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異世界マニアのおしかけ召喚者  作者: 伊部九郎
第2章 王都編
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第99話 楽しい動物園

「さあ着いたわよ」


 クロアにそう言われてトキオが窓の外を見ると、「国立自然動物園」という大きな看板と日本で見かけたのと同じような入場ゲートが見えた。

 そして、そのゲートの先にたくさん木々が生い茂っていた。


「へえ・・・王都の中にもこんなところがあるんだな」

「そうよ。ここが王都の中でも一番緑が多い場所なのよ」

「なるほどねえ」


 そう言いながら、二人は馬車から降りた。


「それじゃあ、3時ごろ迎えに来てくれる?」

 トキオは馭者に言った。

「わかりました」

 馭者はそう答えると、トキオの屋敷の方へ帰って行った。


「あー、ここも3年ぶりね」

 クロアは嬉しそうな顔でそう言った。



 入口でチケットを買って中に入ると、中央に大きな花壇と刈込があり、その左右の道が先の方まで続いていた。そして、左側の道の左と、右側の道の右に高さ1メールの程の金属製の柵があり、その先に動物がいるようだった。


「じゃあ、まずこっちに行きましょう」

 クロアはそう言うと、右の柵の方へ歩き出したので、トキオもその横に並んで歩いて行った。


 柵に着いてみると、その先は7、8メートルほど下がったかなりの広さのエリアになっていて、そこに何種類か動物がいたが、角のない鹿のような動物が草を食べていたので草食動物のエリアだと思われた。


「へえ~、これがこの世界の動物か~」

 トキオは、おもわずそう口に出していた。


「この世界?」

 クロアが怪訝な顔で聞いてきたが、すぐに、

「ああ、あんたの村じゃほかの土地に行くと『この世界』って言うんだったわね」

 と、トキオが作った設定を思い出してくれた。


「そ、そうなんだよ。ヘンかな?」

「思いっきりヘンだけど、地方ごとに言葉の違いがあるのはしょうがないわね」



 そのエリアには、馬のような大きさのヤギに似た白い動物、赤と黄色という派手な色をしたシマウマのような動物、妙に体が前後に長い灰色の毛をした動物など、少しずつトキオの世界とは違う動物ばかりがいて、トキオは珍しくてしばらく見入ってしまった。


「さあ、ここばっかり見てたら全部周れなくなるから次に行くわよ」

「あ、そうだな」

 クロアの言葉でトキオは我に返って歩き出した。


 次のエリアに行くと、そこはさらに下がっていて、広さも倍ぐらいあった。

 その中には先ほどのエリアよりは大型の動物がいて、キリンのように首は長いが全身が茶色一色の動物、カバのような耳をしているのに象のように鼻の長い動物などがいた。


「あんなのもいるんだな」

「どれのこと?」

「あの、鼻の長いヤツだよ」

「ああ、あれはよその国から輸入して来たエフトっていう動物で、この国だとこの動物園にしかいないらしいわ」

「そうなんだー」

 トキオはそう言うと、また見入ってしまったが、しばらくすると、またクロアに促されて次のエリアに行った。


 それからは、その繰り返しで4か所ほど周ったが、肉食獣のエリアでは4種類いた動物が種類ごとに柵で囲われていた。


(肉食獣同士だと争いになるんだろうな。そういえば、サファリパークに行った時も虎とライオンは別のエリアだったな。どこの世界も同じなんだ)



 奥に進むと、小さな牧場のようなエリアがあった。


「ここよ!ここがいいのよ!」

 クロアはそう言うと、速足になってそのエリアに入って行った。


 トキオが後から入ってくと、そこの中央には腰の高さぐらいの木の柵で囲まれたエリアがあり、ウサギに似た動物や、猫に似た動物、さらにリスのような少し小さい動物がいたが、どの動物も一様に毛がふさふさだった。

 そして、主に子供たちがその動物を撫でたり抱きかかえたりしていた。


 木製の柵は二重になっているところがあり、一つ目の柵の外に何人か並んで順番待ちをしていたが、その最後尾にクロアがいた。どうやら、この動物園の人気スポットらしかった。


 トキオもクロアと一緒に並んだが、トキオたちの番になり一つ目の柵を係員が開けてくれたので入ると、別の係員が一つ目を閉めたのを確認してから二つ目を開けて中央のエリアに入れてくれた。


 すると、クロアは真っ白なウサギのような動物に素早く近寄って抱きかかえた。


「やっぱり毛がモフモフで気持ちいい~」

 クロアは満面の笑顔でその動物に頬を擦りつけながら言った。


(なるほどな。自分から動物園に行こうって言った理由はこれだったんだな)

 トキオは思わず微笑んでしまった。


 しばらくスリスリした後、次に猫のような動物を抱きかかえると同じようにスリスリし始めた。


(こいつにもこういう可愛いとこがあるんだな。こんな様子を見たら、誰もこいつがヒドラを一撃で倒せる魔女だとは思わないな)

 トキオはそう考えて苦笑した。


 10分ほど経つと、係員の指示で外に出された。どうやら時間制限があるらしかった。


「ちぇっ。もっと抱っこしてたかったなあ」

 クロアは本当に残念そうだった。


「じゃあ、そろそろお昼にする?」

「そうだな」

 トキオが途中にあった各エリアで長いこと眺めていたせいもあって、建物にかかっている時計を見たらすでに正午を過ぎていた。


 昼食は、園内にある動物のはく製が飾られたレストランで食べた。

 王都の名物料理という、パエリアのようなものを食べたが、庶民料理だったせいかお屋敷では食べたことのないもので、味はなかなか良かった。


「次は遊技場へ行きましょう!」

 昼食が終わってレストランを出ると、クロアがそう言った。


「遊技場?なんだそれ」

「色々な乗り物があるのよ。楽しいから」

 そう言うと、クロアはトキオの手を握って引っ張るように歩き出した。

「乗り物って・・・」

 トキオは、電気も内燃機関もないこの世界でどうやって乗り物を動かしているのか不思議だった。



 遊技場に着くと、そこにはメリーゴーランドやコーヒーカップのようなものがあり、さらには観覧車まであった。


(どうなってんだ?)


 トキオは不思議に思ったが、どの乗り物にも脇に小屋があり、そこからチェーンのようなものが出ていて、それでそれぞれの乗り物を回転させているようだった。


 トキオが気になってその小屋にあった小さな窓から覗くと、筋肉もりもりの男が、自転車のようなものを漕いでいた。そして、その脇には大小いくつかの歯車が回っていた。


(なるほど~。漕いだ回転を歯車で変換して回してるのか~)

 トキオは感心したが、

(ああ、そう言えばインドとかに行くと足で踏んで回す観覧車とかあるんだったな)

 というのを思い出した。


「ねえ、観覧車に乗りましょうよ」

「おお、いいねえ」

 トキオは、人力の観覧車の乗り心地が気になったので同意した。


 それほどの高さのものではなかったが、それでも一番上に行くと結構いい眺めだった。

 回転は思いのほかスムーズで、トキオの世界の観覧車と変わらないぐらいだった。


「ほら、あっちにお城が見える。教団本部はこっちね」

 クロアは嬉しそうにキョロキョロと見回していた。


「こっちの方向がトキオのお屋敷のはずなんだけど、この高さじゃ見えないわね。残念」

 確かに、他の高い建物に邪魔されてトキオの屋敷は見えなかった。城と教団本部は、かなりの高さだったので良く見えた。



 そこでいくつかの乗り物に乗った後、また別の動物を見て周った。


 途中に何か所か出店があったので、そこで色々な食べ物を買って食べながら歩いた。



 そうやってしばらく歩いていたが、トキオが何気なくぼそりと言った。


「しかし、なんだなあ。こんな風に二人でいろんなものを食べたりしながら歩いてると、まるでデートだな」

「え・・・」

 その言葉で、クロアは立ち止まった。


「なんだどうしたんだよ?」

 トキオは振り返ってそう聞いたが、クロアの顔が赤くなってるような気がした。


「確かに、この状況って、デートそのものかなと思って・・・」

「そうだけど、そう見えるってだけだから、そんなに意識するほどのことじゃないだろ?」

「そうなると、私、人生初デートになるのよ」

「ええっ!ホント!?」

「だって、15歳の時から魔法の訓練を始めたから、男の人と付き合うことがなかったもの」

「そうなんだ~・・・あれ?でも、ロタールっていう男と一緒に修業してたんじゃないの?」

「あれはただの幼馴染よ。恋愛感情なんかないわ。それに、導師様の使いで一緒に外出したことはあったけど、こんな風に何か食べながら歩いたりしたことはなかったわ」

「そうか~。初体験が俺で悪かったなあ」

「ホントよ!どうせなら勇者様と来たかったわ」

「わはははは!勇者様がお前と動物園を歩いてる図なんか想像できないよ」

「そんなのわからないじゃないのよ!」

「ないない。それに、勇者様って38歳だし、あの美形だろ。結婚してるんじゃないの?」

「えっ!勇者様ってそんなにお歳だったの!そうは見えないわ」

「そうだよ。ミヒールさんに聞いたんだ」

「ちょっとショック・・・でも、愛があれば歳の差なんて関係ないわ」

「どっかで聞いたようなセリフだな・・・愛って、お前の一方通行だろうが」

「そんなの、勇者様に聞いてみなきゃわからないじゃないの!」

「聞くな聞くな。恥をかくだけだ」

「まあ!失礼ね!」


「まあ、それは後で確認してもらうとして、それより、デートの続きをしようぜ」

 トキオはニッコリとほほ笑みながら言った。


「な・・・まあ、いいけど」

 クロアは赤くなりながらも拒否はしなかった。


「じゃあ、手でも繋ぐか?その方がデートって雰囲気が出るぞ」

「えー?・・・・・しょうがないわね」

 クロアはそう言うと、トキオが差し出した手を握った。



 その後も二人は、色々な動物を見て周ったり、出店を冷かしたりしたが、売店で自分用とセバスチャンたちの分のお土産も買った。


 最後に、ワッフルに似たお菓子を屋台で買ってからベンチに並んで座り、二人で感想を言いながら食べた。



 食べ終わったところでトキオが言った。


「今日はここへ連れてきてくれてありがとな。楽しかったよ」

「どういたしまして。私も楽しかったわ」

「しっかりデートできたしな」

「プッ!・・・そうね」

「じゃあ、デートの仕上げだ」

 トキオは周りに人がいないのを確認すると、クロアの両肩を掴んで自分の方に向け、唇にキスをした。


 クロアは驚いてすぐに口を離した。

「何するのよ!」

「こうしないとデートが完結しないだろ?それに、キスするのはこれで3回目なんだからいいじゃないか」

「・・・そうだけど」


 トキオはクロアに顔を使づけると再びキスをした。

 クロアは、今度は拒絶しなかった。

 それどころか、トキオが舌を絡めてきたらクロアもそれに答え、トキオの背中に手を回してきた。

 二人はそのまま1分ほどキスを続けた。


「これで、デート完了だ」

 トキオは、口を離すとそう言った。

「・・バカ!」

 クロアはそう言ったが、トキオが抱きしめるとしっかり抱きしめ返した。


「でも今日だけだからね!私には勇者様がいるんだから!」

 二人が離れるとクロアが言った。

「わかってるよ。じゃあ、帰ろうか」

「うん!」

 クロアはそう返事をすると、差し出されたトキオの手を取り、一緒に立ち上がった。



「これがデートか・・・」

 歩き出してすぐ、クロアは小声でそう呟いたが、トキオは聞こえなかったふりをして、そのまま手をつないで出口へ向かった。





 こんな風に王都は未だ平穏そのものだったが、王国の南西部では大きな動きが起ころうとしていた。

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