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異世界マニアのおしかけ召喚者  作者: 伊部九郎
第7章 決戦編
556/562

第556話 2年ぶりの帰宅

「ここが俺んちね」

 自分の部屋の前に来ると、やはり自分の名前がドアの横に貼られたままだった。

(やっぱり大丈夫そうだな。でも待てよ?2年も留守にしてたから部屋の中はホコリだらけでカビ臭くなってるんじゃないの?)

「ちょっとここで待ってて」

 トキオは、鍵を開けるととりあえず換気だけはしようと皆に向かって言った。

「なんで?」

 クロアが聞いた。

「散らかってるかもしれないから片付けてくる」

「そんなの気にしないわよ」

「俺が気にするの!」

 トキオはドアを開けて中に入ったが、その瞬間、芳香剤の匂いが漂って来たので下駄箱の上を見ると室内用の芳香剤が置いてあった。

(は?なんだこれ?こんなの置いた記憶はないぞ?)

 不思議に思いながら廊下を進んで部屋に入ると、そこも芳香剤の匂いで満たされていた。キョロキョロと部屋の中を見渡すと、壁際のパソコンラックの上に芳香剤が置いてあった。しかし、気にしたホコリはどこにも積もってなかった。

(なんだ?管理人さんがやってくれたのか?)

 そう思ったが、とりあえず換気しようとベランダ側のカーテンとガラス戸を開けた。

「入っていいよ・・・あ!そこで靴は脱いで!」

 スアとユアが勢いよく上がってこようとしたのでトキオは慌てて付け加えたが、1歩間に合わなかった。

「そうですの?」

「わかりましたわ」

 スアとユアは足を戻すと、しゃがんで靴を脱ぎ、トキオの方へ駆けだしてきた。クロアとマキノも、ドアを閉めると靴を脱いで入って来た。

「ここがトキオさんのおうちですのね?いい匂いがしますわ」

「こちらのドアが隣の部屋ですの?」

 ユアが振り返ってそこにあった両開きのドアを開けようとした。

「そこはクローゼットだよ。風呂とトイレはあるけど、部屋はここだけ。アティムでも一部屋だけだったし」

「今は大きなお屋敷に住んでるけど、冒険者の一人暮らしって本来はこういうものよ」

「そうですよ~」

「そうなんですのね」

 ユアは、クロアとマキノの言葉で納得したようだった。

「こちらからお外が見えますわ」

 そこで、ベランダのところまで行ったスアがそう言ったので、他の3人もそっちへ行った。

「ホントだ!」

「おうちがたくさん見えます~」

「大きなおうちがたくさんありますわ」

 そんな会話が聞こえてきたが、トキオはその時、冷蔵庫の中が気になっていた。

(確か、コンビニで買ったサラダとプリン、それに飲みかけのトマトジュースが入ってたはず。そのままだったら相当ヤバいことになってるぞ)

 そう考えながら恐る恐る冷蔵庫を開けた。

(あれ?何も入ってない?管理人さんが捨ててくれたのか?でも、こんなことまでしてくれるかな?となると・・・)

 トキオは、ポケットからスマホを取り出すと電話をかけた。

 呼び出し音が2回鳴ってから相手が出たが、同時に大きな声が聞こえて来た。

「トキオ!トキオなの!?」

「うん、俺だよ母さん」

「今、どこにいるの!?」

「自分のマンションに戻ってきたところだよ」

「戻って来たのね!・・・一体、2年も連絡せずにどこに行ってたのよ!」

 後半は涙声になっていた。

「ちょっと異世界にね」

「異世界って・・・異国ってこと?どこの国にいたの?」

「いや、この世界じゃなくてホントの異世界」

「何を言ってるの?・・・まあいいわ。こっちに来て顔を見せてちょうだい」

「今どこ?」

「会社よ。受付に連絡しておくから私の部屋まで上がって来てちょうだい」

「わかった。あ、そうだ、連れが4人いるんだけどいい?」

「異国で知り合った人ってこと?いいわよ、一緒に連れてらっしゃい」

「ありがとう」

「すぐに来るのよ!いいわね!」

「わかったよ」

 そこで電話は切れた。


「今のなに?女の人の話し声がそのスマホから聞こえたけど、また録音ってやつ?」

 振り返ると4人とも近くまで来ていてクロアが聞いた。

「このスマホってのは本来は電話機なんだよ。前に教えたと思うけど離れたところと会話できる機能があるんだ」

「今のがそうなの!?スゴい!・・・それで、相手はお母さん?」

「そう。すぐに会いに来いって言うから出かけるよ」

「わかったわ」

「別のところに行くんですの?」

「疲れたかい?」

「全然大丈夫ですわ」

「また、珍しいものが色々と見られるんですよね?行きますわ」

「マキノもいい?」

「はい!楽しみです~」


「そうだ!キミたちのどが渇いてるんじゃないかい?」

 通りに出るとトキオがスアとユアに聞いた。

「はい」

「何か飲み物が欲しいですわ」

「ちょっと待ってね。クロアとマキノは飲み物持ってきてるよね?」

「水筒があるわ」

「大丈夫です~」


 それから、すぐ先にあった自動販売機のところで足を止めた。

「え~と・・・これとこれがいいかな?」

 お金を入れて小さいペットボトルのりんごジュースとオレンジジュースを買ったが、「ガコン!」という音ともに下にそれらが出てくるたびに4人は驚いた様子を示した。

「えっ?」

「どうなってるの?」

「何か出て来ましたわ」

「これは自動販売機と言って、お金を入れると飲み物が買える機械だよ。じゃあこれ。どっちも果物のジュースね」

「ありがとうございます!」

 スアとユアは同時に答えて一つずつ受け取ったが、持ち上げて不思議そうに眺めていた。

「ああ、いけない。()け方がわからないよね?」

 トキオは、二人がそれを持った状態のまま手を添えるとキャップをひねって外した。

「さあ、傾けるとこの上の口から中身が出てくるからそこをくわえて飲んでね」

「わかりましたわ」

 二人は言われた通りに一口飲んだが、すぐに驚いた顔をして口を離した。

「おいしい~!」

「あま~い!」

「これ、なんのジュースですの?」

「オレンジとりんごだね。ミュラレシアでは売ってないくだものだよ」

「そうなんですのね?」

「あれ?私のと色が違う」

「本当だわ」

「ちょっと取り換えっこしない?」

「いいわね」

 二人は、お互いのジュースを取り換えて飲んだ。

「こっちの方が甘い!」

「味が全然違うけど、こっちもおいしい!」

 その後は、もう一度取り換えて数回飲んだ。

「残りはあとで飲みますわ」

「そう?じゃあ、キャップを閉めておこう。これと逆にひねると()くからね」

「わかりましたわ」


 その後、大通りまで出るとトキオはタクシーを止めた。

 止まった途端、後席のドアが自動で開いたのを見て4人は驚いた。

「中に乗っている人が開けてくれたのね」

 すぐに納得した様子を示したが、後ろの席に誰もいないのを見てまた驚いた。

「すごく手が長い人ですのね!」

「そういうわけじゃないけど・・・さあ、乗って」

「え?この自動車ってので行くの?」

「そうだよ」

「やった!」

 スアとユアはすごく嬉しそうな顔になった。

 トキオは、安全性を考えて最初にクロアを乗せ、次にスアとユアを乗せ、最後にマキノを乗せた。トキオは助手席に乗った。

「ちょっと定員オーバーなんだけど」

 運転手が不機嫌な顔で言った。

「緊急の要件なんで、NNN物産の本社までお願いします」

 トキオは、警察手帳を開いて身分証を見せながら言った。

「あ、警察の人?わかりましたよ」

 運転手は、ちょっと驚くと緊張した顔になって車を発進させた。

「わあ、速い!」

「全然揺れませんわ!」

「外にいろんなものが見えますわ!」

「向こうから来る自動車がすごいスピードで通り過ぎ行きます~」

 走り出すと4人は興奮して大騒ぎになった。

「後ろの子たち、タクシーっていうか、自動車に乗るのが初めてみたいだけど、どこの田舎から来たの?というか、どこの国から来たの?」

 その騒ぎを見て、運転手がトキオに聞いてきた。

「あー、すみませんね。ミュラレシアからなんだけど」

「は?聞いたことない国だな。それどこにあるの?」

「ちょっと詳しいことは言えなくて」

「あ~、そういうこと?」

 トキオが警察官だと言うことで、運転手はそれで納得したようだった。


 母親が勤める会社のビルに着くと後部左がのドアが開いた。

「えっ!?」

 一番左側に座っていたマキノはビックリした顔になった。

「着いたよ。降りて」

「は、はい」

 トキオに促されてマキノはタクシーから降りたが、すぐに振り返るとスアとユアが降りる手助けをした。

 スアとユアは、降りてすぐ目の前のビルを見上げると驚いて目を丸くした。

「どうしたの?」

 上を見上げたまま動かなくなっている双子を見て最後に降りて来たクロアが声をかけたが、次の瞬間、同じように見上げるとあんぐりと口を開けて固まった。

 そこでマキノは3人の様子に気付いてビルを見上げて、同じように固まった。

「こ、こ、この高さって・・・」

 20秒ほどしてクロアがやっと口を開いた。

「お前には六本木ヒルズの写真を見せただろ?あれと同じくらいの高さなだけだよ」

「え?あれって下から見るとこんな感じなの?」

「そうだよ。さあ、みんな行くよ」

「は、はい」

 トキオが正面玄関に向かったので4人は慌てて後を追った。

 入口の自動ドアを入るとすぐ右に警備員がいて、クロアたち4人を見るとギョッとした顔をしたが、特に止められることはなかった。


「黒木時雄と言います。黒木翔子さんと約束があって来ました」

「少しお待ちください」

 トキオが受付で要件を告げると、受付嬢は手元のパソコンで確認を始めた。

「はい、伺っております。こちらの入館証を首から下げて、右手15から18番の直通エレベーターをご利用のうえ42階4003号室へお進みださい」

 受付嬢は、入館証を5つトキオに渡すと、右手でエレベーターの方向を指した。

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