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【ドアマットヒロイン】富をもたらす侯爵令嬢は、時の伯爵の手を取り立ち去る【全10話】  作者: 九十九沢 茶屋


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10/10

10.時の伯爵の独り言 (伯爵視点 ざまぁ要素あり)

 

 ──これは私と椿で、異世界旅行をしている時の話。

 

 

 あちこちの世界を旅している時、ふと、彼女の家族であったフォルタン家がどうなったのかなと、彼女が寝ている間に、コッソリ見に行ってみたんだ。

  

 予想はしていたけれど、予想以上に衰退と言うか、惨憺たる目に会っていたみたいだね。

 

 


 父親は、家の没落後、奴隷売買をしてきた商人に騙され売られてしまい、遠い南の異国へと奴隷として安く叩き売られ、連れて行かれた。

 鉱山で強制労働されつつ、扱いがずさんな慰み物にされたりもしてるらしく、散々な毎日を過ごしてるようだね。

 休む場所も、日の当たらない暗い地下室だから、まともに太陽を拝める日は、もう来ないだろうと思う。

 

 母親は、集めに集めたあらゆる宝飾品が、目の前で全てただの泥になって、発狂してしまったとか。そんな彼女は実家の一族が引き取ったらしいけれど。

 ただ、引き取った後は、遠い北の診療所とは名ばかりの所に預けられたらしいから、実質捨てられた様なものなのかな? まあ、彼女はもう、捨てられたとかの認識はしなくなってるみたいだけれども。

 

 兄は、どうやらかなり嗜虐性が高かったらしく、高級娼館通いしていた時に、好みで無いタイプのお嬢さん方を、鞭等を使って甚振っていたようだね。それらもお金を握らせ、証拠を隠蔽もしていたみたいだけれども。

 ただそれも、お金が無くなったのと同時に、それらを曝露されてしまい、今では屈強な男達に、同じ様に鞭で叩かれ殴られ、歯を折られたり鼻を潰されたり、ご自慢の容姿が、目も当てられない状態に毎日されてるらしいけれど。

 

 妹は、買い集めていたドレスは全て塵になっただけでなく、どうやら自分の美容のために、平民を攫ってきては殺してその血を飲んだり、肌に塗り付けていたりもしていたのが発覚した。 

 ……なんというか、どこの世界にも、似たような事をする人間と言うのは現れるものなんだねぇ……。

 

 そんな彼女は、殺された平民やメイド、侍女達の亡霊に縋りつかれ、その恐怖から、ご自慢の美貌が老いて肌はボロボロ、髪も真っ白になり、すっかり老婆の様になってしまった。男性を取っ替え引っ替えもしていたようだけど、全員蜘蛛の子を散らす様にいなくなってしまったそうだ。

 その後の彼女の行方は誰も知らないらしい。

 取り憑かれた末に死んだとか、酔狂な男の慰み物にされたとか、色々言われているらしいけれど、謎なようだ。

 

 

 

 

「それぞれ随分と悲惨な目にあって、死んだり気がふれたりしたみたいだけれど、座敷童子の力を悪用していたのを思えば、仕方無い事だね。正しく使えていれば、一族の繁栄はずっと続いて行っただろうに」

 

 椿の家族だった人達の悲惨な末路を思いながら、私は太い木の枝に腰掛けて、廃墟と化した、かつての邸を見下ろす。

 邸の側には、瓦礫の山のままの、かつて椿が幽閉されていた塔も残っていて、嫌な気分にさせられた。

  

 軽く指を弾くと、塔に亀裂が走り、ガラガラ崩れ落ちると瓦礫の山の様になった。瓦礫はやがて砂の様に細かくなって行くと、ゆっくりゆっくり風に乗って少しずつ虚空に消えていく。

 

 

 

 座敷童子だった彼女にまた会いに行こうとした時、彼女が戦火に巻き込まれて存在が消えてしまっていたと気が付いたのは、戦後何十年もしてからだった。

 

 その時も、時も戻そうとしたのだけれど、座敷童子として商家に残ると言った彼女の事だ、自分だけ逃げるなんて事はしないだろうなとも思った。

 逃げるならきっと、商家の人達や妖怪達もと言うだろう。

 流石にそれは難しいのもあり、私は何も無くなった、かつて山小屋があったであろう場所で、一人茫然としていたんだけれど。

 

 生まれ変わった彼女を探してみようかなと、ふと思い立った。

 妖怪の彼女に生まれ変わりと言うのがあるかは、分からなかったけれど、それでももしかしたらの奇跡を、その時の私は求めるしかなかった。

 それに転生していたとしても、私の事は覚えてないしれないけれども。それでも、もう一度だけでも会いたくて、それから私は色んな世界の色んな場所を旅する事にした。

 

 見付かるかも分からなかったし、生まれ変わってるかも分からない。生まれ変わってても、私が彼女だと分かるかすらも分からなかったけれど。

 

 それでも探さずにはいられなかったから。

 

 彼方此方(あちこち)の世界で、前世の魔術師としての力を使って、名を上げていきながら、彼女をただ探し求めた。

 

 そうして百年近く探していた時、マリユス君の魂が私に助けを求めて来たのは、それこそ奇跡以外の何物でも無かったと思う。

 

 マリユス君に付いていき、年老いた姿のラシェル嬢を、彼女を見た瞬間、座敷童子ちゃんだったあの子の生まれ変わりだと私には分かった。

 貰ったピアスが妖力に反応していたのも決定打だった。

 

 やっと彼女に再会出来た嬉しさよりも、そのあまりの酷さの状況に怒りが湧いた。

 彼女は既に事切れる寸前だったのもあって、とにかくすぐに時を戻した。

 

 そうして、そのまますぐに馬をかけて邸に向かった。

 

 

 今度は助ける事が出来た、間に合った──!

 時が戻って、生きている彼女に再会出来た時の胸の高まりを、私は今でも覚えている。

 マリユス君はラシェル嬢を救おうとして、私の事も助けてくれたのだ。

 

 彼は、私と前世の椿の関係を勿論知らないけれど、私がこの世界で【時の伯爵】の二つ名を持ち、時間を行き来出来る噂を聞いて、それだけを頼りに、彼は私の居場所を捜し当ててきた。殺されて魂だけになった事で、他の世界にも行き来が出来る様になったからとはいえ、彼の意志の強さは凄いの言葉に尽きる。

 

 ただ私のこの術は、自分自身なら時を自由に行き来出来るけれど、私以外の人の時を操作するのは、流石に制限も条件もある。

 

 本来であれば、ラシェル嬢の人生の半分程の年齢しか時を戻せない筈だっんだけれども、マリユス君の了承の元、彼の魂を一部媒介にして、彼の生きていた寿命分の時も更に戻せる事が出来た。

 

 そうで無ければ、ラシェル嬢は時が戻っても地下牢に居る年数しか遡れなかったから、救助が困難になっていただろう。

 本当にマリユス君には感謝してもしたりない。

 

 それと、魂を一部使った事は内緒にしてほしいとの事だったから、これは生涯私の胸に秘めていくつもりだ。

 

 

 

「それにしても、マリユス君の魂が一部使われた事と、椿が前世を思い出して、座敷童子としての力を復活させられた事もあって、人の理から外れたからか、時の制限から解放されるなんて思わなくて、あれは私もビックリしたな」

 

 もしかしたら、妖力が使える様になったのも、その辺りが影響してるのかな。

 

  お陰で、あと数百年は一緒に異世界旅行出来るようになったのは、嬉しい誤算だ。

  

 私以外の人間を、時間や異世界に干渉させようとすると、精神をやられてしまいかねない危険性もあったからね。

 椿も驚いてたけれど、喜んでたな。

  

 まだ夢の中にいる彼女の事を思い、私はクスクスと笑う。

 

 月が綺麗ですね、なんて慎ましい告白をしてくれた椿も、今は私の腕の中で「好き」とまで、ちゃんと言ってくれるようになったのは、本当に嬉しいよ。

 

 

 

 

 

「さてと……。うん、もういいかな」

 

 

 塔だった砂の山はまだまだあるけれど、全部無くなるまで見てる必要も無いだろう。

 

 何となく少し気は済んだし。

 

 それに椿が起きてしまう前に戻らないとね。

 

「起きたらフレンチトーストでも、焼いて上げようかな。サラダとフルーツヨーグルトも付けて」

 

 

 椿が、嬉しそうに食事をする姿が好きなのは秘密。

 最近は和食よりも、朝はパンを食べるのが好きらしく、今はクロワッサンとフレンチトーストがブームのようだ。

 沢山食べて、寝て、楽しい毎日を過ごさせてあげたいし、素敵な着物やドレスも贈ったりしてあげたい。

 

 おはようのキスは絶対したいから、椿の目が覚める前には戻らないと。 

 

 今日も甘やかしてしまいそうだなと思いつつ、私は彼女の元へ戻るべく、木の枝をトンッと蹴って、彼女のいる場所へと帰る為に、この世界から姿を消した。

 

 

 

 

 廃墟になった屋敷と、ゆっくりと風に乗って消えて行く、かつては塔だった、砂の山を背にして──。



─End─

  


屈強な男達は、被害者の家族もいれば、家族がお金で依頼して連れて来た人達など、色々です。


またサンジェは、椿が座敷童子の時に逃がそうと考えてますが、妖怪の存在意義についてまでは勿論知らないので、逃がしても人間が沢山死ぬことでどの道存在が消えてしまう為、逃げても結果は同じだったと思います。






ヒロインの前世が座敷童子、妖怪と言う設定が浮かんだ時、ネタを練り練りしていくうちに、相手がサンジェルマン伯爵になってしまって、こういうネタいいんだろうか……となりつつも、楽しく書き上げる事が出来ました(*ˊᗜˋ)


最初の設定ではサンジェも転生させてたのですが、サンジェルマン伯爵って不老不死伝説あったよな?となり、それならばと、彼は転生せずに再会という流れになりました。

大変に年の差が出来てしまった訳ですが、椿も前世は妖怪ですし、全く気にしてないカップルです。

見た目が幼女のまま付き合うよりは全然いいかと……(≖ᴗ≖٥)



ラシェルの弟のマリユスは、異世界で氷と雪に囲まれた国の王子に生まれ変わってます。

優しいので、民に人気のある王子様です。

彼の話は話で別にあるので、そっちもゆっくり書いていけたらなと思ってます。



最後まで読んで頂き、ありがとうございました!


少しでも面白いなと思えましたら、ポイント☆やブックマーク、感想、いいねなどあると嬉しいです。


それではまた、別の物語でお会い出来たら嬉しいです。

ありがとうございました(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾

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