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異世界マニアのおしかけ召喚者  作者: 伊部九郎
第7章 決戦編
554/563

第554話 国葬

 そこからさらにトキオは、元の世界で撮影していた動画を見せたりして皆が驚く様子を楽しんでいた。


 最後に、セバスチャンに撮影してもらって全員で記念撮影をした。撮影した写真を見て一同はまた驚いたが、その前に見聴きしたものの衝撃が大きかったので、それほど大きな驚きは示さなかった。



 3日後、魔王討伐戦で戦死したアンドレス王子の国葬が城に隣接する祭事用の広場で執り行われた---戦闘には参加してないし指揮もとってはいなかったが、戦場で敵の手(魔王)によって命を落としたので「戦死」には違いないなかった---。

 葬儀場に入れたのは、王族、貴族、聖光教団の上級職、軍関係者、造兵局の上位管理職に限られたが、王子が亡くなったということで悲しみの意を表す国民も多く、低い植込み越しに中を伺うことができたため、葬儀場の外は多くの民衆であふれかえった。また、魔王討伐戦で生き残った兵士のほとんどもその場所にいた。

 一番の悲しみに包まれていたのは王妃のエルラで、王子の訃報を聞いた時にその場で泣き崩れ、そのまま葬儀の席でも泣き続けていたため弔問客の貴族からのお悔やみに答えることができず、アロイス王子が王妃を支えながら受け答えをしていた。そのアロイス王子も、悲しみに沈んでいたため返答は簡潔なものだった。

 一人、ぼんくらのアンドレス王子が王位を継ぐことに大きな不安を抱えていたセシルだけは、切れ者であり尊敬するアロイス王子が第一王位継承者となったことを喜んでいたが、さすがに葬儀の席では無表情を通していた。


 王様の悲しみは深かったが、戦場にいた誰をもなじることはせず、それどころか、魔導士、勇者、師団長の一人一人に、魔王討伐を果たしたねぎらいの言葉をかけていた。さらに、葬儀の最後に、用意された壇上に登っての全体に向けた言葉の中で魔王討伐戦に参加した全兵士に向け感謝の意を述べた。

 その言葉に対し、葬儀場の外にいた兵士と民衆の多くが涙を流した。


 トキオは、クロアと並んで葬儀に参列していたが、王様の言動に少なからず感動を覚えたものの、この世界の王族の葬儀を観るのが初めてだったため、それを細かく観察することに神経を取られて泣くことはなかった。隣に座っていたクロアは、静かに涙を流していた。



 それから10日間は、喪に服するために仕事の関係で特別に許可を得たものを除き、王都に居住する者は王都から出ることを禁じられた。

 トキオは、スマホが復活したことにより、その間に王都の景色を撮影することにしたが、それを聞いて興味を持ったクロアも同行することになった。

 スマホを見られると通行人に質問攻めにされて大騒ぎになると思ったので、キビルに馭者を頼み馬車で王都内を巡りながら閉めきったカーテンの隙間から撮影したが、スマホの容量を気にしてほとんどは写真にとどめ、珍しいものを目にした時だけ短い動画を撮影した。

「なんかすごくたくさん撮ってるみたいだけど、何枚撮れるの?」

「枚数はわからないなあ。まあ、千枚は撮れるんじゃないかな?」

「ええっ!?そんなに?そんなにちっちゃい板なのに?」

「あ、元の世界で撮影した写真や動画を削除すればその倍は撮れるかな?」

「それどういうこと?どういう仕掛けになってるの?」

「だからあ、それは説明したって理解できないって言ってるだろ?」

 そう答えたトキオだったが、実のところ細かい技術については自分もまったく理解していなかったので、説明を逃げているだけだった。

「そうなの?この世界とは技術レベルが段違いなのね」

「そういうこと」

「まあ、もうすぐ現地で色々と見られるからいいけど」

「やっぱりお前も付いてくるのか?」

「当然でしょ?あんな写真とか見せられたら行くしかないじゃない?私が付いてきたらイヤなの?」

「そういう訳じゃないけど、二人も連れて歩くのは大変だと思ってな」

「なによそれ?子供じゃないんだからあんたのお荷物になんかならないわよ!」

「この世界といろいろ違うからなあ。自動車がどういうものか知らないお前は道路歩くのも危険だし」

「え?なんで?」

「狭い路地でも馬車とは比べ物にならないスピードで走ってくるんだよ。しかも、固い金属の(かたまり)が。道の真ん中なんか歩いてたら撥ねられて大怪我待ったなしだよ」

「また子ども扱いして!王都の中だって道の真ん中なんか歩かないわよ!」

「そうだといいけどな。とにかく、あっちに行ったら俺の言うことは絶対聞いてくれよ。それが条件だ」

「わかったわよ!」

 クロアは、不機嫌な表情になったが、その表情の中にワクワク感が混じっているのをトキオは見逃さなかった。




 喪が明けた2日後の午後早く、トキオとクロアは城の魔法鍛錬場にいた。その場には、4人の魔導士とマキノもいた。

 そして、部屋の真ん中の床には直径2マインほどの魔法陣が描いてあった。

 トキオ、クロア、マキノはリュックを背負っており、トキオは、手に召喚の書を抱えていた。

「3人とも見慣れない服を着ているが、そのデザインはそなたの世界のものか?」

 魔導士長が聞いた。

「はい、そうです。こっちの世界の服だと目立っちゃうんで、セバスチャンに頼んで取引のある仕立て屋に作ってもらいました。まあ、見た目だけですけどね」

「見た目だけとは?」

「俺の世界の服はもっと伸びるんですよ。体にぴったりしたサイズでも窮屈に感じることがないほどに」

「そうなのか?それは素晴らしいな」

「そうだ!皆さんにお土産として買ってきましょう」

「本当か?それは嬉しいな。よろしく頼む」

 魔導士長はほほ笑み、他の3人の魔導士も嬉しそうにほほ笑んだ。


「では、そろそろ」

「はい」

 魔導士長の言葉で、トキオ、マキノ、クロアは魔法陣に向かって歩き出した。


「お邪魔しますわ」

 その時、入口から聞き覚えのある元気な声がハモって聞こえて来たので皆が一斉にそっちを見ると、スアとユアが入って来るところで、その後ろにはチシタリア夫人もいた。

「あっ!お姉さま~!」

 スアとユアは、クロアの姿を見つけると、走って来て飛びつくように抱きついた。

「あなたたち、どうしたの?」

「アンドレス殿下のお墓参りに来たんですわ」

「遠過ぎて葬儀には間に合わなかったけど、墓参りくらいはしないとヘルムートに怒られそうだからね。ヘルムートには会ったから、魔導士たちの顔も見ようと聞いたらここにいるって言われたのよ」

 チシタリア夫人が言った。

「何か魔法訓練という感じじゃないですけど、何をしてたんですの?」

「あれ?大きな魔法陣が描いてありますわ?」

「あ、ええっと・・・これも魔法訓練の一つで・・・」

「あら?トキオ、もしかしたらあなた、元の世界に帰ろうとしていたの?」

 クロアがごまかすために何かを言おうとした瞬間、チシタリア夫人が聞いた。

「元の世界?」

「なんですのそれ?」

 チシタリア夫人は、しまった!という顔になったがもう遅かった。

「ええっとね、魔王も討伐できたし、しばらく帰ってなかったから、ちょっと転移魔法で俺の村に帰ろうとしてたんだよ」

 トキオも焦ったが、全然違うことを言っても納得しないと思ったので、どうとでもとれる言い方でごまかそうとした。

「えっ!そうですの!?」

「私たちも行きたいですわ!」

「ええっ?」

 予想外の反応が返って来てトキオはさらに焦った。

「う~ん、でも、失敗する可能性もあって危ないわよ・・・それと、泊りがけで出かけるんだけど、あなたたち着替えとか持ってないでしょ?」

 クロアが助け舟を出すように言った。

「持ってませんけど・・・あ!でも、馬車に積んであるからすぐに持ってこられますわ!」

「そうですわ!」

「じゃあ、持ってらっしゃい。ここで待ってるから」

「わかりましたわ!」

 その時トキオは、スアとユアの背後からチシタリア夫人に向けて手を合わせて拝むような恰好をした。チシタリア夫人は、了解したという顔でわずかに頷いた。

「じゃあ、行きましょうか」

 チシタリア夫人は、双子を促して一緒に部屋から出て行った。


「それでは、今のうちに執り行おう」

「はい!」

 トキオたち3人は、再び魔法陣の方へ歩き出した。

「帰還転移の呪文はその書の後ろの方に書いてある通りだが、確認して来ているな?」

「はい。そんなに長い呪文でもなかったので、すでに暗唱済みです」

「よろしい。その書を持っていないと発動しないから、失くさないよに注意することだ。こちらへ戻って来れなくなるぞ。では、トキオが魔法陣の真ん中に立ったらマキノとクロアはトキオの体に触れてくれ」

「はい!」

「わかりました~!」

 マキノは、魔導士たちを前にしてもいつもの通りのしゃべり方でほほ笑んだ。

 右に立ったクロアはトキオの右手を握りしめ、左に立ったマキノはトキオが左手に書を持っていたので、その手首を掴んだ。



 スアとユアは、チシタリア夫人のあとをついて歩いていたが、部屋から出て10マインほど行ったところで同時に足を止めた。

「最初は危ないって言ってたのに、ちょっと変じゃない?」

「そうだよね?」

「戻ろう!」

「うん!」

 二人同時に、全速力で魔法鍛錬場の方に駆け出した。

「あ、待ちなさい!」

 チシタリア夫人は、慌ててその後を追った。


「・・・・アイラ・ハレ・マリエール!」

 トキオが呪文を唱え終わると、魔法陣全体が光りはじめ、その光はだんだんと強くなった。

 しかし、次の瞬間、入り口のドアが勢いよく開き、スアとユアが飛び込んできた。

「あ!やっぱり!」

「私たちも行きますわ!」

 二人はそう言うと、魔導士たちが止める間もなく魔法陣の中に飛び込んだ。そして、すぐにクロアとトキオが繋いている手をそれぞれの両手で上下から挟むように握った。

「あなたたちダメよ!」

 続けて部屋に飛び込んできたチシタリア夫人は、止めようと魔法陣の方へ駆けて行ったが、

「今から入ると危険です!」

 と、モルナール魔導士に手首を掴んで止められた。

「大丈夫ですわ~」

「すぐに帰ってきますわ~」

 スアとユアが笑顔で言った。

「トキオ!二人を頼んだわよ!」

 チシタリア夫人が、悲痛な声で叫んだ。

「わかりました!」

 トキオがそう答えた直後、5人の姿はシュン!と魔法陣の中に吸い込まれるように消えた。

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