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異世界マニアのおしかけ召喚者  作者: 伊部九郎
第1章 アティム編
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第58話 魔人の憂鬱

 今までのお話は、ある意味、序章にあたるものでしたが(長っ!)、年も変わりましたので、そろそろ本題に入っていきます。

 王国南西部にある、とあるダンジョンの奥。



 1段高くなった岩の上に据えられた凝った作りの椅子の上に、黒い礼服のようなものをまとった1体の魔人が座っていた。

 その目の前の岩の下には、左右にオークを2体従えたハードオークがこうべを垂れていた。


「ここのところ、獣魔物の数が減っているようだな。今までと同じペースで送り出しているのに、どういうことだ」

「なぜか、徐々に人間どもが手強くなってきていて・・・」

「そんなくだらん言い訳をするな!南部辺境地帯の人間は皆殺しにするから自分らの統括地にさせてくれと言って来たのはお前らの方だろうが!それなのに、その南部で特に獣魔物が減ってきているのはどういうことだ!」

「それが、他の街で成功したように、街ごと捻りつぶそうとと250体のオークをダンジョンに集結させていたんだが、なぜか先手をとられて襲撃されたうえ、入口がふさがれて外に出られなくなって・・・」

「知っている!そのせいで、そのオークどもの半分を餌にして通常より早く力を得たヒドラが外に出て簡単にやられてしまったのだ!監視していた者の報告では、本来の5分の1程度の力しか出せていなかったらしいではないか!魔獣は簡単には育てられないと言うのに!これは大きな損失だ!」

「・・・すまない。まさか、辺境にいる人間にあんなことができるとは・・・」


「あんなこと?・・・あんなこととはなんだ?」

「ちょっと予想外の魔法が・・・」

「いいから話せ!」

「・・・一人、光魔法と思われるものを使った人間がいて、それがかなり強力で、実はダンジョンの入り口を塞いだのはその魔法だったのだ」

「光魔法だと!それは王都にいる人間の一部にしか使えない魔法のはずだ。南部の辺境になぜそんなものが使える人間がいる」

「わからない。しかし、あれは間違いなく光魔法だった」

「魔獣の多くは光魔法が弱点だ。そうだとすると、それは早めに潰しておかないとやっかいなこになるな。ふうむ・・・」


「それともう一つ・・・」

「まだ、何かあるのか」

「実は、ここのところ、人間の集落から作物や家畜を奪おうとした獣魔物が敷地に入る前に追い払われることが何回か起こっていて・・・」

「なに?それはどういうことだ」

「どうやら、何かが爆発したような大きな音に驚いて逃げて来ているようだ。どうやっているのかはよくわからないんだが・・・」

「なんだそれは!なぜ、ちゃんと調べてこない!」

「いや、調べに行かせた仲間も驚いて帰ってきて・・・それで、大きな音がするとわかったんだが・・・」

「そうなら、わかるまで何度も行かせればいいだろうが!」

「それが、行ったきり帰って来ないのがいて、それでほかのヤツらは怖気づいて・・・」

「人間ごときに何を情けないことを言っている!大方、冒険者か兵士が見張りについてるんだろうが!そんなことでお前ら、本当に人間を皆殺しにできるのか?」


「今、また仲間を集めてるところだから、今度は大丈夫だ!もう一度チャンスをくれ!その音についても調べる」

「何か新しい策はあるのか?力押しだけでは結果は同じだろうが」

「前回は予想外の事態で魔獣と連携が取れなかった。今度は作戦も新しく考えた。ちゃんと魔獣と連携できれば光魔法を使う冒険者もやれると思うから、もう一度魔獣を与えてくれ」

「調子のいいことを・・・しかし、光魔法は確かに目障りだ・・・よかろう。ただし、これで最後だぞ!」

「すまない。今度こそは必ず」


 そこで、出て行けというふうに魔人が手を振ったので、オークたちは一礼するとその場から退出して行った。



「ううむ、光魔法がやっかいだから王都は最後にして辺境から潰していこうとしていたのに、これは問題だ。しかし、それを見逃したことがライマール様に知れたら私の身が危ない・・・念には念を入れるか」


 魔人はそう呟くと、椅子から立ち上がり、その背後に開いた穴からさらにダンジョンの奥へ入って行った。





「さあって、新年一発目の討伐に行きますか!」

 1月2日の朝、ギルドで朝のマイカを飲み終わったテリットは、一つ伸びをするとそう言った。


「ああ、やっと酒が抜けた・・・」

 トキオは、おでこを揉みながらそう言った。


「そう言えばトキオ、俺とブロームが帰る時もまだアウレラと飲んでたな。何時まで飲んでたんだ?」

「どうやら朝までらしい。一部記憶が曖昧で」

「アウレラも覚えてないのか?」

「あたしは先に酔い潰れて寝てたらしいから、朝まで一緒に飲んでたのクロアとミレリアみたい」

「ほう!トキオ、熟女一人と若い女二人に囲まれて飲んでたのか。うらやましいな」


「テリットさん!聞こえましたよ!熟女って誰のことですか!」

 受付からミレリアの声が飛んできた。


「え?あはははは、ちょっとした例えで・・・・」

 そう言ってテリットはごまかそうとしたが、ミレリアはすごい形相で睨んでいた。


「じゃあ、ミレリア、うちのパーティーは今日はこの依頼で」

「あ、はい」

 そこで、エドが依頼を受けるためにミレリアに話しかけた。


「あ、この隙にでかけるぞ」

 そう言うと、テリットは立ち上がった。




「しかし、朝までかあ。俺はもう無理かもなあ」

 街の出口に向かいながらテリットが言った。


「ええ~?俺と5つしか違わないじゃない。何言ってんのさ」

「でもなあ、30過ぎると急に年を取ったような気分になるんだよなあ」

「あー、なるなる」

 一つ年上のブロームが同意した。


「そんなもんかなあ。しかし、朝までいたけど、何を飲んでたかは覚えてないんだよね。実は、そんなに飲んでなかったのかも」

「じゃあ、何してたんだよ」

「え!何って・・・・普通にしゃべってただけなんじゃないかなあ・・・」

 トキオはそう言いながら、顔が赤くなってくるのを感じたので少し下を向いた。

 横目でチラッとアウレラを見たら、食料品店の前に並んでいる果物や野菜を見るふりをして顔をそらしていた。

「ふうん、ああ、まあ、記憶がないって言ってたからわかるわけないか」

「そ、そうだよ。覚えてないんだよ・・・あ、でも、昨日はかなりの頭痛だったから、やっぱりずっと飲んでたんじゃないかな」

「二日酔いってことか?それじゃあ、間違いないな」

「そう、そうだよ」


「それより、今日の討伐だけど・・・」

 トキオは、さりげなく話をそらした。


 アウレラを見ると、今度は洋服屋の前に並んでる商品を見るふりをしていた。





 そのころ、王都の聖光教団本部前では・・・



「では、今度こそ頼んだぞ!」


 キロウ司教は、また、南西部の辺境の地へ召喚者の捜索に行くミヒール司祭を見送りに出て来ていた。

 ミヒール司祭は、今から乗り込む馬車に荷物を積み込み終わって、その横に立ってキロウ司教の言葉を受けていた。

 キロウ司教の斜め後ろには、20歳半ばと思われる神父が付き従っていた。


「はい。年を越すことになるとは思いませんでしたが、かなり場所は絞れてまいりましたので、今度こそは召喚者様にたどり着けると思います」

「そう願っている。では、道中気を付けて。体調管理もしっかりとな」

「はい。また倒れることのないよう、無理のない行動を心がけます」

「よろしく頼んだぞ」

「はい、必ずや」

「光を我らに」

「光を我らに」


 ミヒール司祭は、馬車に乗り込むと行き先を馭者に告げ、最後に司教に一礼をして旅立って行った。


 キロウ司教と若い神父は馬車が一つ先の角を曲がるまで、そのまま見送っていた。



「おや、ミヒール司祭はどこかにお出かけですかな?」

 後ろから声がしたのでキロウ司教が振り返ると、そこには、司教や司祭とは違う法衣を着た老人が立っていた。

 そのすぐ脇には、まだ20代だと思われる、これも法衣を来た男が控えていた。


「これはこれは、ギヌメール導師!ご無沙汰しております。お変わりはありませんか?」

「ほっほっほ、体はいたって元気じゃよ。ただ、ここの方が少々まずいことになって来ておる」

 そう言って、ギヌメールと呼ばれた老人は自分の頭を指した。


「まさか、ご冗談を!見たところ、何も問題なさそうですが」

「ああ、今は大丈夫じゃ。しかし、時々記憶が無くなることがあっての。だから、ワシが魔法を教えるのは、このロタールで最後じゃ」

 ロタールと呼ばれた若い男は、司教に向かって一礼した。


「そうなのですか?それは実に残念です。ギヌメール導師から多くの魔法使いが教えを受けて参りましたものを。それがこの方で最後になるとは」

「いやいや、ワシが教えた者がさらに良い魔法使いをたくさん育てておるからな。ワシは、何も心配しておらんよ」

「そうですね。名のある魔法使いになられた方々にもたくさんお弟子さんがありますし」

「そうじゃそうじゃ・・・ただ、一つだけ心残りがあってのお」

「心残り?それはいったい・・・」

「いやいや、これはワシ個人の問題じゃから気にしなくてよい。それよりこのロタールも、あと、半年もすればどこかの街に赴任して力を発揮してくれることになるじゃろう。ワシは、それを楽しみにこの先を生きていくことにするよ」

「そうですね。若い方の成長を見るというのは実に楽しみなものです」

「そうじゃ、そうじゃ」


 ギヌメール導師は、そう言うと愉快そうに笑った。


「それでは、そろそろ失礼するぞ。司教殿も達者でな」

「は!勿体なきお言葉!ありがとうございます」


 ギヌメール導師は、ロタールを従えてゆっくりと去って行った。

 キロウ司教は、深々とお辞儀をしてしばらく見送ると、若い神父と教団本部へ入って行った。



「司教様、今の方はどのようなお方なのでしょうか」

 教団本部に入るとすぐ、若い神父が質問した。


「そうか、お前のような若い者は知らないか。あの方は、以前に教団の魔導士をされていた方だ」

「そうなんですか!失礼ですが、相当なお歳のようでしたから、かなり前のことになるのでしょうね」

「ああ、そうだな。引退されてから、もう30年になるかな。お前が生まれる前だ。まだ50歳と、体はすこぶる元気だったのだが、これからは若い者を育てたいと言って引退されたのだよ。今の魔導士長も、ギヌメール導師の弟子だ」

「え!?魔導士長のお師匠様なのですか!」

「そうだ。他にもたくさんいるがな。しかし、記憶が時々なくなるとは心配だ。様子を知る者に聞いてみるか。ああ、すまないが先に戻っていてくれ」


 キロウ司教は、若い神父にそう言うと、方向を変えて他の聖職者の執務室がある方へ歩いて行った。

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