第16話 遺跡内の魔物たち
森の遺跡の中は実に湿気との戦いだった。なんとも言い難い空気が流れていた。
だがライトとアル-シャはそんな空気を一新するように突き進んでいた。どうやらこの遺跡は本当に魔物の巣窟と化していた。
もしかしたら本当にアル-シャの言ったとおりのような魔物が出ても不思議ではなかった。
そんな空気の中で通路を遮るように三体のゴブリンがいた。名はボブゴブリン。ゴブリンの中でも物の価値が分かる人型の魔物だ。故に武器と楯は錆び付いていなかった。
これは実に骨が折れそうだった。なぜならボブゴブリンは腕前もそこそこだからだ。まだ握りたてのライトで通用するだろうか。
「ライト。余り……無理はするなよ」
心配したアル-シャはライトを案じた。一方のライトは案じてくれていると思ったが無理をしなければ突破なんて無理と思っていた。だが反論はする気になれない。
「ああ。んじゃいくぞ」
「ああ!」
比較的に勢いよく返事をしたアル-シャをおいてライトは急に走り出した。恒例と化した瞬間移動をするためにライトは走った。全ては先手のために。
当たり前のように突っ込んでくるライトの存在に気付いたのは真ん中のボブゴブリンだった。ボブゴブリンはライトを見つけたあとに首に掛けていた笛を鳴らした。
それは即ち仲間内以外にも聞こえた可能性があった。なら話は早く。ライトは瞬間移動をした。一瞬で近付いてきたライトに真ん中のボブゴブリンはなにもできなかった。
標的の顔を捉えたライトはすかさず右手で顔を掴み手中内で爆発させた。たった一回の攻撃で真ん中のボブゴブリンは顔に煙を立たせつつ倒れ込んだ。
だがライトはそれだけではなかった。すぐに短剣を取り出し倒れる前に蹴り瞬間移動をした。この距離感なら無双の時間だった。ライトの縦横無尽には驚きが待っている。
次の標的となったのは左のボブゴブリンだった。左のボブゴブリンはライトの瞬間移動にはついてこれなかったがちょっとは学習していた。楯を構え始めた。
これでは真正面での攻撃は不可と判断したライトは瞬間移動の際の着地で方向転換をし壁まで見えないほどの速さで跳んでいた。そして敵の死角を狙い止めを刺すようだ。
だがボブゴブリンはライトが着地したときの目線から動きをあらかじめ予測していた。故にボブゴブリンは楯を横に流し始めた。このままでは間に合わずに防がれる。
そう感じたライトはすぐさまに短剣を投げた。すると短剣は見事にボブゴブリンの頭に当たった。死んだかは分からないがライトはボブゴブリンにくっつき短剣を抜いた。
そしてすぐさまに次の標的に切り替えようとしたその時だった。どこからか笛の音が聞こえてきた。ライトはすぐに増援がきたと思った。ここは退くべきだと感じとった。
故にライトはボブゴブリンを踏み台に瞬間移動をし離れた。だがよくよく見れば左のボブゴブリンとアル-シャが闘っていた。これでは増援に巻き込まれてしまう。
そう感じたライトはすぐさまにアル-シャを助けようと瞬間移動をした。本来ならば敵を倒すべきなのだろうが今のアルーシャに増援ごと倒す力はない。そう判断した。
だからこそにライトはアルーシャまで瞬間移動をするとすぐさまに持ち上げた。一方のアル-シャも焦っていた。このまま数が増えると大変なことになると思っていた。
ライトのした行為は実に素晴らしいことだった。しかもすぐさまにアル-シャを下ろしていた。これも好感度が上がる要因でもありすぐに臨機応変ができた。
静かに二人が振り返るとそこにはボブゴブリンが四体になっていた。さっきと比べたら一体増えていた。もう仕方がないとライトとアル-シャは戦う決意をした。
そんな二人の決意を嘲笑うかのように最奥にいるボブゴブリンが弓を使ってきた。矢が付いておりあとは引き抜くだけだった。勢いよく引き抜かれた矢はライトに飛んだ。
ライトは飛んでくる矢を掴んだ。そして投げ返した。矢は投げ返されたボブゴブリンの額に直撃し弓使いは沈んだ。これであとは残り三体となった。
まだまだ多いと感じるがライトは減らすしかないと考え走り始めた。対抗するように真ん中のボブゴブリンも走り始めた。面白いとライトは思い勝敗はどっちになるのか。
勢いよく瞬間移動をしたライトは真ん中のボブゴブリンが投げてきた両刃直剣を短剣で弾いた。すると思った以上に強烈な衝撃だった。ほんのちょっとの痺れが起きた。
仕方がないとライトはそのままボブゴブリンに突っ込んだ。一緒に倒れ込んだがライトはすぐに起き上がりすぐさまに短剣でボブゴブリンの首を突き刺した。
そして短剣を抜こうとしたその時だった。最奥のボブゴブリンが持っていた槍を投げてきた。不味いとライトは思ったがこのままでは間に合わなかった。
仲間のアル-シャは残り一体のボブゴブリンと闘っており手の打ちようがなかった。短剣こそ引き抜いたがライトはもう駄目かと両瞼を閉じた。
「諦めるな! 少年よ!」
閉じた両瞼が一気に開いた。するとライトと最奥のボブゴブリンのあいだに一人の男性が立っていた。謎の男性は飛んできた槍を持っている楯で防いでいた。
「ぐ!? はぁ!」
余りの衝撃に声を出す謎の男性。そして手慣れた様子でナイフを投げた。まるで吸い込まれるように最奥のボブゴブリンの額に刺さった。静かに倒れ逝くボブゴブリン。
「く!? 私だって!」
悔しい思いをしながらアル-シャは闘っていた。ライトは最後のボブゴブリンを見た。するとアル-シャの両刃直剣とボブゴブリンの両刃直剣が激しく打ち込んでいた。
ライトなら短剣を取り出し不意を狙うが今のアル-シャは騎士道精神があった。故に卑怯な手が打てずにいた。だがこれではアル-シャの方が不利に見えてきた。
「アル-シャ!」
「く、くるな!」
アル-シャは意地でも自分自身の力で倒すつもりだった。それはもう人の模範となれるようにとつい無理をしていた。
「任せよう、ここは」
「無理はするな。アル-シャ」
まさにしっぺ返しだった。はたしてアル-シャは独りでボブゴブリンを倒せるのだろうか。そして急に現れた謎の男とは何者なのか。ライトはひたすらに無事を祈った。




