第82話 トキオの魔法レベル
仕事が終わったので更新を再開します。
その2日ほど前、王都では・・・
「遅くなったが、それではトキオよ、まずは、そなたの光魔法がどの程度のものになっているか確認させてくれ」
シュミュード魔導士長が言った。
ここは、城内にある魔法鍛錬場で、これからトキオの魔法鍛錬が始まろうとしていた。
トキオと魔導士長の他にその場に居合わせたのは、魔導士全員とキロウ司教、ミヒール司祭だった。
「はい。なにをすればいいですか」
「そうだな、手っ取り早いところで、フライシャを放ってくれるか」
「え?この室内でですか?」
「大丈夫だ。この部屋は、壁全体に防御魔法がかけてあるから、どのような魔法を使おうともびくともしないようになっている」
「へー、そうなんですね」
トキオはそう答えながら、それが一体どういう反応になるのか強い興味が沸いた。
(じゃあ、最高に気合入れてみるかな)
トキオは四股立ちの構えを取ると目を瞑り、両肘を後ろに引いた姿勢で強力なフライシャを放つことをイメージしながら気合を溜めていった。
そのまま、20秒ほど気合を溜めると、目を開き前方20メートルほどのところにある壁に向かってフライシャを放った。
「はーーーー!」
直径7、8メートルはあると思われる巨大な光の球が飛んで行き、壁に当たると大きな音とともに爆発した。
しかし、壁はまったく何事もなかったように放つ前と同じ姿のままだった。
(へえ、ホントになんともないよ。さすが、魔導士様の防御魔法ってとこか)
そこで、キロウ司教とミヒール司祭が目に入ったが、非常に感心している体ではあったが、驚いているといった様子ではなかった。
(あれ?やっぱり王都にいる人だから、もっと強力なのを見慣れてる感じ?)
トキオはちょっとガッカリした。
「ふうむ、半年でこれほどのものが放てるとは。やはり、相当に光魔法と相性が良いようだな」
魔導士長が言った。同じように感心しただけの顔をしていた。
「そうなんですか。周りに光魔法を使える人がいなかったんで、そういうのは全然わからなかったですね」
「まあ、それは仕方ないな。ところで、あれだけの威力の魔法を放つのに、詠唱はおろか呪文も唱えなかったようだが」
「あ、はい。以前に魔法の練習をしたときに、その魔法がイメージできれば別に呪文は唱えなくても放てることが分かったので、それからは大体は唱えないで放ってます」
「ほほお、それは興味深い話だ。あとで詳しく教えてくれ」
「わかりました」
「では、次は防御魔法と反射魔法だが、使っているか?」
「はい。フライシャに比べると使う頻度は少ないですが、先日、オルトロスと魔人を倒したときに使いました」
「おお、そうだった。一人で魔人を倒したそうだな」
「そうですが、あれは魔人の方が俺たちを甘く見て油断してたからですね。動きが速すぎて全然見えませんでしたから、まともにかかってこられたら危なかったと思います」
「まあ、そうだな。ベテランの上級魔法使いでもやられる場合が多いからな。それで、どのように倒したのだ」
「反射魔法でひっりく返したうえで、こいつで頭をふっ飛ばしました」
トキオはそう言いながら腰の拳銃を抜いた。
「それは確か拳銃というトキオの世界の武器だな。頭が吹き飛んだとは、それほど強力なのか」
「そうですね。冒険者の仲間は、これのおかげで討伐がずいぶん楽になったとみんな言ってます」
「そうか。ではひとつ、その拳銃の威力も見せてくれるか」
「構いませんが、魔法防御は効かないから壁に穴が開くと思いますよ」
「なるほど、魔道具ではないのだな。それならば・・・あそこに甲冑を着た像があるだろう。あれの頭部を狙ってくれ。あの鎧の頭部はかなり硬い金属でできているから、それでその拳銃の威力が分かるだろう」
魔導士が指さした方を見ると、言われた通り鎧を着た全身の像があり、その頭部を覆っているヘルメットのようなものは確かに硬そうだった。しかし、かなり値打ちのある物のように見えた。
「いいんですか?かなりの値打ち物のような気がしますが」
「ここに昔からある物だから、値打など気にしたこともないな。そなたが言ったように値打ち物だったとしても、我々の懐が痛むわけではないから気にするな」
「ええ~!?・・・まあ、魔導士様がいいんなら俺はいいですが」
(この人、堅物かと思ったら、意外にアバウトだな)
「じゃあ、遠慮なく」
トキオはそう言うと、銃を両手で構えて撃鉄を起こし狙いを付けた。
ガウーン!ウーンウーン・・・
魔法防御をかけてあるせいか、それとも、壁がかなり反響しやすい材質なのか、銃声が室内に響いてこだました。
弾は、ヘルメットを貫通していたが、かなり硬かったようで、それほど大きな穴にはなっていなかった。
「おお、貫通したか!大した威力だな。しかし、その大きな音はなんだ!驚いたぞ!先に言ってくれ」
「ああ、すみません!いつもなら言うんですが、甲冑の値打ちが気になって忘れてました」
「まあいい。次回から心の準備をすることにしよう・・・それにしても、確かにその武器は使えそうだ。オクスドンの頭部も貫通したと言ってたな」
「はい。ただ、1発では倒れなかったので浅かったんじゃないでしょうか。脳にまでは届かせるためには2発は必要なようです」
「そうか。それでも、普通なら重い斧か剣でないと割れないオクスドンの頭部だ。十分強力だな」
「たいていの魔物には有効だと思います」
「そのようだな・・・それでは魔法の話に戻るが、そなた、防御魔法と反射魔法をどのように使っている。普通に自分を守るためだけではなく、別の方法で活用したりしているか?」
「活用ですか・・・先日、オルトロスを倒した時は、上と後ろと左右を防御魔法で覆って逃げられないようにしたうえで、前面に反射魔法を張ってそれに突撃したオルトロスを後方にはじき返しておいてから前面の反射魔法だけ解除して4人で攻撃魔法を放ち、最後は上も解除して兵士の人たちに上から一斉にライフル銃を撃ってもらって倒すという使い方をしました」
「おお、かなり考えた使い方ができているな。良いことだ。他にはあるか?」
「他にですか・・・ああ、こういうのやりましたよ」
トキオはそう言うと、防御魔法を目の前30センチぐらいの高さに水平に展開してその上に乗って見せた。
「こんな感じです」
「おお、その使い方も覚えたのか。大したものだ」
「はい・・・と言いたいところですが、これについては、うちの街の上級魔法使いが結界魔法で同じことをやったのを見て真似しただけです」
「ははは、なるほどな。でも、見ただけで自分の魔法に結び付けられるとは、なかなか魔法のセンスがあるぞ」
「そうですか。でも、それは元の世界で魔法を使う架空のお話をたくさん読んだせいかもしれません」
「ほう。そんな架空の話がたくさんあるのか」
「はい。本来、俺の世界には魔物はいないんですが、この世界のようなお話もあるので、実はそれらによってこの世界で使える知識を身に付けたりしてるんですよ」
「ほほお、そうなのか。それはどれのことだ」
「ステータス!」
トキオはステータス画面を表示させた。
「まずは、これです。これって、俺の世界の架空の話では結構ひんぱんに登場します」
「なるほど、そういうことであったか!」
「強化魔法が武器にも使えるというのもそうですね」
「ほほう、それもか。もしかすると、それらの架空の話は、以前にこの世界を訪れた者が遺した話が元になったりしてるのではないか?」
「そうですね。実は俺も、数か月前にその可能性があると気づいたんですよ。魔獣も、俺の世界で昔作られたお話に出て来るものと同じだったりしますし」
「ほお・・・そこまで一致しているのであれば、本当にその可能性が高いな」
「そう思います」
「そうか・・・大体、そなたの光魔法の習熟状況はわかった。それでは、それをもっと効率的に使えるような鍛錬方法をそなたに授けよう」
「そうですか!ありがとうございます!」
(やった!やっと正しい魔法の鍛え方がわかるぞ!)
トキオはかなり喜んでいた。
その日から、トキオの魔法鍛錬が始まった。
魔導士ごとに得意としている魔法が違ったので、光魔法だけではなく、火と水と風の魔法についても教えて貰うことができ、トキオは魔法使いとしての能力も向上させていくのだった。
日付を2日後に戻して、アティムでは・・・
「リディア、あんた本当に優秀だなあ。期待以上だよ!さすが、魔導士長から派遣された魔法使いだけのことはある!」
その日の討伐を終えてギルドに戻って来たパーシーは上機嫌だった。
「恐れ入ります」
リディアと呼ばれた魔女は、そう言って頭を下げた。
「これからもよろしく頼むよ!」
「こちらこそ、よろしくお願いします・・・ちょっと失礼します」
リディアはそう言うと、トイレに向かって行った。
「いや~、どうよあの娘。攻撃魔法の能力も高いのに、クロアと違って腰が低くて気が利くじゃないか!」
「そうだよな~。歳は少し上だけど、逆にそのせいで色気があって、俺的には、リディアの方が女性としても好みだな」
「俺も俺も。なかなか美人だし、オッパイがでかいのもポイント高いよな」
「そうそう。そこもいいんだよ!」
パーシーの言葉に、同じパーティーのマクロエイとレフも興奮したように同意した。
「代わりに変なやつが来るんじゃないかって心配してたけど、これじゃ、替えてもらった方が全然良かったな!」
「ホント、ホント。俺なんか、明日からの討伐が楽しみになって来ちゃったよ」
「俺もだよ。これからずっと一緒にいられるかと思うとワクワクするよな~。俺たちのパーティーって、アティム唯一の嫁さんも彼女もいないパーティーだって今までさんざんからかわれたけど、これで、それも卒業か?」
「待て待て。そうなりたい気持ちはよくわかるが、魔導士長から派遣された娘だってのを忘れるな。下手にちょっかい出して怒らせたりしたら大変だからな」
パーシーが言った。
「ああ、そうか~。じゃあ、あまり積極的なアプローチはしない方がいいか~」
「積極的なアプローチって、お前そんなの今までしたことあんのかよ」
「え?・・・そういえばないなあ。そんなのできてたら、彼女いない歴25年だったりしないか」
「ブッ!確かにそうだな!」
そう言って3人は笑ったが、笑いが治まってくると、座りながら視線を上にあげてそれぞれ妄想モードに入ったようにニヤニヤした顔つきになった。
「おいおい、またパーシーのパーティーが女のことで盛り上がってから妄想モードに入ってるぞ」
「彼女いない奴らが集まるとこれだからイヤだね~」
「まったくだよ。腕はいいんだが、女の前だとからっきしだからな」
「あいつらには、クロアみたいな憎たらしいのが女と意識しなくて良かったと思うんだけど、今度入って来た女の子は結構色気があるみたいだから、逆に意識し過ぎてやっぱりなにもできないんじゃないか?」
「そして、彼女なしパーティーの称号は継続されると」
「確かに!」
少し離れた場所にいた2人の冒険者は、そう言って笑った。




