は強い反面単純なので、少し戦えば内容の把握は難しくない。

 そもそも外周部ではシュウの能力は知れ渡っているので、能力の内容がばれること自体はシュウとしても構わなかった。

 しかし続くシンラの発言を聞き、シュウも思わず舌打ちしてしまった。


「しかし強力過ぎて刀が能力に耐えられないようですね。どうしてガドナーさんとの戦いで能力を使わなかったのか不思議でしたが、ようやく謎が解けました」


 大抵の相手は刀を一本も壊さずに倒せるためあまり知られていない事実を指摘され、シュウは小さくため息をついた。


「ふん。で?それがどうした?残りの刀が潰れる前にあんた潰せばいいだけだ」


 そう言って今度こそシンラに斬りかかったシュウだったが、シンラは重力球でシュウを牽制しながら再び上空へと移動した。


「私はあなたの刀が折れるまで攻撃していればいいだけですが、まだ続けますか?」

「当たり前だ。今のあんたみたいに勝利を確信してる奴に勝つのが一番おもしろいんじゃねぇか。すぐにそこから引きずり降ろしてやるよ」


 そう言ったシュウだったが、強気の発言をしたにも関わらず刀を抜かずに棒立ちのままシンラを見上げた。

 そんなシュウを見てシンラは驚いた表情で煽り始めた。


「おや?大きく出た割にはずいぶんと消極的な戦法ですね?まさか私の魔力切れを待つつもりですか?」


 能力者の魔力の総量というのは、隊長になれるような能力者も平均的な能力者も大差は無い。

 個人差はあるが十代から四十代が一番多く、後は緩やかに減少していく。

 そのため今回のシュウとシンラの戦いの様にお互いに大技を連発していると、どうしても若い方が有利になってしまう。


 もちろんシンラは魔力を節約する戦い方も心得ていたが、シュウはそんな戦い方で勝てる程あまい敵ではなかった。

 戦いの前に行った重力増大程度は魔力による身体強化で防ぎ、重力球の弾幕を薄くすると容赦無くそこを突破してきた。


 そして一番の問題は、シンラがこの戦いが始まってからほとんどの時間を空中で過ごしていたことだった。

 そのためシンラは空中浮遊のために徐々に魔力を消費しており、すでに安全な上空からシュウを削り倒すといった戦法が取れる状況ではなかった。


 とはいえ地上戦に切り替えたら、二分も持たずにシンラはシュウに斬り殺されるだろう。

 シンラの重力球を斬り裂く威力の刀、シンラとの戦いの最中も周囲への警戒を怠らない隙の無さ、危ういながらも完璧に回避と前進を両立させる身のこなし。


 能力以外の技術も含めた多くの点でシュウはシンラを上回っていた。

 明確に自分の劣勢を悟ったシンラだったが、ここでシュウがとどめとなる発言をした。


「何か勘違いしてないか?俺を勧誘したいあんたと違って、俺あんたを倒す必要無いんだぜ?あんたがふらふら逃げ回るって言うならこのまま帰るだけだ」


 このシュウの発言が後押しになり、シンラは高度をかなり下げてシュウと対峙した。


「やれやれ、剣士に苦戦するなんて何十年振りでしょうか」

「調子に乗って一人で戦うからだ。別にさっきの奴と狙撃手が手を出しても文句言わないぜ?」

「…いえ、一対一で決着をつけましょう」


 そう言うとシンラはシュウの上空二メートル程の高度まで降りてきた。


「へぇ」


 シンラが自分の挑発に乗ったのを見て、シュウは嬉しそうに笑った。


「あなた相手にリスク無しで勝とうとするのは甘過ぎましたね。さあ始めましょうか」


 シンラが身の安全を捨てて降りて来た時点で、シュウもシンラもこの攻防で勝負がつくことを悟っていた。

 今の二人にこれ以上の言葉はいらず、シュウは一気に跳び上がった。


 それに対してシンラが今まで同様重力球のを撃ち出し、シュウはそれをかいくぐりながらシンラとの間合いを詰めた。

 言葉にすると簡単そうだがシンラも一ヶ所に留まってはおらず、重力球は数発でシュウの『空間切断』の障壁を破壊する威力を持っている。


 お互いの距離が近い分重力球による弾幕も厚く、いくらシュウでもこの状況下で間合いを詰めるのは容易ではなかった。

 そのためまだ半分も間合いを詰めていないというのに、シュウはすでに刀を一本消費してしまっていた。


 まだ袖口に一本ナイフを忍ばせてはいるが、能力の対象にある程度質量がないとシュウの全力に耐えられないのでナイフでは『万物切断』は行えない。

 そのため動きづらいのを我慢して刀を四本も持ち歩いていたのだが、最後の一本となった刀も後四振りで使えなくなることをシュウは理解していた。


 今のシュウとシンラの距離を考えると足場を後二回創る必要があり、全力の斬撃でないとシンラの重力球は突破できない。

 防御に使える『空間切断』が後一回分しかないという状況に、シュウは思わず笑ってしまった。いずれにしてもこの状況では小細工など不要だった。


 一気に勝負を決めることにしたシュウは、刀を振って空中に足場を創るとシンラに向けて跳び出した。

 迫りくるシュウを見ながらシンラは、これまでの戦いを思い出していた。

 シュウの三本目の刀が折れたタイミングから察するに、シュウの持っている刀はシュウの全力に二十回程しか耐えられない様だ。


 今の刀も後数回振れば壊れるだろう。

 そうなったら自分の勝ちだ。

 そう考えたシンラは、シュウを倒すのではなく防御に回らせるために重力球を放った。


 一振り、二振りとシュウは刀を振るいシンラへと近づいていった。

 そして後一歩というところでシュウは、何度目になるか分からない重力球による出迎えを受けた。

 とても回避できる距離ではなかったので、シュウは『空間切断』でその攻撃を防ぎ、その結果最後の刀の刀身が消滅した。


 しかしシュウの顔にはあきらめの表情は浮かんでおらず、シンラにも安心した様子は見られなかった。

 シュウは何も持っていない左腕で『空間切断』を発動して足場を創ると、最後の一歩を踏み出してシンラを間合いに入れた。


 シュウはそのまま空中で前転してシンラにかかと落としを繰り出したが、それをシンラは紙一重でかわした。

 シュウなら刀が無くても最後の一歩ぐらいどうにか踏み込んでくる。

 そう警戒していたシンラは、油断していたらとてもよけられなかったシュウの攻撃を回避することに成功した。


 しかし一息つく暇も無く、シュウがすでに傷だらけの左腕で攻撃を繰り出してきた。

 迎撃できる距離ではなかったため、シンラは迷わず回避した。

 シュウが追撃しやすい下や後ろは論外で、上に逃げてもこの距離では下半身のどこかに大きな傷を負わされるだろう。

 そう判断したシンラは左に回避し、先程シュウが右脚で斬り裂いていた空間に思い切りぶつかった。


「なっ、がっ…」


 回避のために勢いをつけた状態で障壁にぶつかったシンラは、傷こそ負わなかったものの一瞬行動不能に陥った。

 この状況を仕組んだシュウがその隙を見逃すはずもなく、すでに動かすことすらままならない左腕ではなく右手による手刀をシンラに繰り出した。


 当然能力で強化済みの手刀がシンラの首に当たろうとしたその瞬間、シュウ目掛けて魔力の弾丸が三発飛来したためシュウはそれを防がざるを得なかった。

 その隙にシンラは大きく後退し、刀を失ったシュウは引力に従い落下するしかなかった。


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