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異世界マニアのおしかけ召喚者  作者: 伊部九郎
第2章 王都編

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第83話 2つの再会

「王都が見えてきましたよ」

「え!?」


 旅の最後の日も交代で見張りを続けながら馬車は進んで行ったが、午後も遅い時間になってサイマンがそう言ったので、クロア以外の3人は馬車の窓に貼りついて前方を見た。


「おおー!あれが王都かー!広いな~」

「アティムとは全然違うな!」

「あ、真ん中の丘の上にお城が見える!やっぱり、大きくてキレイ~」


「そう言えば、アウレラは2度目だったな」

「うん。でも、前に来たのは子供の時だったからよく覚えてないんだよね。お城が大きくてキレイだったことと、街の中がとても広くて人がすごく多かったことぐらいしか記憶にないよ」

「俺は初めてだから、ちょっと感動してるよ」

「ああ、俺もだよ。ここまで大きい街だとはな」


 3人とも興奮して視線が王都に釘付けになっていたが、クロアは硬い表情で後ろ向きに座ったまま、王都の方を見ようともしなかった。


「クロアさんは王都がお嫌いですか?」

 その様子を見たサイマンがクロアに話しかけた。


「別に嫌いじゃないわよ。数か月前までここにいたから珍しくないだけよ」

「おや、そうでしたか!それは、それは。どこにいらっしゃったんです?」

「西の城区よ。いいでしょ、そんなことは!」

「・・・ああ、すみません。細かいことをお聞きして」

 サイマンは怪訝な表情をして、それっきり黙った。



「教団本部の方が近いですから先にそちらに寄ります。よろしいでしょうか」

 馭者が振り向いて言った。


「ああ、構わないですよ。クロアさんは教団本部のどなたかから呼ばれて来たんでしょう?そちらの方が大事な要件だと思いますから」

 サイマンが言った。


「すみませんね。こちらは4人も乗ってるのに。この馬車の料金は私が出しますよ」

 テリットが言った。

「それはいけません。きちんと折半にしましょう」

「4対1ですから、折半というわけにはいかないですよ。それに、途中で魔物から採れた金貨がありますし」

「いえいえ、それでもこういうことはきちんとしないと。折半でお願いします」

「いやー、それはこっちが困っちゃうなあ」

「では、私が半分出す代わりと言ってはなんですが、その分、うちの店で買い物をしていただくというのはどうでしょう?」

「それは、元々そのつもりでしたから」

「出すって言ってるんだから素直に聞いておけば?護衛も兼ねてたようなもんなんだし」

 クロアが口を挟んだ。


「そうですよ!すご腕の皆さんが乗っていらっしゃったんで、私も安心して旅ができましたから」

「すご腕じゃないですけどね。そうですか・・・それでは、必ずお店で買い物させていただきます」

「はい、よろしくお願いします」

 そう言ってサイマンは頭を下げた。




 王都の中に入ると、テリット、ブローム、アウレラは完全にお上りさん状態になっていて、キョロキョロと街の中を見回し、店頭に並んでいる商品のいくつかに目を付けては嬉しそうに感想を言い合った。


 クロアは、相変わらず硬い表情のまま黙っていた。



「ああ、あれが教団本部ですよ」

 王都の中をしばらく進んだところでサイマンが前方を指さしながら言った。


「あれが!」

 そこには白くて背の高い建物が建っていた。


 ゆっくりとではあったが、今度はクロアもそっちを見た。



 ほどなく、馬車は教団本部の前に着いた。


 4人が降りると、馭者も降りて来た。


「ありがとうございました。それでは、トキオさんに感謝していたとよろしくお伝えください!」

「ああ、そうだったな。じゃあ、これ料金」

 テリットは、あらかじめ用意していた半分の料金を馭者に渡そうとした。


「いえ!金貨をいただいたんですから、お代はいただけません!」

「いや、それとこれとは別でしょ」

「そんなわけにいきませんから!」

 馭者は、そう言うと急いで馭者台に上っていった。


「あらら。しょうがないなあ・・・それでは、サイマンさんこれで。明日、必ずお伺いしますよ」

「お待ちしております。楽しい旅でした。ありがとうございました」

「いえ、こちらこそ色々とお話を聞かせていただいて楽しかったですよ」

「では」

 サイマンが頭を下げたのと同時に、馬車は発車した。


 4人は軽く頭を下げて見送ってから教団本部の方へ向き直った。


「ほお~、これが教団本部か~。こんなに大きな建物だとはな」

「ちょっと予想してなかったな」

「うん。キレイな建物だよね」


「何してるのよ。行くわよ」

 立ち止まって建物を見上げている3人に対してクロアはそう言うと、先に立って入口への階段を上り始めた。



「クロア!クロアじゃないか!」

 階段を半分ほど登ったところでクロアを呼ぶ声が聞こえたので、全員そちらの方を振り返った。

 すると、階段の下に20代半ばぐらいの法衣を着た男がいて、こちらを見上げていた。


「ロタール・・・」

 クロアが言った。


 しかし、クロアはその途端に寂しそうな表情になった。



「どうして突然いなくなったんだ。導師様がたいそう悲しんでおられたぞ」

「・・・ごめん」

「俺に謝らなくていいから・・・戻って来てくれたんだよな?さあ、帰ろう」


「魔導士様に呼ばれて来ただけよ」

「え?魔導士様に?一体、何したんだ」

「別に悪いことはしてないわよ。それと、申し訳ないけど、私はもう戻らないわ」

「どうしてだ!まだ、修行は終わってないし、光魔法だって覚えてないだろ?あんなに覚えたがってたじゃないか!」

「光魔法は魔導士様たちに教えて貰うから大丈夫よ」

「・・・え?そんな話になってるのか?一体どういう経緯なんだ」

「大したことじゃないわ」

「本当にもう戻らないのか?なぜだ!・・・せめて、導師様の意識がはっきりしているうちに1度会って理由を説明してくれないか」

「え?それはどういう意味?ご病気なの?」

 クロアは心配そうな顔になった。


「実は、数か月前から様子がおかしくて、時々私すらもわからなくなったりするんだ」

「・・・そんな」

「その症状が徐々に進行しているんだ。だから、完全に記憶が無くならないうちに頼む!」


「・・・ごめんなさい。やっぱり無理よ。それじゃ、魔導士様が待ってるから行くわね」

 クロアは教団本部の方へ向き直ると階段を上り始めた。


「そんな・・・待てよ!」

 ロタールは階段を数歩登って追いかけて来た。


「来ないで!」

 クロアは大きな声でそう言うと振り返らずさらに階段を上って行った。


 ロタールは呆然とした表情で足を止め、その様子を見送った。



「どういうことかな?」

 少し離れて後ろをついて来ながら、テリットがブロームとアウレラに言った。

「ちょっと普通じゃなかったわね」

「何か込み入った事情がありそうだな。あいつから話すまで、このことには触れない方が良さそうだな」

「そうだな」




 中に入るとクロアは、受付のような場所にまっすぐ歩いて行った。まるで、そこに受付があることを知っていたかのようだった。


 その時、奥からミヒール司祭が現れた。


「おお、あなたたちはアティムの!到着されたんですね。ということは、このお嬢さんがクロアさんですか」

 ミヒール司祭がクロアを見ながら嬉しそうな顔で言った。


「そうです。無事に送り届けましたよ」

 テリットが言った。

「わざわざ遠いところをありがとうございました」

「いえ、仕事ですから・・・ところで、トキオに会うことはできますか?」

「ああ、大丈夫ですよ。ちょうど今、魔導士様の訓練を受けているところですから、一緒に行きましょう」

「そうですか!ありがとうございます!」


「やった!」

 アウレラが嬉しそうな声を上げた。


 クロアは、暗い表情で終始無言だったので、テリットたちは誰も声をかけることができなかった。




 魔法訓練場に入るとトキオはまさに、一人の魔導士に訓練を受けているところだった。


「そうだ。そんな風に手を上下にスライドさせるとイメージしやすいぞ」

「はあぁぁぁぁぁ・・・・・はっ!」


 トキオが気合を込めながら、胸の前から左手を下に、右手を上に素早く動かすと、縦長で薄い光が飛び出して前方に飛んで行った。


 ザン!


 その光は壁にぶつかると消滅したが、壁には特に変化はなかった。


「よし!その感じだ!だいぶイメージができて来たな」

「ありがとうございます!」

「それでは、今日はこのへんにしよう」

「お疲れさまでした!明日もお願いします!」

「ああ。ゆっくり休んで体力を回復しておけよ」

「はい!」


 魔導士は、トキオから離れると、別の扉から出て行った。



「トキオー!」

 そこで、アウレラがそう叫ぶと、トキオ目がけて駆けだした。


 トキオが振り返るとすぐ、アウレラがトキオに飛び込むように抱きついた。


「アウレラ!・・・みんなも!」

 トキオは、アウレラを抱きしめながら前方を見てテリットたちとミヒール司祭がいるのに気づいた。


「トキオ、会いたかったよ!」

「俺もだよ。みんな元気そうだな!」

「うん!」


 アウレラは元気のいい返事をするとトキオの顔を見つめたが、すぐに涙を流し始めた。


 トキオはアウレラの頭を肩に乗せると、左手で抱きしめたまま右手で頭を優しくなでた。



 そこで、テリットたちもトキオのところまでやって来た。


「お互い元気にしてたようだな」

 テリットが言った。

「おかげさまでね」

「王都での暮らしはどうだ?」

 ブロームが言った。

「街の中だけじゃなく、城の中もまだわからないことだらけだけど、みんなが良くしてくれるから楽しくやれてるよ・・・そうだ!実は王様に頼まれて、ここで柔道や他の格闘技を教えることになったから、しばらく帰れなくなったんだよ。ごめん」

「ああ、それはお前が出発してすぐに聞いたよ。実は、最初からそういう話になってたらしい」

「やっぱり!」


 トキオはそう言うと、ミヒール司祭を睨もうとしたが、いつの間にか姿を消していた。


「今日は王都に泊まって行くんでしょ?宿はもう決めたの?」

「そのつもりだが、宿はまだだ」

「じゃあ、うちに泊まりなよ」

「うちにって、4人も泊まれるのか?少なくとも、アウレラとクロアは別の部屋じゃないとまずいだろ?」

「そこは大丈夫。余裕だよ」

「は?お前一体どんな家に住んでるんだよ」

「うーんと、それは着いてからのお楽しみかな」

 トキオはそう言うとにっこりほほ笑んだ。



 そこで、ミヒール司祭が5人の魔導士を連れて訓練場に入って来た。

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