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第12話 あざとい商人の罠

 ライト達は洞窟内で休むことができるところを見つけ一息ついていた。そこも水晶が壁や天井などから生えており光り輝いていた。


 いまだにアル-シャが目覚める気配はなかった。だがライトはいずれ起きるだろうと思っていた。そんなライト達のところに商人の守り人がきていた。


 商人もいたお陰でアル-シャが比較的に無事であることがわかった。ライトは商人達に感謝した。だがここでもなにかが可笑しかった。


 それなのにライトは気付かないでいた。レオもまた肩の荷が下り安堵しているだけだった。そもそもこの間隔でくること自体が怪しかった。


 だが仮にライト達が気付いていたとしてもここまで診て貰ったら失礼な態度はとれないだろう。しかも商人達は焚き火もしてくれていた。


 だからと言って信用がうなぎ上りかと思うとそんなことはなかった。念のためにとライトはほんの少しの警戒心だけ持ち合わせていた。


 だが今回は感謝と言うこともあって不発で終わりそうだった。そんな仲でようやくアル-シャが目を覚まそうとしていた。ライトとレオは気付いていない。


「う……んん?」


 まるで普通に起きたかのような空気だ。もうそれくらいにアル-シャは比較的に無事だった。だがライトはアルーシャの目覚めに気付くと座りながら乗り出した。


「アル-シャ!? 無事か!」

「お姉ちゃん!」

「んん? は!? 魔物は!?」


 噛み合っていない。だがどうやらアル-シャはもう無事だ。ライトとレオは乗り出しているがアル-シャの目には大袈裟な二人が映っていた。


「はは! その元気があればもう良いでしょう」


 商人が詰め寄っては立ち止まりアル-シャに言った。なんとも気前がよさそうな雰囲気だ。商人の守り人も心なしか安堵しているように思えた。


「私は……。そうか。気を失って」


 アル-シャが上半身を起こすとそう呟いた。下を向きいかにも陰湿だった。面目の立ちようがないと思い目線を合わせようとはしなかった。


「お姉ちゃん! お兄ちゃんが助けてくれたよ!」


 正直の話だがアル-シャは素直に喜んで良いのかが分からなかった。むしろ逆にレオの言葉が重しとなった。これでは前向きにはなれない。


「違う。むしろ俺が助けられたんだ。こんなにも人が恋しくなったのは初めてだ」


 貫禄のある発言だがライトはまだ若い。それなのに達観している上に実に謙虚だった。むしろこれで良いのでは? と思えるくらいだ。


「私もだ。……ライト。有難うな、約束を守ってくれて」


 この時のアル-シャは尊い眼差しをライトに送っていた。少しは肩の荷が下りアルーシャはすっかり元気を取り戻した。


「それは俺の言葉でもある。アル-シャ、レオ、遇えてよかった」


 独りだったらと思うとライトは絶対に負けていた。お金もなく世知辛さを知り死んでいただろう。こんなにも人が恋しくなるなんて思いもしなかった。


「さて……と!」

「うん?」


 アル-シャが元気を取り戻すと立ち上がろうとした。それを見たライトがもう良いのかと言わんばかりに心配した。レオも心配していた。


「私ならもう良い筈だ! いこう! レオの生まれ故郷へ!」

「お姉ちゃん。……うん! いこうよ! ライトもさ!」

「ああ。いこう」


 この三人に芽生えたのは確かな友情だった。だがそれも一握りの悪によって消されようとしていた。この世に悪があるとすればそれは人の心だと思えた。


「待て! そろそろだ」

「は!?」


 商人の守り人によって進む道が遮られた。そう言われたライトはとくに衝撃を受けていた。助けてくれた筈の商人ですら進む道を遮った。


「さてと……茶番はこの辺で良いでしょう。まさかですがあの主を倒すとは」

「なにを言っているんだ? お前らは!」

「アル-シャ。まさかこいつらも」

「賊だ! 思い出したよ! こいつら――」


 レオは思い出した。賊の親玉とこいつらは繋がりがあった。鮮明に思い出した。まさに商人と賊の親玉が逢っているところを目撃していた。


「おや? でももう遅いですよ?」

「お前らはここで死ぬ。もしくは――」

「そのとおり。だがそこの女は生かしましょう」

「く。お前らもか!  ライト! レオ! やるぞ!」

「うん!」

「ああ。望みのままに」


 レオもやる気だ。短剣を持ち身構えた。一方のライトも倒す相手を理解し身構えた。アルーシャは短剣を取り出そうとしたがないことに気付いた。


「ふ。ふはは。商人よ。手癖が悪いぞ」

「ふふ。人聞きの悪い。返して貰っただけですよ」

「お前ら! どこまで!」

「ふん! 商売なんてどこもこんなもんですよ! おい! やってしまえ!」


 アル-シャは腐った世の中を見て凄く傷付いた。その傷を付けた商人達をライトは許さなかった。レオもまた改心し家族のような二人を護りたかった。


「ふん! 銀髪赤眼か。雑魚――」


 ライトの静かな怒りの掴みが炸裂した。商人の守り人は顔を掴まれた。一瞬の出来事に商人の守り人は混乱した。


「馬鹿な!?」

「なにか……言い残すことは?」

「この……雑魚風情が!?」


 ライトは改心してほしかった。だが商人の守り人は挑発してきた。だからライトは容赦なく顔を爆発させた。商人の守り人の顔からは煙が立った。


「う、嘘でしょう? ひぃ!?」


 残った商人は及び腰になり尻餅を付いた。魔喰鬼の前では逃げ切れないと思え。余りの恐怖に商人は持っていた短剣を振り回した。だがライトは短剣を蹴り左手で取った。


「ぐ!? ……ひぃ!?」

「なにか……言い残したことは?」

「お前は……なんだ?」

「ふ。そうか。それで良いんだな? 俺か。俺はしがないただの魔喰鬼さ」

「ひ……ぐほ」


 商人は最後まで怯えていた。だから一瞬で終わるように顔面を掴み爆発させ気絶させた。商人の顔からは煙が立ちライトは放した。


「やったー!」

「やったのだな。ライト」

「ああ」


 一番の敵は人間だとこの時のライト達は痛感した。この世に悪があるとすればそれは本当に人の心の中だろう。人はどうしてこうも身勝手に生きるのだろうか。


 そんなことは知らずにライトは洞窟の先に進むために左手に持っていた短剣をアル-シャに返した。そしてライト達は洞窟の奥へとどんどん突き進んでいくのだった。

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