第28話 新しい娯楽は熱かった
最後の3行を書き換えて、実際のバトルを再現してみました( ̄ー ̄)(2020/11/14 17:00)
「そういえば、ずっと前からヴァルターのパーティーを見かけないけど、どうしたの?」
その日の朝、朝食を食べながらトキオはテリットに聞いた。
「ああ、奴らは今まで威張り散らしていたのがお前に瞬殺されたもんだから居づらくなって、他の街のギルドに移籍したんだよ」
「あら?そうだったんだ」
「ヴァルターの腕力はこの街で随一で剣の腕も立つヤツだったし、他の3人も個人個人の腕前はそこそこだったけど、子供のころからいつも一緒にいて冒険者になるための鍛錬も一緒にしてたから見事な連携をするパーティーだったんで、魔物討伐という意味では損失だったけどな。実際、お前が色々と教えてくれるまでは、単独でグリベラーを討伐できるのはあのパーティーだけだったんだ」
「へえ、そんなに優秀なパーティーだったんだ」
「ああ。でも、今はドロップアイテムで収入が増えてみんながいい武器に買い替えることができたし、お前が格闘技やフェイントや武器に強化魔法が使えることを教えてくれたことでスキルが上がったから、いくつかのパーティーは単独でグリベラーを討伐できるようになってる。だから、実質的には問題なしだ。むしろ、いつも我が物顔だったあいつらがいなくなって、みんなせいせいしてるよ」
「ホントホント」
「その通りだな」
アウレラとブロームも同じ思いだった。
「そうかー。しかし、冒険者のみんなってマジメだよねえ。飲みに行く以外に娯楽を楽しむってこともしてなさそうだし、休みも交代で週に1日しかとってないし」
「娯楽かあ・・・以前は、休日によく郊外に薬草の採取もかねてハイキングに行ったり、子供たちなら野原で隠れ鬼をしたりしてたんだが、今は街から離れると魔物がいつ出てくるかわからなくて危険だから、そういうこともしなくなったなあ。子供たちも、街中で隠れ鬼をしたり、学校や広場の遊具で遊ぶぐらいになっちまったからな」
「そうかー・・・でも、気晴らしに何かすることは必要だと思うなあ」
「まあ、そうだけどな、今は難しいな」
「ん?もしかして、またトキオの村でしかやってなかった何かがあったりするの?」
「いや、特に考えてたわけじゃないけど・・・そうかあ、ここでは見かけない俺の村の娯楽があるにはあるから、ちょっと考えようかな」
「ホント!期待しちゃう!」
「みんなが気に入るかはわからないから、あんまり期待されても困るんだけど」
「いやいや、今まで見たこともないことなら、みんな喜ぶと思うぞ」
「俺もそう思う」
その日、トキオはアパートに帰ってから色々と考えてみた。
正直、元の世界にしかない娯楽はたくさんあったのでネタには困らなかったが、手軽にできて、冒険者も子供も興味を引きそうで、なおかつ自分がやり方をちゃんと把握しているものである必要があった。
また、この世界にはプラスチックやゴムがなかったので、それらを使うものもだめだった。
(うーん・・・そうだ!俺が大学時代にハマってたあれなら道具もルールも熟知してるからイケるな!よーし・・・)
トキオは、用意しておいた紙を取り出すと、なにやら描き始めた。
1週間後の朝。
「できたよー」
トキオは、ギルドに来てテリットたちがそろっているテーブルに着きながら言った。
「ん?なにがだ?」
「これこれ~」
トキオはそう言うと、持って来た布製の手提げ袋から数字の書かれた丸い板を取り出してテーブルの上に置いた。
「あら、カラフルでキレイ」
「こりゃなんだ?」
「これはダーツボードっていう的ね」
「的?」
「そう。そしてこれが、ダーツっていう矢」
「ほう~、これが矢なのか。また小っちゃい矢だな」
弓使いのブロームが一番興味を示したようだった。
「これはね、手で投げる矢なんだよ。これをこっちの的目がけて投げるの。周りに数字が書いてあるでしょ?何回か投げて、矢が刺さった位置の合計得点で競うゲームね」
「へえ~」
3人がほぼ同時にそう言ったが、ピンとこないのかそれほど感心した風ではなかった。
「うーん、ルールを説明する前に実際にどんな風にやるのか見せた方が良さそうだね。この的は壁に掛けるものだから、ちょっと壁の方に行こう」
4人は、トキオを先頭に壁に近いテーブルに移動すると、トキオが壁に行って的を貼り付けた。あらかじめ、裏側に釘を仕込んで刺さるようにしてあった。
それから、大股で3歩ほど離れると、的の方を向いて矢を右手に持った。
そこで、他の冒険者たちの何人かがトキオたちの周りに集まって来た。
「なんだなんだ?何か面白いことやるのか?」
パーシーがそう言った。
さらに、トキオが見慣れない何かを持っていて、壁にも見慣れない丸い物が貼りつけてあるのを見ると、
「お?また、トキオが何か新しいこと始めたか?そりゃ、楽しみだな」
と、興味深そうに言った。
そのパーシーの言葉で、他の全員もトキオたちの周りに集まって来た。
その集団の後方では、ミレリアが背伸びをしながら興味津々と言った顔で覗き込んでいた。
エレザベスも、全員がそっちに行ってヒマになったので、ミレリアの隣に来て見ていた。
「ありゃ、みんな集まってきちゃったか。まあ、説明が二度手間にならなくていいや」
トキオは、改めて的の方を見た。
「それで、このくらいの距離の床に壁と平行な線を引いて、その線を踏み出さないようにして、この矢を押し出すように投げるんだよ。こんな感じでね」
トキオはしばらく狙いを付けると、言ったとおりに投げて見せた。矢は、真ん中やや右下の白い部分に刺さった。
「おお!」
集団から軽い感想の声が漏れた。
「矢が刺さったところの枠を外側にたどっていくと15って書いてあるでしょ。だから、今のは15点ね」
「ああ、なるほど」
テリットが言った。
「その途中に、輪っか状に細い枠が2つあるでしょ?赤と青のところね」
「ああ、確かに」
「それの外側の方に刺さると点数が2倍になって、内側の方に刺さると3倍になるんだよ。だから、俺の投げたのがもう少し下の赤いところに刺さっていたら45点になったわけ。あ、真ん中の赤い丸のところは50点ね」
「なるほど、そういうことか」
「ちょっと、俺にやらせろよ」
ブロームはそう言うと、壁の的から矢を取ってトキオが立ってるところに移動した。
「どうぞ~」
トキオはそう言いながら場所を譲った。
ブロームは、トキオのさっきの構えを真似した。
「ということは、20って書いてある下の青い枠うち、下の方に刺せば60点で一番点数が高いってことだな?」
「そういうこと~」
「ようし、見てろよ」
ブロームはそう言うと、すごく真剣な顔になり、しばらく狙いをつけてから矢を投げた。
矢は、60点の枠のやや右下に刺さった。
「ありゃ?少しずれたな。ということは・・・・・1点かよー!」
全員が笑った。
「そう。わざとそういう風に、点数の高いのところを少し外すと極端に点数が低くなるように配置されてるんだよ」
「くそ!もう一回だ」
ブロームはそう言うと、的から矢を取って来て元の場所に戻り、また、的に狙いを付けた。
今度は、さっきよりさらに真剣な顔になり、長いこと狙いを付けてから矢を投げた。
矢は、60点の左上に刺さった。
「ああっ!今度は、5点だよ~」
また笑いが起こった。
「でも、さすがブロームだね。初めてなのに、狙ったところのすぐそばに刺さってるもんなあ」
笑いが収まってからトキオがそう言うと、他の冒険者たちも、うんうんと頷いた。
それからは、俺にもやらせろ、私にもやらせろで、結局、全員が1回ずつ投げて、刺さった場所によって笑いが起こったり、感心する声が漏れたりで、大いに盛り上がった。
マルケルの投げた矢は、的を完全に外して壁に刺さったため、大爆笑が起こるとともに盛大にヤジが飛んだ。
「このダーツの道具一式は、建具屋のフォッケに作ってもらった物で、売れるからもっと作っといてって言ってあるから、欲しい人はそこで買ってね」
解散する直前にトキオが言った。
「おお!そうか!」
「よっしゃ!俺は買うぞ!」
「俺も買って、家で練習するぞ」
「俺もだ!負けねーぞ!」
そんな感じで、最後まで大盛り上がりだった。
しかし、そうやって朝から盛り上がったおかげで、その日の柔道教室はお休みになった。
ダーツの的はそのまま壁に貼りつけてあり、矢が3本そこに刺さったままになっていた。
冒険者たちが全員討伐に出かけた後、ミレリアが飲食コーナーにやって来た。
周りを見渡して誰もいないことを確認すると、的から3本の矢を抜き、先ほど皆が矢を投げていた位置まで戻って来た。そこには、いつの間にか白い線が引いてあった。
それからミレリアは、その白い線につま先を合わせて立つと的の方を向き、矢の一つを右手で持って狙いを定めた。
「えいっ!」
ミレリアの投げた矢は、的の右下の方に刺さった。
「2点かあ・・・」
そこで、厨房から出て来たエレザベスがミレリアを見つけると、足音を忍ばせて背後から寄って行った。
ミレリアは、2本目の矢を狙いを定めて投げた。
「えいっ!」
今度は右上の4点のところに刺さった。
「どっちも真ん中を狙ったのになあ。なかなか難しいわねえ」
「なにしてんのよ」
「ひゃあ!」
背後で突然エレザベスの声がしたので、ミレリアは驚いて飛び上がった。
「まったく下手ねえ。ちょっと貸しなさいよ」
エレザベスはそう言うと、ミレリアから矢をひったくってどかせ、的に狙いを定めた。
「ほっ!」
そう言って投げたエレザベスの矢は、見事に真ん中に突き刺さった。
「うそ!」
ミレリアは驚きの表情でエレザベスを見つめた。
エレザベスは顎を上げ、どや顔でミレリアを見下すように見た。
「さっきのは手元が狂ったのよ!見てなさい!」
ミレリアはそう言うと、素早く3本の矢を取って来て、白線のところに立ち狙いを定めた。
「やっ!」
今度の矢は、18点のところの内側の青い枠に刺さった
「・・・54点。私の勝ちね」
今度はミレリアがどや顔でエレザベスを見た。
「な、なかなかやるわね。どうせ、真ん中を狙ったのが外れたんでしょうけど」
ミレリアは図星を刺されてギクリとしたが、
「ちゃんと狙ったに決まってるでしょ!言いがかりはよして!」
と、強がりを言った。
「ふん、まあいいわ。じゃあ、どっちが本当に優れてるか勝負しましょう!」
「望むところよ!」
それから、二人の壮絶な死闘が始まった。
「はっ!」
「だっ!」
「うー!」
「やー!」
「たー!」
ギルド支部長のケリーが受付に来ると、ミレリアの姿がなかった。
飲食コーナーかな?とそちらを見ると、ミレリアとエレザベスが奇声を発しながら何かをやっているのが目に入った。
そこへ歩いて行こうとしたが、二人から恐ろしく熱い闘気を感じて足を止めた。
その闘気は、かつて自分が冒険者をやっていたときに、強い魔物に対峙した上級の冒険者から感じたものに似ていた。
ギルド支部長は、回れ右をすると、すごすごと事務室へ戻って行った。
「はあ、はあ・・・ふっ。5勝5敗か。なかなかやるわね」
「あなたもね」
「もうお昼で仕事があるから今日はこの辺で勘弁してやるわ」
「ふ、それはこっちのセリフよ」
「次回は容赦しないからね!」
「あなたこそ覚悟しなさい!」
そう言うと、二人はそれぞれの持ち場へ戻って行った。
この日の女同士による熱い戦いは、二人の闘気にビビった支部長が口外しなかったため、冒険者は誰も知ることがなかった。
すみません、実は私、ダーツはあまり詳しくありません(^^;)。なので、このお話のためにちょっと調べましたw
私が大学時代にハマっていたのはボウリングだったので、そっちはかなり詳しいですけど、大掛かりな設備が必要になるので、この世界では無理ですね(^^;)
ほかに思い付いたのはオセロだったんですが、他の異世界マンガで使われてしまったので出せませんでした。
将棋や囲碁はルールが難しいですから、これも合わないですね。




