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安全圏にて鍋をかき混ぜる。

「私、疑いようもなく天才だったのね……?」


戦場に張られた天幕から、少しばかり離れた場所で、華奢な体に大きい兵服を着た少女は、己の余りある才能を恐れて打ちふるえている。


前々から薄らと認識はしていて、今ようやく確信に至った次第である。


湯気を上げる小さな鍋から、木匙にすくったスープを舐めれば、えもいわれぬ味わいが広がる。


たった5歳の女の子が作っていい代物じゃない。


何だったら家の料理人だって軽く超えるだろう。


「出来たか、マージョリー」


「ええ、お父様」


父親のゴス伯爵が、もったいぶって話しかけてきた。


ひとより剣が強く、ひとより魔法ができて、自分以上に強い人間を率いて戦争をするのが何よりも得意な男である。


まだ23歳と年若い伯爵で、教育と称して戦場に令嬢であるマージョリーを連れ出して、何かと戦地における技術を試させては説教をするのが好きな父親だった。


いずれ弟が育てば跡継ぎである弟の役割になるだろうが、まだマージョリーより4つ年下の弟はおむつすら取れていない。


産後の母にまとわりついてはいい加減にしろ、と実家に籠られる程度に激怒させて以来、こっそりと屋敷に残されたマージョリーを身代わりに説教して、気を紛らわしているのだ。


社交の場が戦場であるマージョリーに、それが役に立ったことは未だにないが、家長からの命令には背けない。


……まあ何か説教できる場所を探そうとする父はうっとうしいが、見たこともない場所に行くのはマージョリーには楽しい。


それが例え血の流れて、死体の積み重なる戦場であってもだ。


さて、まだ両軍入り混じった死体もある戦場でなにを、と思えば、父は威厳を込めて咳ばらいをした。


そしていかに軍が国を支えているか講釈を垂れるために、包丁すら扱ったことのないマージョリーに、この場にあるものでスープを作れと意味ありげに投げかけたのだった。


多分、過酷で劣悪で使用人すらいない環境に置いて、どのように生きるべきか云々と続けたかったのだろうが。


ケチをつけるのにもまずは味を見なければと。父親は嫌そうにスープを味見して、目を丸くするとそのままがつがつと小鍋を空にしてしまった。


一滴も残さず飲み干すと、深々と息をついている。


「…………マージョリー、これはどうやって作ったのだ?」


「ええ。すべてお父様の教えを守りました」


清潔な水は事前に汲み方を教えてもらっている。


火付け石から熾した火は、つつがなく集めた枝と枯葉をちろちろと燃えたし。


小鍋は敵軍の兵士の亡骸からちょうだいした。


塩気は自前の干し肉を、細かくちぎってから煮出した。


具となる草は道すがらに摘み、滋養強壮と味を両立させる処方で煎じているのだと。


一つ一つ説明したら、父親は顔を赤黒くさせると、絞り出すようによくやったと褒めてくれた。


普段聞き知る戦場での心得からすると、どうせ少しでも魔法や誰かを頼れば、説教が始まっていたことだろう。


何よりも自尊心の為に戦場を利用する自身に返る話だと、いつか気づいてくれるといいのだが。


部下の分までスープを飲み干していく騎士団長など、誰も慕ってはくれないだろうに。


肩を怒らせて不機嫌に去っていく父親を、マージョリーは扇子の影で忍んで笑う。


引き寄せた木箱には、父が覗きこむ前に避けておいたひび割れたカップを隠してあった。


マージョリーには十分な量である。


「いただきます」


手を合わせて目を閉じる数瞬の間を、黙とうに代える。


全て、ヒトの思うままに行動する必要なんて欠片もないのだ。


自身の為に取っておいたスープを改めて味わう。


湯気の立つほど温かなスープを、吹き冷まして飲みこむ至福は、貴族であるマージョリーには確かに戦場でしか出会えなかっただろう。


それだけは、父に感謝してもいいかもしれない。


ほう、と息を吐きだしたマージョリーは、磨き上げた水晶のようなかんばせを甘くとろかせた。


やはり、あまりにもおいしい。


ほろほろと溶けたようになる干し肉の繊維も、少しばかりの苦みが奥行きを出す香草の組み合わせも天才的である。


これはもう少し素材を考えれば、もっともっとおいしいスープが出来るかもしれない。


次は一体どうしよう、と組み合わせを考えながらであれば、苛酷な行軍もそこそこにやり過ごせる。


しかし帰還した父娘を待っていたのは、殺意すら籠った母の眼差しであった。


母が裂帛れっぱくの気合と共に繰り出した木製のランスが、うろたえる父のみぞおちに直撃した先から覚えていない。


幼い身で、鍛えられた騎士にも過酷な行軍を乗り越えたマージョリーは、帰宅直後から過労からそこそこの高熱を出して寝込んでいたからだ。


その間に、父は散々母に叩きのめされていたらしい。


既に王都では戦場に幼いマージョリーを伴ったことが明るみに出ていたらしく、療養していた母とその実家に厳重に抗議された父は、ふて腐れつつも謝罪した。


もう2度としないと誓ったのは、思ったように事が運ばなかったのも原因だろうけど。


最前線で兵士の士気を削ぎかねない上に、幼いマージョリーに敵国の兵の死体から剥ぎ取りすらさせたと、王や他の騎士たちからも盛大に非難されたからだ。


令嬢として取り返しのつかないきずができたら、親としてどうするつもりだったと問われたそうだ。


父には答えられなかったらしい。


いかに戦場で活躍しようと、貴族令嬢に残るきずは決して勲章にはならない。


ただでさえ女性が本来身を置くのは、他者の蹴落とし合いが過酷な社交と政治の場だ。


気力と体力を削り、時に致命的な策略を進んで呑みこむ。


病と怪我を、抱え込んで生き抜けるほど柔な世界では決してない。


貴族としての特権に包括される面倒を乗り越えるには、本人の才覚と強靭な精神だけでは足りなかった。


そして足りぬ女を、相棒よめに選ぶ家がどれほどあろうか。


それを女騎士だった母の境遇で知っていただろうと、散々詰められたのである。


父は娘に格好をつけていた手前、決まり悪くて事情を説明にも、謝りにも来なかった。


母は今後の生活を考えて、父の考え無しの失態を事細かに教える時期じゃないと判じたようだ。


病床のマージョリーに、詳細を教えてくれたのは見舞いに来た母方の叔父である。


いずれゴス伯爵が嫡男を壊さないようにする練習用、といったマージョリーの扱いに、酷く腹を立てていたのであった。


兄妹が多く、家計の為に槍を取らざるを得なかった母は、貴族が嫁に迎えるには難のあるほど身体に疵を残していた。


それでも惚れたと熱烈にかき口説いた父の元に嫁したのだ。


そうした男気は讃えられたが、いかんせんまだゴス伯爵は18歳と若かったし、子を成した今もまだ若造と評されている。


専門分野から少し離れるだけでも、極端に他者が受ける被害への想像力が薄くなるからだ。


まあ23歳の野郎なんて、お前の想像通りにそう賢くも正しくもないんだよと悪態をついていた。


ひとしきり静かに父への悪態をつくと、留学という形で家からの逃げ場を用意できると確約して、母方の叔父は帰っていった。


母親代わりとして戦場の最前線で生きた姉を娶ったことを、殊更武勇伝として囃し立てられた父と、叔父の折り合いは当然のように悪いようだ。


命がけで出産に挑む母を忘れて、娘を戦場に引き回して遊んでいるのだから、心証が悪くなるのは仕方ないかもしれないが。




マージョリーは、もう一回だけ、自分でスープを作ってみたかった。


あの使い込まれた小鍋の中に、自分が決めた物だけ、決めた分だけ行儀よく煮えている光景がどうにも忘れられない。


それが叶わない夢になったのはそれからすぐあとのことだ。


一連の出来事に、マージョリー・ゴスの才覚を見出した王家より王太子との婚約話が持ち上がったからだ。


初めて顔を合わせた王太子であるロイドは、また父とも異なる厄介な少年だった。


やさしい理想主義者で、都合のいい解釈ばかりして、他人に良いように使われやすい。


これは王も不安になることだわねと、内心頷いた彼女は理解した。


どうしてやらかしたばかりの父がいる上に、母の実家に力もない自分を選んだのかなんて、火を見るより明らかだ。


自分はつなぎなのだ。そして破棄するときにどうとでも言い訳がしやすい。


この国を治めるには微妙に甘ったれたぼっちゃんの矯正は、本当に厭われて殺されるくらい、嫌われる覚悟で行わなくてはならないだろう。


王太子にはにかみながら小さな花束を差し出されて、気遣いだけは喜んだ後。


ハンカチで直接触れないようにリボンを解いて、数本抜き取る。


遊び心の毒花が、ふんだんに入り混じっているそれが、マージョリーに対する王宮からの洗礼であった。


「……薬師をよんでちょうだい。殿下の名を用いて卑劣な真似をする輩がどうした末路を辿るのか、思い知らせる必要があると進言してもよろしくて?」


よくわからないまま物々しくなる空気に、きっとどうにか仲良くできればと望んでくれただろう王太子の顔が、怯えてくしゃりと歪んだ。


ごめんね、と一生懸命に謝る少年に、マージョリーは控えめに微笑みかけるしかできない。


王子様のまだ幼くって真ん丸な目は、輪郭がぼやけるほどに涙を溜めている。


それでもなんとか泣くのを堪えて、嗚咽をこらえて口元がひんまがっていた。


概ねのものに一定の才覚を示すマージョリーは、貴族のままでヒトに優しくすることだけは得意ではなかった。


王宮の優しいひと達にロイドを託すには、下手人の捜索で現場が荒れていたので。


騎士団の警備する一室で、お茶会と慰め代わりに、とんできた薬師も交えて、図鑑と標本を見比べながらの、本当に恐い野草の話が開始された。


見た目がいいので紛れ込ませやすい、触れるだけでかぶれるゴウマ草とか。


部屋に飾るだけで魔力が蓄積して、魔法を使う際の感覚が弱るケレン花とか。


草花の類は、華やかであれば詳細に興味を持たない貴族の隙を縫って、策略として用いられやすいのだ。


病を得るほどに虚弱であれば、より効果も強くなる。


うきうきと不幸な実例を語るマージョリーと薬師に、発言権を求めて王太子が挙手をした。


目は図鑑に釘づけだが、いかんせん倒れ込みそうなほど顔色が悪いし、震えている。


「あ、あのね、そのケレン花と、話に出てなかったミチョウ枝、綺麗だからってメイドが毎日あちこちに飾ってるんだけど……」


即座に王族の私室にも調査団が入り、結論を言えば首を切る人間が花束の件で3人、私室の花の件で更に20人ほど増えた。


どうもそれ以外にもまずい魔法の数々が使われていたようで、生活にも支障をきたしていたらしい。


生命の危機を目の当たりにしてか、ロイドは見違えるように勉学にも魔法にも取り組んでいる。


微妙に判断能力に欠けて、集中が続かずに。魔法や勉学もいまいちだったロイドの能力は、これを機に上がっていった。


それと同時にやたらと自己判断を尊重しろと、言外に要求してくることも増えた。


良い傾向ではある。


だが隣国から留学して来た姫に、懸想し始めた時はどうしようかと思った。


婚約者だ。


他人に懸想されて傷つくだろうか、と思ってはいたが、驚くほど心は凪いでいた。


何が言いたいのか分からない上に、あまつさえ話題に困って他の女を褒め始める恋文とかに、丁寧に赤を入れてきたマージョリーには、成長すら感じ取れた。


彼女の弟は、両親よりも権謀術数の手腕を恐れられた父方の祖父に似ていて、手のかかる、などと思わされた経験などない。


子犬のようにきゃんきゃんと吠えたて、理想に爛れて現実をおろそかにした男の子は、配偶者よりも手のかかる部下くらいの認識であった。


それが楽しいかと言われれば否、続ける気かと問われれば冗談ではないと返す他ない。


幸いにも、王太子様も同様の認識であったようだ。


相手がクリスティアーネという隣国の宝玉、なんて辺りが大変身の程知らずで、実にマージョリー好みである。


これでロイドでも支配しやすそうなか弱い女の子を対抗馬に持って来られていたなら、斬首覚悟で泣くまで張り手くらいは喰らわせていただろう。


やっと根性が出てきたじゃないか、と内心舌なめずりをしたマージョリーは、鼻歌まじりにペンを取った。


報告を聞いた王より命下ったならば、後は仕上げだけだ。


彼女はひとがやっちゃいけないことをためらわない。


死体の荷物を漁ることもできるし、追剥した物資で煮込んだスープに幸せに舌鼓を打てる。


両親を裏切って死することも厭わないし、貴族の役目を放り投げて早々に表舞台から消えてしまえた。


婚約破棄祝いに、何人道連れにしてやろうか。


そして事が成った時にどのルートで逃げるか。どこに逗留するか。


それこそゴス家の至宝と称された度胸と知恵をいかんなく発揮して、完璧に立てられた計画だった。


なんならプレゼンテーションの上で、国王を共犯にできた時点で勝利が確定していた。


何しろ国王はちゃんと王様だったので。


そろそろはつこいにのぼせ上がった王太子に圧をかけたかったし。


不穏な連中を一掃できるし、ゴス伯爵家より良縁が結べるし。


しぶとく王位を狙い出して邪魔な王弟とか、ちゃんと今回だけで殺してくるならいいよって言ったのだ。


なんなら出奔した後に使える報酬まできっちりと寄越してきた。


ノリのいい国王で最高であった。


うきうきで実行した。


王弟と誘拐犯どもを一掃した彼女は、庶民で生きるには些か長すぎる髪を、髪飾りと共に背中の当りで切り落とし、黒い森の安全地帯に仕立てていたねぐらに帰宅したのだった。


生まれ持った馬鹿みたいな魔力量と練り上げられたコントロール。


王家の千里眼宝鏡(許可済み)で、さながらゲームの模様替えの如く、実家にいながら引っ越しを済ませてある。


大変えらいマージョリーはちゃんと泥と返り血まで落として、ふっかふかのおふとんに飛び込んだのだった。



そしてその深夜に飛び起きた。


「…………いや、これっ……鬱系アプリゲーじゃん!!ばかじゃん!!!!」


さて、話は16年より前にさかのぼる。


まだ『マージョリーに成る前だった誰か』が生きていた頃だ。


『誰か』はそこそこ年季の入った社会人。


生活とか環境に疲れていると、適当にボタン押しても高速でハッピーエンドとケリのつく話が読みたくなるタイプであった。


ついでに自分でもわかりやすい悪事を働く悪人への、勧善懲悪とか最高だ。


しかしここら辺は作者のさじ加減一つで胸焼けするので、概ねほんわかとかわいい、誰も死なないおもしろ話を探して、日々ネットの海を漂っていた。


マージョリーの名を彼女が知ったのは、よくわからないで適当に買ったせいで、容量がみっちみちだった携帯に、片っ端からダウンロードしたアプリの一つである。


優しくないゲームは片端からアンインストールしていたが、その内の一つだった気がする。


思い入れがないから、そのゲームの名前が思い出せない、と転げまわる。


いやそもそもちゃんと読んでない。


たしかマージョリーは悪役の貴族令嬢、だったはずだ。


これがまあ、本物の悪党であった。


自身が玉座に座るつもりで、本当にクーデターの一歩手前までは成し遂げた。


ゆったりと波打つようなプラチナの髪、ややオレンジの混じった赤い瞳、出るとこでて要らんとこは引き締まった身体のゴージャスな美女。


黒と赤で仕立てられたドレスが冗談のように似合っていた。


今は適当に自国で無事を案じている振りをしてるだろう国王も、マージョリーが道連れにした王弟一派のあれこれで、早々に死んでいたはずである。


かなり消耗していた王弟一派だったが、原作だとマージョリーに飼われていたから元気だった。


そしてその凶悪さは今回の比ではない。


本来のマージョリーは、幼児期に命の尊さとか、個人の尊厳を学ぶ前に、生命吹き飛ぶ戦場に連れていかれ、父の説教が面白おかしく作用したお嬢様である。


頭は切れるし腕も立つので、国を掌中に収めるために大変好き勝手やっていたのだ。


勝気系ヒロインであるクリスティアーネという隣国の姫と、頼りない王太子ロイドが手を組んで、とことん理詰めでマージョリーを追い込む。


しかしロイドは悪役令嬢につられて、だんだんタガが外れてヤバくなってくるストーリー。


なお一章終了時点では、ロイドがクリスティアーネの尻に敷かれて、実質隣国の属国みたいな扱いになっていたはずだ。


3年後設定だった二章開幕時に一章時のヒーロー、ロイドが処刑されていたのでその時点で読むのはやめた。


ロイド亡き後は、そのままクリスティアーネが母国の舵取りをしていたはずだ。


隣国からの乗っ取り案件をそのまま受け入れざるを得ない、母国の儚さがうかがえる。


多分誰かへ殺意があったり、大変元気な時だったら、どうやったらそんなに人の嫌がること考えつくのと逆に楽しんで読めたかもしれない。


だけど、次々起こる誰にも優しくないし報われない展開が、元々つかれている社会人には酷くつらいつらいだった。


もっと羽毛布団で包み込むような優しい話だけほしいのに。飛んだ事故である。


1週間は無駄に熱演されたロイドの呪詛を引きずったので、本当ゆるされない。


なんならマージョリーがあんなつまんない連中に止めを刺された辺りで冷めていた。


そこまでやったんならもうクーデターも完遂してほしかった。


それで早々にアンインストールをキメたのだった。


なんでこんなごりっごりのミステリバイオレンスノベルゲームのアプリアイコンを、序盤で旱魃の生贄にされたほんわかした絵柄の女の子にしやがった?言え!説明文だってぼかしてただろうが!いらん!そんなドッキリは!


とは。初見の雰囲気に騙された社会人の叫びである。





それでどうしたか。


現代人だった頃の怠惰を思い出した彼女は、黒い森の一角で本気で何にもしない日々を経てこれはやばいなと思い直した。


無限に暇をつぶせる携帯端末がなくても、人間ここまで怠惰になれる。びっくりした。


なまじなんでも出来るせいで、特別にこれがやりたいということがない。


下手すれば終日ベッドでごろ寝して、カロリー消費もないので一食あるかないかの生活である。


それで適度な労働を求めて開店したのが、黒い森を歩く冒険者向けの飯処である。


稼ぎ度外視で、女将お薦め汁物と、氷魔法でよく冷えた酒が数種類ある。


皆一様に魔法のネオンサイン看板が光る山小屋に、武器を構えて押し入って来るのが笑える。


飯処って蛍光グリーンで輝いてあるのに。


それを蹴散らすのもいい運動になったし、ゲーム同様経験値の概念があるのか更に腕も磨かれた。


何度か魔法を使って吹き飛ばせば、冒険者共にも上下関係を叩きこめたらしい。


今や冒険者共も頭を低くして店に入り、熱いため息とともに汁物をすすり、和気あいあい酒を呑んで帰るようになったので。


生半可な冒険者を平らげる黒い森の飯処は、静かに繁盛していた。


「姐御のスープは本当にうまいですね……」


「姐御!!スープとビールのおかわりをよろしくおねがいします!」


「姐御さん、暖炉でパンを炙ってもよろしいでしょうか」


「お姐!この前言ってた魔法教えて!」


「お酒の仕入れで提案が……」


…………まあ壁と話すよりは有意義である。女将とよべって言ってるだろうが。


大鍋に作ったスープが底つきそうだったので、別鍋に鶏団子を木匙で放り込みながら、マージョリーは適当に客をあしらっていた。


この後来店する、懐かしいお客のことも知らずに。

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