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 彩さんとは友達になりました。


 放課後デートですよ。放課後デート。


 アイスを食べたり、クレープを食べたりと。


 やっぱり地球の食べ物は美味しいです。魔界でも出ないわけではないですが、食べ慣れているこっちの方が好きです。




「彩さんは寮生活なんですね」


「うん。この学校の寮って楽だし。朝食と夕食は豪華だし、楽だしね。自分で作らなくていいってやっぱりいいよ」


「そうですね。自分で作ると、ちょっと面倒になりますよね」


 夕食は時々、というか、頻繁に作ってもらってるから、その辺りは困らない。


「理流は一人暮らしだもんね。面倒じゃないの?」


「んー。料理は好きなので、それほど苦じゃないですね」


 週の半分は作ってもらってますし。言えないですけど。誰に?とかそういう話になった時に説明しにくくて。


 それに、新しい料理を教えてもらっているので、毎日楽しいですしね。


「寮にも遊びに行ってみたいです」


 そういう暮らしには前世も今世も縁がないので、かなり興味があります。それを伝えると、彩さんはにっこりと笑い。


「来て来て。理流なら大歓迎!」


 トントン拍子で話が進みました。


 彩さんの話を聞いていると、とっても面白そうで。


 司馬学園が保有している寮は一棟だけ。


 通常の入り口は一つ。建物の中心に出入り口があり、そこにフロントがある。


 簡単に言うと、右が女性。左が男性。


 1Fは共用スペース。4階建ての建物で、3年間部屋は変わりません。


 本当は寮暮らしもいいなと思いましたが、流石に反対されました。隠していても、同じ場所に留まればわかってしまう方々もいるそうです。


 次期魔王って事は秘密にしたいので、ここは安全策でいきます。


 そんな話をしていたら、さっそく、今度の日曜日に遊びに行く事になりました。寮母さんに学生証を見せて受付を済ませれば、入れるみたいです。


 今からとっても楽しみです。




 彩さんと別れた後、雑貨を見に行きます。


 話の流れで私の部屋にも遊びに来る事になったのですが、今の部屋だとちょっと味気ないので、小物を増やす作戦です。小物とか可愛いものは好きなんですけど、1度30歳以上の大人を経験した所為でしょうか。


 学生時代に集めたぬいぐるみとかをリサイクルショップに売った記憶があって、買う機会をずっと逃していた気がします。


 将来的には置く場所に困る物が多い……。けれど、今日はそれを奥へと押し込めて、雑貨を真剣に見つめてます。


 犬が大好きなので、ついついそういうものを買ってしまいますが、今日はヒラヒラに挑戦しようかと……。


 このレース編みも可愛いですね。自分でも作れるでしょうか……じゃなくて。小物です。ふわふわのぬいぐるみを入手するんです。と意気込んではいたものの、結局購入したのは手の平サイズの猫のぬいぐるみセットと、小物入れのケース。


 小物はなんだかんだと増えているので、結構大きめの小物ケースを買ってみました。


 財布の中身が乏しくなりましたが、仕方ありません。


 お小遣い制度を取り入れてもらったのは自分です。


 ほっておくと、地球の通貨。しかも日本のお金を持っている両親から、際限なく貰ってしまうので、それだけは勘弁してもらいました。高校生のお小遣いを考えれば、十分過ぎる程貰ってますし。


 少し重たくなってしまった荷物を持ち、少しよろけながら歩きます。


 何百メートルか歩いた所で、前の方から歩いてくる人目を惹く色彩に気づきました。


「(見た事あるような……)」


 赤い髪に、銀のメッシュ。


 金の瞳。何処かで見たような色合いです。


 こちらに向かってくる人物の足が長いからなのか、瞬く間に距離が縮んでいきますね。


 あの独特な魔力は、魔界で見たような。


 考えこんでしまった為、足が完全に止まった私に、20代後半に見える男性が足を止めて、私へと手を差し出しました。


「……?」


 魔族だとは思うのですが、如何せん名前が出てきません。


「このような場所でお会いするとは思いませんでした。お荷物お持ち致します」


 大人の色気を垂れ流しまくる目の前の男性の名前は……。


「セリシュさん……ですよね」


 漸く出てきた名前。頷いてくれたから、間違いじゃないですよね。


「はい。覚えていて下さり、嬉しいですよ。


 リールラリルル様」


「……理流、でいいですよ」


 久しぶりに聞くと、長い名前だと心底思う。


「よくわかりましたね。アイテムで隠しているんですけど」


「何度かお会いしていますからね。わかりますよ」


「そうなんですか。改良の余地があるみたいです」


 地味だから、目立たないと思っていましたが、天地球で私に会った人にはばれてしまうようですし。


 しょぼん、と落ち込んだ私に、セリシュさんは笑みを浮かべると。


「私は女王様に聞いていましたから、尚更わかるのかもしれません」


「そうなんですか」


「本当は学園にもボディガードを送り込みたいみたいですよ」


「……そこまでしなくても大丈夫ですよ。


 身分関係なく、友達が欲しいだけなので。


 でも、心配をかけてしまってますね」


 次期魔王が決定しているので、魔界だと友達がいないんですよね。


 天界や精霊界の次期王様たちとは仲良しなんですけど。


 やっぱり元一般人としてみたら、そういうのが一切関係ない友達が欲しくなったんです。


 すごく我儘なんですけど。


「そうでしたか。大丈夫ですよ。息子にも話していませんから」


「はい。それはすごく助かります」


 セリシュさんの息子が通う場所は、司馬学園でしょうし。


 その息子さんが知らないっていうのは、すごく助かります。


「荷物ありがとうございます」


 少しの間持っていてもらった荷物を受け取って、ぺこり、と頭を下げる。


「お気を付けください」


「はい」


 決して御身を傷つけさせないで下さい。


 そう、言われた気がした。





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