店舗
ビール瓶を一気飲みしたルーサムはかなり酔っていた。
ルーサムは友達が障害を持っていたこと、その友達を救えなかったこと、その友達は村の火災事故で死んでしまったこと、その失った友達を今でも後悔し、廃墟になった友達の家でずっと謝罪を続けていること、すべてを洗いざらい打ち明けた。
おじいさんは泣いてくれた、誰にも打ち明けてない事実をこの人にだけは伝えられた。
おじいさんの方がずっとずっと辛いはずなのに、親身になって聞いてくれた。
「そういえばじいさん、その手紙誰からだ?」
ふやけたテーブルに置かれている封筒と手紙に気づいた私は気になって聞いてみた、その封筒の柄は明らかにこの国で作られているものでは無い、明るく、黄色い水玉模様の封筒だった。
「フッ...例のバカ息子からだよ、行方不明になったと思ったらこんな手紙をワザワザ届けてくれたよ。
50年間ずっとワシの事を探してたらしくてな、ノルマール騎士団団長、ずいぶんと出世しやがった...騎士を嫌いなはずの息子がその団長になっちまうとは思っても無かったわ。」
「そっかぁ、意外ですね...しかも団長、何が彼をそうさせたんでしょうね。」
「さぁな、その息子の率いる隊の騎士が俺の家に来て渡してくれたんだ...手紙には親子の関係をやり直したいって書かれていたよ。」
「そうですか...」
「まぁ来月辺りかな...気長に待つとするさ...」
じいさんは立ち上がり、外をキョロキョロ見回した。
「...もう深夜2時くらいだな、そろそろ帰ったほうがいい、」
ルーサムはきょとんとした、もうそんな時間か?結構長居していた事に気が付き、家に帰る事にした。
「あぁ、それとじいさん、ここに来てどれぐらい経つんだ?」
「まぁ...ざっと9年?12年くらいかな?」
じいさんは顔を傾けて答えた
「じゃあさ、村の火災事故の起きた時の事分かるよね?その時にあった酒場のBooze hellって店今どこにあるか分かる?」
「あぁ...あの店ならとっくに潰れて違う店になってるぞ、確か今は仕立て屋のMother silkって店になってるな。」
「そうか、ありがとう。
また明日来るからさ、そういえば聞いてなかったな、じいさん名前は?」
「ヴァレンス...ヴァレンスエドマンドだ。」
「そうか、俺はルーサムエグバードです、今日は本当にありがとうございました。」
ルーサムは一礼してその場を去った。
「...礼をしたいのはこっちだっての。」
そして後ろを振り返ったヴァレンスにガゴッ!という音が微かに響き渡り、何かの鈍が器強い衝撃を彼の頭を打ち付け。
~翌日 3月2日 ルーサム宅~
昨日は夜中遅くまで飲んでいたため頭痛がひどく、食欲があまり無いためルーサムはその辺をぶらぶら歩いていた。
じいさんに教えられた仕立て屋のMother silkの店主の話によると酒場の店主は今2キロ先に店を移動させたらしい、距離があるが傾斜があるため上から窓越しから見下ろす形でBooze hellという店らしき建物が薄目で見ることができた。
「兄ちゃんも物好きだねぇ、あそこの酒場あんまり良い噂聞かないよ?」
「え?」
「いやぁ、なんでもあそこの酒場さぁガラ悪い連中がよく出入りしてっからさ、村の皆は寄りつかないようにしてんだよ。
本当に困った店だよ!」
「そうなんですか...?
でもそんなお店ってふつう普通営業停止になってるはずですよね?まだ続けてるってなんか怪しくないですか?」
「さぁねぇ...こんな寂れた村の事なんて政府はどうでも良いんだろうよ!ったく、こっちの身にもなってくれってんだ。」
店主は呆れた顔で酒場を睨みつけていたが、あることを思い出したのだろう。
口を大きく開けて笑顔で話した。
「そういえば!あの酒場が移動する前の時ってあんなクソみたいな所じゃ無かったよ!」
「え?前までは良かったんですか?」
「うん、店の客も仕事帰りの中年とか遊び帰りの若者とかで至って普通の連中ばっかだったよ。
私もあの酒場の常連だったな!
かなり有名な店だったからかなり儲かってたはずなのに店を急に閉めて別の場所にワザワザ移動させたんだよねぇ。」
すると店のドアを勢い良く開け、カウンターに猛スピードでお洒落にめかした男が走って来た。
「オバチャン!俺の頼んだ一張羅、もう洗い終わった?って色変わってんじゃん!彼女のプレゼントに何してくれてんだクソババア!」
横から急いで割って入って来たお客さんはカウンターの注文番号の貼られた服の色合いを見て非常に驚いていた、別の客の服のも一緒に洗ったのだろう、色が真ッ茶色になっており、とても女性用品の色合いには見えなかった。
そしてとうとう店主と客が口喧嘩をしだしたため、酒場の話しはここで途切れてしまった。
「ここか...」
店主の言われた通りに5ブロック先の店、名前は紛れもなくBooze hell。
店は木造建築でできており立派な2階建てでかなり頑丈そうだ。
私は店の入口の段差を登り、杉材で出来た縦長のウエスタンドアを押し開けた。
店の中はお祭り騒ぎ、むさ苦しい連中がギャハギャハと笑っていた。
入口のすぐ目の前にカウンターがあり、白髪の初老がコップをごしごし拭いていた、カウンターの左隣はトイレ、店の壁側は2階へ続く一階の客席を囲むようにカーブした階段、そして円形のテーブル席が3つある。
私は迷わず初老のいるカウンターへと歩んで行った。
私は歩きながら店内を見渡した、客は個性豊だが1つだけ一致しているのはガラが悪いということだ。
1つ目のテーブル席はスキンヘッドでダボッとした服と金色のネックレスをした男と龍のトライバルタトゥーの入った金髪の男、そして青い柄物の頭巾を深く被り、腰にナイフを隠した男性の3人グループで仲良く座っていた。
2つ目のテーブルにはメガネをデコに掛けた茶髪で眉にピアスを2つつけた若者と、その取り巻きの男が3人、そしてセクシーな美女が色白と色黒で2人、合計6人で座っている。
3つ目のテーブル席は背の高い狼姿の獣人と、堅苦しい服装をした小指と薬指の無い右手をした大柄の老人がやたらとピリピリしていた。
ざっとこんなもんだろう、あとは普通のウェイトレスが男女二人メニューを運んでいる程度だった、まぁざっとこんなもんだろう。
私はカウンターの席は5つあり、右から2番目の席に座った。
「いらっしゃい...ご注文は?」
二日酔いのルーサムは正直、中にいるだけでもぶっ倒れそうですがここは思いきり、
「スコッチを。」
「かしこまりました...」
初老のマスターはスコッチをコップに注ぎ、シャカシャカ降り始めた。
ガタッ!ガタタッ!
私の両隣に新しい客が座り始めた、右は髪を束ねた育ちの良い青年と左は赤色のジャケットを羽織ったサイドカットの男性、どちらも怪しい雰囲気だった。
「...お客さん、この店始めてかい?」
辺りを見ていた私に対して突然声掛けたマスターの言葉に少し動揺してしまった。
「あぁ、あんまりこの辺通らないもんでさ、近くに来たついでに寄ってみたんだよ。」
「そうですかぁ、遠路はるばるご足労ありがとうございます。」
マスターは笑顔でお辞儀してくれた。
「マスター、実はな、あんたに少し聞きたい事があるんだよ。」
その言葉を口にしたとたん、周りの空気がピリッと変わった、だが続けてルーサムはある書類をカウンターに置き始めた。
「フィンタム って少年知っていますか? 年前の火災事故の被害者だ。
この少年はよくあんたの店に出入りしていたそうなんだ、事件当じ...」
ガシャッ マスターは手にしていた私のスコッチをテンパって床に落としてしまった。
「いっ..いやぁ、知らないですねぇ。」
「あのな?こっちは入念に調べてここへ足を運んでんだ。
あんたが知らないはずは無いんだよ。」
「おい、小僧。」
ガシャン!! 後ろから凄い勢いで酒瓶が飛んできた。
とっさに避けたものの、当たれば致命傷になりかねない。
「ここがどこだか分かってて偉そうな口聞いてンのか?あァン?」




