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異世界マニアのおしかけ召喚者  作者: 伊部九郎
第1章 アティム編
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第62話 2体目の魔獣

「ふん、どうせ武器に頼っただけだろう。素手であれば適うまい」

「いや?素手でも楽勝だけど」

「また強がりか」

「いやいや、強がりじゃないから。実際、今までに何体も倒してるし」

「は?マジで!?・・・こほん。では証明して見せろ」


 魔人はそう言うと手を一つ叩いた。

 すると、突然、オークが4体、目の前に現れた。


「では、お前たち一人ずつ、こいつらの相手をしてもらおう。せいぜい死なないことだな」

 そう言って魔人は笑った。


 オークはいきなり突進してきた。


「俺が相手するからここにいて!」

 トキオは、クロア達3人にそう言うと、オークに向かって行った。



 1体目の攻撃を軽くかわすと首に手を回して腰車で地面に叩きつけ、そのまま首を締めあげて失神させた。


 次に後ろから2体目がかかってきたので、これは1本背負投で投げ飛ばすと、飛び上がって喉の上に膝から落下した。

 オークは息ができなくなり苦しそうにもがいた。


 その様子を見て怯んでいる別の1体を山嵐で投げ飛ばし、胸の上に跨ると両手で首を強くひねって息の根を止めた。


「ぐあぁぁ!」

 そこでオークの叫び声が聞こえたのでそっちを見ると、残りの1体がクロア達に火炎魔法で丸焦げにされているところだった。


 トキオは、横たわっている残りの2体に順に跨り、同じように首をひねって息の根を止めた。



「はい、終わり。他には?」


 トキオは、このオークたちをすべて倒したら次は魔人が襲ってくるかもしれないと考え、戦っている最中に密かに自分の前面に反射魔法を展開しておいた。



「え?・・・・もしかして、全部殺した感じ?今の短い間に?」

「見てたら分かっただろ。くだらないこと聞くな」

「まさか!どうなっている!?」

「このくらいみんな出来るぞ。今どきの冒険者さんを舐めたらいけませんぜ」


「ふっ、お前ひとりが強くてもどうにもなるまい」

「え?俺が今言ったこと聞いてた?てか、この3人に魔法で1体やられたのは無視?」


 魔人は、また手を叩いた。


 すると、今度は5体のオークが、テリットたちの前に現れた。


「さあ、その者たちはどうなる・・・」


 言い終わらないうちに、すべて、剣と刀と槍に貫かれて地面にくずれ落ちた。



「あ、いやそうじゃなくて素手で・・・」


「お前バカだろ?」

 トキオのその言葉で、魔人は一瞬怒りの表情を浮かべたが、突然、目の前から消えた。


 ガイン!


 何かが反射魔法にぶつかる音がしたと思った途端、魔人がその先に仰向けにひっくり返った状態で現れた。


「な、なんだ?」

 魔人は、反射魔法だとはわからずに少し慌てているようだった。



(しめしめ・・・しかし、魔族ってのは人間を下等生物と思っているヤツらなんだ。人種差別以上にやっかいなパターンだなあ。これでは共存は完全に無理だな)


「なに言っても無駄みたいだから、もういいや」


 トキオはそう言うと腰の拳銃を抜いた。


「なんだそれは?魔道具か?笑わせるな」

 立ち上がった魔人はそう言うと、体の前に防御魔法のようなものを展開した。


「私に魔法など効かない」


(なるほど、魔法防御用のバリアか。自分でバラすなんて、やっぱりコイツはバカだ)


 トキオは、素早く魔人の頭部に狙いを付けると引き金を引いた。


 バンッ!


 弾は魔人の眉間に命中し、頭の上部をふっ飛ばされた魔人は声を上げることもできずにその場に崩れ落ちたが、最後の瞬間に手を叩いたように見えた。


「なんだったんだコイツ?」


「なんか、あっさり片付いたな」

 テリットが寄って来て言った。


「魔人ってこんなに弱いの?」

「いや、本来は動きが驚くほど敏捷で厄介な魔法をいくつも使うからかなり手強いんだが、コイツは完全に人間を舐めてたから、実力を出す前にあの世に行ったって感じだな」

「ぶっ!」

 トキオがいきなり吹きだした。


「なんだ?そんなに面白かったか?」

「いや、魔人にもあの世なんてあるのかなと思ったらおかしくって」

「はははは、そういやあそうだな」


「でも、驚くほど敏捷ってのはホントだったよ。速過ぎて移動するのが見えなかった」

「確かに、今も一瞬消えたな」



 そこで、大きく地面が揺れたかと思うと、同時に周りの藪ががさがさと音を立てた。



 揺れはだんだんと大きくなり、目の前50メートルほどのところにいた兵士たちの向こう側の地面が盛り上がり始めた。


「下から何か出て来るぞ!」

 誰かが叫んだ。


「こっちは、オークだ!」

 別の誰かが叫んだ。


「バカな!全部倒したはずだ!」

「突然現れた!」

「くそ!さっきみたいに魔人が呼んだのか!」


「このままじゃ囲まれる!散会しろ!」

 テリットがそう叫ぶと同時に、木の上にいる兵士がオークへの攻撃を始めた。


 ドドドン!


 トキオたちは、オークに向かって身構えたが、揺れがさらに大きくなり、立っているのが難しいほどになった。

 そこで、後方から野太い咆哮が聞こえた。


「グオォォォー!」


 トキオがその咆哮に驚いて振り返ると、巨大な生き物の頭部が地面を割って出てくるところだった。

 呆然とその様子を見ていると、一つ、また一つと合計3つの首が現れ、最後には全身の姿を地表に現した。


「ヒドラだ!」

「でかいぞ!」


 確かに、その姿かたちはヒドラだったが、大きさが以前に見たのものの倍ぐらいあった。


「なんだあの大きさは!」

 テリットが驚愕した顔で言った。


 その直後、ヒドラの一番右の首が横を向いたかと思うと、その先にいた兵士たちに向かって口から火炎を吐いた。


「ぎゃー!」


 兵士たち数名が炎に包まれてのたうち回った。


「火を吐いた!この間の時は長いこと攻撃していてもそんなことしなかったのに!」

 トキオも非常に驚いていた。



「あれがヒドラの本来の姿だ。先日のものは完全体ではなかったのだ」


 トキオが声のした方を振り返ると、独特の服を着た上級魔法使いが二人立っていた。


「オークに阻まれて遅くなったが、ここからは我々が軍と連携して対応する。冒険者たちは指示があるまで控えていろ」

 そう言うと、上級魔法使いの二人は、王国軍の主力がいる方へ向かって行った。



「上級魔法使いって、いつもあんなに偉そうなの?」

 トキオはテリットに聞いた。


「ああ、以前、一緒に討伐に行ったときもあんな感じだったな。まあ、確かに力はあるんだがな」

 テリットは悩ましげな顔で答えた。


「なによあの態度、いけ好かない!」

 クロアが言ったが、


(お前が言うか?)


 と、トキオは思った。


 周りの冒険者を見たら、同じことを考えていたと思われる顔をして、みんなクロアを見ていた。



「よし!じゃあ、俺たちはオークの相手だ!」

「そうだった!」


 冒険者たちは、皆、オークの方へ走って行った。



 オークはかなりの数だったので、トキオは、周りに冒険者がいないオークを拳銃で狙って、片っ端から仕留めていった。



 しばらく戦っていると、クロアの姿が見えないのに気付いた。


(あいつ、どこ行った?)


 トキオはオークを警戒しつつ、先ほどの場所まで戻ったら、クロアは元の場所から動かずにヒドラとの戦いを見ていた。


「クロア、何してる!お前も加勢しろよ!」

 その声でクロアはチラッとトキオの方を見たが、すぐに視線をヒドラの方に戻した。


「おい!」

「うるさいわね!オークは他の人たちでなんとかなるでしょ。でも、このヒドラは彼らの手には負えないようよ。だから、あんたがこっちに来て私を手伝いなさいよ!」


「なに?」

 そう言われてトキオは、クロアの横に来てヒドラが暴れている方を見た。


 すると、王国軍はヒドラに蹴散らされてまったく相手になっていないようだった。


 さらに見ていると、上級魔法使いの一人がヒドラの弱点である水流を放ったが、それはヒドラが口から吐いた火炎で相殺されていた。

 続けて、もう一人も水流を放ったが、これも別の首が吐いた火炎に相殺された。


「・・・これは・・・」

 トキオは、このままでは全滅すると思った。


 そこで、クロアが言った。


「複合魔法を使うわよ」


「・・・ああ、俺もそれしかないと思ってたところだ」


 トキオは後ろを向くと大声で怒鳴った。


「今からクロアが誰にも見せてないとっておきの強力な魔法でヒドラを攻撃するけど、精神集中する時間が必要なんだ!みんな、オークがクロアのところまで来ないようにしてくれ!」


「なんだと!」

「そりゃスゴい!」

「わかった!」

「任せたぞ!」


 トキオは、クロアの周りのヒドラに面した方向を除く3面に防御魔法を展開すると、その開けた方から顔を出した。


「そこの前にいる上級魔法使いの人、今から強力な魔法で攻撃する。危険だから下がって!」

 トキオは、ヒドラに一番近いところにいる上級魔法使い二人に大声で言った。


「なにを言ってる!街の魔法使いごときに何ができると言うんだ!」

 上級魔法使いの一人がそう言うと、二人はその場から動かず、ヒドラにさらに攻撃する構えをとった。

 それを見たトキオは、二人の目の前の地面にフライシャを放った!


 大きな爆発が起こって小石が飛び散り上級魔法使いたちを直撃した。


「きさま!何をする!」


「バカヤロウ!下がれと言ってるのが聞こえないのか!そこにいたら魔法の巻き添えを食って死ぬと言ってるんだ!下がらないなら、俺の光魔法をもう一発お見舞いするぞ!」


「光魔法だと!」

「あいつがアティムの光魔法を使える冒険者か!」


 光魔法を使うと判断したのか、二人は考えを変えたらしく、少し後ろに下がった。



 それを見たトキオはクロアのそばに戻った。


「クロア、すまん。あの上級魔法使いたちを下げるのはあれが精いっぱいだ。やれるか?」

「たぶん大丈夫。トキオも離れて」


 トキオは、飛び出すように防御魔法の外に出てクロアの左側に立った。

 後方では、他の冒険者たちがオークをクロアに近づけないように戦っていた。


「はあぁぁぁぁぁぁぁ!」


 クロアは、気合を入れて左手に火炎を、右手に水球を展開すると、詠唱しながら体の前で両手を合わせてから一旦胸元に引き寄せた。

 それから、さらに気合を込めて、呪文とともに前方に突き出した。


「スプライド!」


 その瞬間、「ゴウッ!」という轟音とともに、黄色い光の帯がヒドラ目がけて放出された。


 周りにいた者は皆、あまりのまぶしさに目を細めたが、光が通り過ぎて目を開けると、ヒドラの上半分が円柱状に削り取られて消失しているのを見て愕然とした。


 ズーーーン!


 ヒドラの残った下半分の胴体は、その直後に地面へと崩れ落ちた。



 トキオが上級魔法使いの二人を見ると、尻餅をつき、驚愕した顔でヒドラの死骸を見つめていたが、どうやらクロアの魔法には巻き込まれずにすんだようだった。


 次に、クロアの方を見ると、ふっと気を失うような動作で地面に倒れそうになったので、すばやく走り寄ると片膝を付いてその体を受け止めた。


「ご苦労さん・・・で、この力を使い果たした風の倒れ込みはパフォーマンスなんだろ?」

「もちろんよ。私がこの程度の魔法で倒れたりするもんですか」

 そう言ってクロアはニヤリと笑った。


 トキオは、そのパフォーマンスに付き合って、しばらく抱きかかえたままでいた。

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