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異世界マニアのおしかけ召喚者  作者: 伊部九郎
第4章 北部冒険編
212/562

第212話 剣の切れ味

 夕食になるとフーゴは、さらに驚き、さらに大騒ぎをしたのだった。


「なんだこの美しい料理は!こんなの見たことない!」

「えー!おいしいなんてもんじゃないぞ!」

「まだ出て来るんだ!」

「このデザートもサイコー!」


 その様子をクロアは苦笑しながら見ていたが、そのクロアの表情を見たトキオは言った。

「お前とテリットたちが最初にここで夕飯を食べた時も、同じような反応だったよな」

「え~?そう?・・・ああ、でも、こんなにおいしい料理を食べられたんだから、そうだったかも」

「そうだよ。俺はよく覚えてるよ。ねえ、セバスチャン」

「はい、そうでしたね。でも、これだけ褒めていただけると料理長のジュリオも喜びます」

 セバスチャンは微笑みながら言った。



 最後にお茶が出てから、フーゴはやっと大人しくなった。


「ふ~、食った食った!なんかもう、一生分のご馳走を食べた気がするな!」

「何言ってんの。まだまだ、最高であと1か月も食べられるんだからね」

「あー、そうか!そりゃまた楽しみだな~」

「1か月なら、きっと同じ料理は出てこないわよ」

「え~!?ホントかよ!」

「ああ、多分そうなるだろうね。同じ食材を使っても、微妙に変えて来るしね」

「そうそう」

「そりゃまいったなあ・・・」

 フーゴはそう言うと、嬉しそうに頭を掻いた。


「朝ごはんもおいしいし、ボリュームたっぷりだからね」

 クロアが、フーゴの様子を見てニヤニヤしながら言った。

「ホントか!・・・いやもう、王都に来たかいがあったってもんだな」

「なんだそれ。何しに来たんだよ」

 トキオが苦笑しながら言った。


「いや~、ここだけの話だけど、俺って旅行が好きじゃないし、王都は遠いしで、正直なところ、あまり来るのは乗り気じゃなかったんだよ。でも、お前の屋敷とこの料理をテリットたちが絶賛してたのが前から気になってててな。それが、決心した理由の半分ぐらいだったのさ」


 その言葉で、トキオとクロアは声を上げて笑った。


「なんだそれ!面白いなあ~」

「フーゴって、そんな冗談言えるんだったのね」

 トキオとクロアのその言葉に、フーゴは急に真顔になった。


「なに言ってる。真面目な話だよ。アティムじゃみんな、ここに来てこの食事を食べたいと言ってるんだからな」

「え~?そうなの?・・・うーん、でもこの味を堪能してみたいってのはわかるかも」

「そうねえ。以前に王都にいた私でも、アティムで話を聞いたら、ここの料理は食べてみたいって思ったかも」


 そこでフーゴは、お茶を一気にガブガブと飲んだ。

 すると、カップを置くと同時に、セバスチャンが寄って来てテーブルのティーポットからフーゴのカップにお茶を注いだ。


「あ、ありがとう・・・こういうところもスゴいよな。こんな素早い対応は、友達の結婚式に出た時にもなかったよ」

「そりゃあ、質が違うからね。元々は、勇者様の屋敷に勤めていた執事だから」

「え?そうなのか!?」

 フーゴは、驚いた顔でセバスチャンを見た。

 セバスチャンは、フーゴに軽く会釈を返した。


「・・・それでこの身のこなしなんだな。この人選も国王陛下の指示なのか?」

「そうみたい。王様もセバスチャンのことをよく知ってたしね」

「え!・・・それも驚きだなあ」


 フーゴはそう言うと、再びセバスチャンを見た。それに合わせて、セバスチャンも再び会釈を返した。



 そこでフーゴは、壁の一角を見つめると少し難しい顔になってトキオに聞いた。

「ところでさあ、この屋敷に入った時から気になってたんだけど、あの壁にかかっている照明は何だ?蝋燭じゃないよな?」


 その言葉で、トキオはフーゴが見ている方を振り返った。


「ああ、あれはランプって言って、油を燃料とした照明器具だよ」

「油を?・・・ふーん、王都にはこんなのもあるんだな」

「いや、少し前に俺がいた村にあったのを思い出して、造兵局で作ってもらったんだよ」

「え?あれって、お前が作らせたのか?」

「そうだよ。蝋燭より明るくていいでしょ?」

「確かにそうだな。それと、炎がガラスで覆われてるから、あれなら風が吹いても消えないだろ」

「そうそう。その点もいいんだよね」

「ああ、すごくいいよ。ちょっと俺も作ってアティムで売り出したいな。サンプルに一つ貰えるか?」

「いいよ・・・セバスチャン、予備があったよね?あと、ハリケーンランタンも」

「はい。ございます」


 セバスチャンがそう言い終わるとすぐに、ジェーンがランプとハリケーンランタン、それに油さしのようなものをトレーに乗せて現れた。


「うわっ!もう出て来た。早いな~」

 フーゴが感心していると、ジェーンはそれを、向かい合って座っているフーゴとトキオの間に置いた。


「二つとも油は入っておりませんので、使用される場合はこちらの油をお使いください」

 ジェーンは、油さしを手で示してから、お辞儀をすると奥へ下がって行った。


「あ、どうも」

 下がっていくジェーンに向かってフーゴは頭を下げた。


「じゃあ、構造と使い方を説明するね」


 トキオはそう言うと、まず、ランプを取ってフーゴに説明を始めた。





「・・・なるほど~、そうなってるのか~。よく、考えてあるなあ」

 ハリケーンランタンの説明まで終わると、フーゴは感心して椅子にもたれかかった。


「そうでしょ?俺も、最初に構造を知った時にはすごく感心したんだよ」

「そうだろうなあ・・・こりゃあ、絶対売れるよ!」

「そうだと思うよ。そうすれば、アティムの街の中が明るくなっていいね」

「その通りだな」

「あー、ランプで景色が変わったアティムの街を見てみたいわね」

 クロアが、柔らかな笑みを浮かべながら言った。


「お前がアティムに戻るころにはそうなってるだろうよ」

「そうね。きっとそうね」



「さあて、ここで長話をしているとセバスチャンたちもずっと待機してて大変だから、俺の部屋で話そうよ。先月戻った時は、あまり話す時間もなかったから、色々とアティム近辺の近況を聞きたいしね」

「お、そうだな。俺も、お前が王都に来てから何をして来たか色々と聞きたいしな」

「そうだね。じゃあ、行こう」


 トキオのその言葉で、3人は同時に立ち上がった。




「おお~、確かにさらに広いな」

 トキオの部屋に入ると、フーゴは感心した声を上げて、ゆっくとり部屋の中へ入って行った。


 そして、何気なく廊下側の壁を振り返って、そこに剣が掛けてあるのに目を止めた。


「ほお~、これはまた見事な剣だな。どうしたんだこれ?元々ここにあったのか?」

「いや、これも王様から貰った報奨だよ」

「え?・・・ということは、王家の持ち物だったってことか?」

「そうみたい。お城の宝物庫にあったんだって」

「へえ~、すごいなあ。じゃあ、王家の秘宝だったんだろうな・・・ちょっと見せてもらっていいか?」


 その言葉で、トキオとクロアはニヤリとした顔になった。


「いいよ~。ちょっと待って」

 トキオは、ベッドの脇に置いてあるスツールを取りに行ったが、トキオとクロアの表情を不思議に思ったフーゴがクロアに聞いた。


「なんだお前らのその顔」

「すぐにわかるわよ」

 クロアはニヤついた表情のままそう答えた。


 それを横目で見ながら、トキオはスツールを壁の前に持ってくると剣を壁から下ろしてスツールから降りた。

 そして、ニヤニヤした顔のままフーゴに差し出した。


「はい、どうぞ。すごく重いから注意してね」

「重い?そんなこと言ったって所詮は剣の重さ・・・・うおっ!」

 フーゴは、予想をはるかに上回る重さに慌ててしっかりと剣を抱きしめた。


「なんだこの重さは!これで使い物になるのか?」

「その剣って、先月、南部に持って行ったものだよ。俺が背中に背負ってたでしょ?」

「え?あれってこれだったのか?よく、こんなものを背負って歩けたなあ」

「それには秘密があるんだよ」

 そう言うと、トキオはクロアと顔をに合わせて、さらにニヤリとした。


「秘密?なんだよそれ」

 フーゴは、二人の様子に怪訝な表情を浮かべた。


「そのまま持ってて・・・クロア」

「はいはい」


 クロアは、フーゴに近寄ってフーゴが持っている剣に手を当てて目を瞑った。

 剣は、すぐに青白い光に包まれた。


「え!?なんか急に軽くなったぞ!」

 フーゴは驚きで目を丸くした。


「そういう剣だってことなんだよ」

「・・・どういう構造になってるんだ?」

「そればっかりは俺たちも、というか、誰もわからない」

「魔剣の類かな?」

「それか、聖剣かだね」

「うーむ・・・ちょっと、抜いて見ていいか?」

「いいよ~」


 トキオはそう言うと、剣の鞘を掴んでフーゴが剣を抜くのを手伝い、そのまま鞘を持った。


「ほお~・・・装飾も見事だが、剣身も実に美しいな」

 そう言いながら、フーゴは剣を左手で持って垂直に立て、右手でやいばに触ろうとした。


「ストップ!」

「だめー!」

 トキオとクロアは思わず大声を上げた。


 その声にびっくりしたフーゴは、思わず二人を見て動きを止めた。


「その刃に触っちゃダメだ!」

「指が切れるわよ!」


「え?・・・触るだけだぞ。そんなことで切れるかよ」

「その剣の切れ味はとんでもないんだって」

「切れ味のいいお前の刀やカミソリだって触っただけじゃ切れないだろうが」

「レベルが違うから。ちょっと待ってて」


 トキオは走って衣裳部屋に行くと、厚めのシャツを一着持って戻って来た。


「俺がこれを持ってるから、その剣の切っ先でなぞってみて。切るんじゃなくてなぞる感じでね」

 トキオはそう言うと、シャツの両肩の部分を掴み、ピンとなるように左右に広げた。


「おかしなことを言うなあ・・・」


 フーゴは、そう言いながらも、剣の切っ先をシャツの上端に当てて下へなぞろうとした。

 しかし、下へ動かすと同時にシャツは綺麗に切れて行き、それでいながら、手には何の感触も伝わらなかった。


「え!・・・まさか!」

 フーゴは驚いて、途中で手を止めた。


「ほらね?・・・じゃあ、おまけね。ちょっといい?」

 トキオは、鞘をクロアに渡すと、フーゴから剣を受け取り、部屋の中央に移動した。


 そして、左手に持ったシャツを空中に放り上げると、剣の柄を両手で持って、そのシャツ目がけて素早く上下左右に数回振るった。


 シャツは、細切れになって床にひらひらと舞い落ちた。


 それを見たフーゴは、驚愕の表情を浮かべて言葉をなくした。

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