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異世界マニアのおしかけ召喚者  作者: 伊部九郎
第7章 決戦編
555/562

第555話 驚きの世界

「トキオさん、トキオさん」

「ううん?・・・」

 トキオは、誰かに体を揺すられて目を開けたが、目の前にマキノの顔があったのでドキッ!として目が覚めた。

「着いたみたいですよ」

「えっ?」

 上半身を起こしながら周りを見回すと、壁の書棚にずらりと本が並んでいる見たことあるような薄暗い部屋の中だった。

「あ、ここは!」

 トキオが立ち上がって床を見ると、そこは魔法陣の上だったが、かなりホコリが積もっていて、そこにクロアと双子も横たわっていた。

「クロア、クロア」

 続いてマキノはクロアを起こし始めたが、その声で双子も目を覚ました。

「うう~ん・・・」

「あれ?・・・」

「ここどこ?」

 クロアは、上半身を起こすとキョロキョロ部屋の中を見回して不思議そうな顔をした。双子も同様で、また頭がハッキリしないのか、立ち上がると目をこすった。

「俺の世界に戻って来たんだよ」

「あ、そうか!」

 それでクロアは、自分がどこにいるか認識したようだったが、立ち上がって床にホコリが積もってるのを見ると渋い顔になって服をはたいた。

 双子の服は、マキノがはたいていた。

「ここがトキオさんのおうちですの?」

 スアが聞いた。

「いや、ここは俺んちじゃないけど、歩いていける距離だから行こう」

「はい!」

 スアとユアが同時に返事をした。

(2年近く経ってるから取り壊されてるか別の住人が住み着いてるかと思ったけど、この様子じゃあの時のままだな。まあ、不審死のあった事故物件だから買い手もつかなかったんだろうな)

 トキオは、そう考えながら部屋を出て玄関に向かった。後ろからは、スアとユアが並んでついてきており、その後ろはマキノ、クロアの順だったが、薄暗さに恐怖を覚えたクロアは、マキノの腰をしっかりつかんでびくびくと周りを気にしながら進んでいた。

 玄関には鍵がかかっていたのでそれを開けて外に出ると、ほど良い暖かさに午後の日差しがさしていた。

「ここがトキオさんの村ですの?」

「まあね」

「わあ」

 スアとユアが嬉しそうに顔になってトキオの両側から前に走り出ようとしたので、トキオはそれぞれの肩を掴んで止めた。

「車が来るかもしれないから飛び出しちゃダメだ!」

「車?馬車のことですの?」

「自動車っていう馬車より全然早い鉄の(かたまり)の乗り物だよ」

「ジドウシャ?聞いたことありませんわ」

「そりゃ、キミたちが生まれて初めて見る乗り物だからね」

「トキオさんの村にはそんなのがあるんですのね?」

「そうそう。危ないからここからは俺の言うことを絶対守るんだよ」

「わかりましたわ」

 双子は同時に答えた。

 それからトキオは振り返ってマキノとクロアに言った。

「キミたちもね」

「わかりました~」

「わかったわ」

「じゃあ、行こうか」

 トキオがスアとユアの手を握り、門に向かって歩き出そうとしたところで、門の外をダークグレーのミニバンが時速40キロくらいで大きなエンジン音とともに左から右に通り過ぎた。

「今のなんですの!?」

「黒い魔物!?」

「すごいスピード~!」

「恐ろしい唸り声!」

「魔物じゃないよ。あれが自動車で人間が作った機械だよ。あれに撥ねられたら危ないってのはわかるだろ?」

 皆は、ひきつった顔でうんうんと頷いた。

「じゃあ、離れないで付いて来てね」

 そう言われて、スアとユアはトキオと繋いでる手に力を込めた。


 門の外に出るとそこは住宅街で、一般的な2階建ての住居が連なっていた。道はセンターラインはないが自動車がすれ違える程度の広さで、歩道はなかった。

「家の形が独特ね」

「壁が石やレンガじゃないみたいです~」

「この辺りの家はほとんどが木造建築、つまり、木でできた家だよ」

「へえ~」

「そうなんですか~」

「家の周りの塀は、石でてきてるところもありますわ」

「まあ、そうだね」

 トキオは、コンクリートの説明が面倒だと思ったのでそう答えた。

「あれ?道路に継ぎ目がないわ!」

「本当ですわ!」

「これ、なんですの?」

「これは、アスファルトっていう、油の搾りかすみたいなものを流し込んで固めたものなんだよ」

「そうなの?」

「すごく滑らかです~」

「王都の道より歩きやすいですわ」

「スゴいですわ」

「気に入ってくれてなにより」


 そのまま歩いていくと、今度は赤いスポーツカーが前から向かって来た。

「自動車が来たから気を付けて」

 その言葉で、車は道路の反対側を走って来ているのに4人は必要以上に塀側に()けた。

 スポーツカーは、先ほどより速いスピードで通り過ぎたが、運転手は外国人にしか見えない4人に驚いたのか、スアとユアの貴族令嬢然としたひらひらの衣装に驚いたのか、ギョッとした顔でこっちを見ていた。

「人が乗っていましたわ!」

「なんだか、こっちをじっと見てたみたい」

「子供の双子が珍しかったんじゃない?」

「そう言えば、王都でお屋敷の外を歩いていると、他の人がよくこっちを見てましたわ」

「そうだろ?それと同じだよ」

 そんなことを言いながらさらに歩いていると大通りに出た。そこは、片側2車線の道路で、当然のように道路の両側には5階建て以上のビルや色んな店が立ち並んでいたので、4人は驚いて足を止め、しばらくその街並みに見入った。

「すごい・・・」

 1分ほどしてクロアがぼそりと言った。

「すごく大きなおうちがたくさんありますわ!」

「あのおうち、いち、にい、さん・・・・・12階もありますわ!」

「あのお店で売ってるものはなんですか~?」

 マキノが指さしたのは、オートバイ屋だった。

「あれはバイク屋だね。自転車にエンジンが付いたようなものを売ってるんだよ」

「エンジンってなんですか~」

「油を爆発させて車輪を動かす動力機関だけど、詳しい仕組みはあとで説明するよ。とりあえず俺んちに行こう」

「わかりました~」


 そこからしばらく大通りの歩道を歩いたが、店の前に来るたびに何を売ってるのか説明させられて、あまり速くは進めなかった。4人は街並みと店の珍しさに目を奪われて気づいていなかったが、すれ違う通行人からはジロジロと見られた。特に、スアとユアは皆の注意を引いた。

 最後に道路を反対側に渡ろうとしたが信号は赤だった。

「はいストップ!あの人の形に赤くなってるところが緑になるまで待ってから渡るんだよ」

「光ってますわ!」

「トキオさんが作ったランプが中に入ってるんですの?」

「あれは電気で光ってるんだよ」

「そんなことができるんだ」

「すごいです~」

「あ、上の方の丸いのも赤くなってますわ!」

「あれは自動車用ね。目の前の人の形のが人間用だよ」

「そうなんですの?」

「面白いですわ」


 道路を渡って自分のマンションまで近づいたとき、トキオは、あることに気付いた。

(そう言えば2年近く留守にしてたから、郵便受けはチラシとかダイレクトメールとかで溢れてて不審に思われてんじゃないか?あ!それ以前に銀行に2年分の家賃を払えるほどのお金は入ってなかった気がする!)

 トキオは、焦ったがそんなことを考えているうちにマンションに着いた。

「ここだよ」

 マンションは8階建てだったうえ、横に6室分の広さがあったのでそれを見上げてクロアとマキノは驚いた顔をした。

「ここがトキオさんのお屋敷ですの?」

 スアにそう言われて、トキオは、クロアとマキノが驚いた顔をした理由が分かった。

「いや、ここはマンション、つまり集合住宅で、俺はそのうちの一部屋を借りてるだけだよ」

「あ、そういうこと?すごいお金持ちかと思ってビックリしたわ」

「私もです~」

「俺は安月給の貧乏人だよ。じゃあ、行くよ」

 トキオは、歩き出して自動ドアからエントランスに入った。

「え!?ドアが勝手に横に開いた!」

「どうなってますの?」

「ああ、これは人が来ると電気で開くようになってるんだよ」

「スゴいです~」

「うちのお屋敷にも欲しいですわ」

「そうだね」

 いちいち細かいことを説明すると長くなりそうだったので、簡単に相槌を打ってから恐る恐る自分の郵便受けを見た。

 するとそこには変わらず自分の名前があった。

(良かった!家賃はなんとか足りたみたいだな)

 トキオは、ホッとすると鍵を取り出して郵便受けを開けた。入っていたのは、貴金属買取店のチラシが1枚だけだった。

(あれ?これだけ?変だな。管理人さんが片付けてくれたのかな?)

 トキオは不思議に思ったが、チラシはそのままにして鍵を閉め、二つ目の自動ドアのところに行って暗証番号を入力した。自動ドアは問題なく開いた。

「あれ?今度は数字を入れて開けたの?」

 クロアが聞いた。

「ああ、ここの住人以外が入って来ないように、住人それぞれしか知らない番号を入れるようになってるんだよ」

「へえ~、面白いわね。どういう仕掛けなのかはさっぱりだけど」

「だろうな。それより、俺の部屋は4階だからエレベーターに乗るよ。こっちに来て」

 トキオがドアの奥に進むと4人は付いてきた。

 エレベーターはちょうど1階で止まっていたのでトキオが上矢印のボタンを押すとドアは開いた。

「え?今度はボタンで開いた!」

「色々あるんだよ。さあ、乗って乗って」

「乗る?」

「いいから」

 4人は不思議そうな顔をしながらも、エレベータの中に入った。

「じゃあ行くよ」

「行くってどこに?他にドアはないみたいだけど」

「すぐにわかるよ」

 トキオが「閉」のボタンを押すと、ガクンという音ともに上昇を始めた。

「キャッ!」

「なんか動いてます~」

「なんですのこれ?」

「どうなってるんですの?」

「この小さな部屋ごと上に移動するようになってるんだよ」

「ええっ?」

 4人は驚いた顔で天井と床を交互に見た。

 そんなことをしているうちに「チン!」という音ともにエレベーターが止まった。

「キャッ!」

 また悲鳴が上がり、同時に扉が開いた。

「さあ、降りて降りて」

 トキオが「開」ボタンを押しながら手ぶりで降りることを促すと、4人はキョロキョロしながらエレベーターを出た。

「乗った時と違うところに来てますわ」

「明るくなってる」

「外の通路で日の光が入るからね。さあこっち」

 トキオは、左に折れて自分の部屋に向かおうとしたが、通路に出ると手すり越しに外を見たクロアとマキノが驚いて立ち止まり、手すりに張り付いて下を見下ろした。

「ホントに高いところに来てる!」

「ビックリです~」

 それを聞いたスアとユアも手すりに寄って行き、背伸びをして下を見た。

「本当ですわ!」

「驚きましたわ!」

 トキオは、その様子を見て苦笑しながら、

(やれやれ、これじゃどこに行くにも時間がかかってしょうがないな)

 と、考えていた。

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