表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/61

君に決めた

 一人目は独学で魔術を学んだというの娘。

 俺より年上ではあるが、見るからに金を持ってなさそうな男だと思ったのか、自分を売り込もうという気概がない……やりやすいから別にいいけど。


「名前と特技を教えて下さい」

「リザ。一応、剣術かじっているけど戦闘とか期待しないでね。その辺の冒険者より弱いと思うから」

「……ここに来た経緯を訊いても?」

「奴隷になった理由? ……借金返せなくなったからよ。あと、アッチの方は期待しないで。昔付き合ってた彼氏にヘタクソって言われるぐらいだから」

(玉の輿狙いだなこいつ……やる気もあまり感じられないし、仲良くやっていける自信もない……没)


 こちらが知りたいことを積極的に話してくれたのはありがたいが、流石にこれだけ露骨な人間を弟子にしたいとは思わない。


 まぁウチのキャスト達に比べたら倉庫の埃みたいなものだし、俺の心にはさざ波一つ立たない……という訳でこの娘は却下。


 二人目は二八歳のお姉さんで冒険者をしていたという。

 前の娘同様、奴隷商の商品なだけあって一応、見栄えが良くなるよう手入れはされているが……うん、やっぱりまだまだだ。


 食事で栄養管理をするとか、そういう発想がない世界なのかも知れない。

 栄養バランスの取れた食事をするだけでも随分違うんだが……いや、今はそんなこと考えてる場合じゃない。


「名前と特技、それとアピールできる点があればどうぞ」

「スウィーリアです。以前は夫と一緒に冒険者として活躍してたんだけどね、その夫が依頼先で亡くなったの。で、私に内緒で借金してたみたいでその回収の為に私は売られたのよ。冒険者時代は弓使い(アーチャー)をしていたから、護衛には不向きでも狩りや薬草採取には少し自信があるわ」


 ふむ……スウィーリアさんから見れば年下だから侮られると思ったんだが意外としっかりした受け答えだ。


 冒険者としての活動経験が長いのか、礼儀もそこそこ行き届いている……もう少し質問してみるか。


「冒険者生活が長かった、ということは自炊はできますか? できれば一般家庭レベルが望ましいです」

「料理の腕前? うーん、普通かしら。私も夫も食べ物にはそこまで拘ってなかったから……申し訳ないけどあまり凝った料理は出来ないからそこは期待しないでね。……あと、こんなおばさんで良ければお相手、してあげるわ。若くはないけど、夫を満足させてあげた技、披露してあげるわ」

「そうですか」


 熱をを帯びた視線がねっとりと纏わり付くが、仕事先で慣れてるのでスルー。


(整体魔術を使えば間違いなく美女になる……のは異世界の女に共通していることだよな。弓使いってのはいいし予算内で収まる価格……ひとまず保留)


 未だに怖いんだよね、女性との接触って……いつ裏切られるかもっていう意識がトラウマレベルで残っているのって本当厄介だ。


 そして三人目……実を言えば本命だったりする。

 いや、別に火傷の跡に欲情したとかそういう変な趣味はないよ?


「シャルロットです」


 入室してくると、自己紹介と共にぺこりとお辞儀をする。

 パッと見た感じ、冷たい印象はあったが評価を修正する必要があるな。


「シャルロットさんですね。略歴にはホーゼ村の村長の娘とありますが、差し支えなければここに来た経緯を教えて下さい。勿論、無理に話す必要はありません」

「はい。村の財政難で誰かを売らなければならなくなりました。私の村では老若男女問わず、働きに出ます。特に村の大きな収入源となっている薬草の栽培は女の仕事です。そんな状況下で村の働き手を失うよりは歳も若く、村一番の女と持てはやされていた私が身を売るのが最善だと思い、自分から話を持ちかけました」


 もうね、この世界そういう事情本当多いよね。

 面倒見ているキャストも元を辿れば奴隷商から買い取った娘だったり口減らしの為に売られた娘だったりする……もう慣れたけど。


「何か特技はありますか? 趣味の範囲でも構いません」

「特技……とは言えませんが、村長の娘ということで字の読み書きと計算はできます。それと、父から少しだけ魔術を教わりましたが、私が使えるのはせいぜい生活魔術です。他に、これといった特技はありません」


 生活魔術というのは文字通り、生活レベルの効果しか発揮しない無属性魔術だ。


 代表的なのは火種を起こしたり、短時間だけ周囲を照らす灯りだったり、コップ一杯分の水を出したり。


 因みに俺は異世界人だからか、それともチートの副産物か、この生活魔術が全く使えない……タツヤは普通に使えるのに。


「なるほど。では最後に、これだけは出来ない、やりたくない仕事はありますか?」

「やりたくない……? 奴隷ですから主人がやれと言われたことはやるのは当然です。ただ、見ての通り私は女で力も強い方ではありません。なので、力仕事は遠慮したいと思います」


 そりゃそうだ、そういうことさせるなら初めから男の奴隷雇えばいい。


(受け答えはしっかりしている。ちょっと愛想がないけどそこは要改善)


 マッサージ師の仕事の一つにお喋りがある。

 世間話でも何でもいいからとにかく話して緊張を解くのが狙いだ。


 コミュニケーション能力に難ありな俺には敷居が高いが、これも仕事だと割り切って頑張ってる……その分、プライベートじゃ無口だけど。


 候補は二人に絞られた。

 年増のお姉さん(スウィーリア)か、女子高生娘(シャルロット)か……。

 販売価格は当然、スウィーリアが上だ。


 資料にある技能一覧には弓術の他に魔力強化があるが……これは単純に魔力を纏わせて身体を強化する、強化魔術の下位互換に当たる技術だ。


 訓練すれば魔力撃ぐらいはいけるかも知れないが、そもそも冒険に出る予定もないし護衛を付けなきゃいけないような危険地帯にも行く予定はないのでプラスにはならない。


 シャルロットは外見があれなせいで格安で提供してくれる。

 外見については全く問題ないというか、娼館にやってきたキャストの中には火傷の跡や痣のある娘もいた。


 勿論それも整体魔術で完治した……案外便利な魔術だが、冒険者向きではない。

 薬草の栽培をしていた、ということはその手の知識もあるかも知れない。


 無いならないで構わないが、ホーゼ村まで行って交渉を頼むという手もある……何も危険がなければ。


「先生、どの娘にするか決めました?」

「ん? ……あぁ、シャルロットにしようかなと」

「シャルロットちゃんですか? てっきり先生は、年上の方に奉仕させるのがお好きだと思っていたんですが……」

「弟子を取るだけだからね? 新しいこと覚えるなら若い方がいいだろ?」


 それに色んなキャストを見て、接してきた経験からか、漠然とスウィーリアは地雷な臭いがする。


 夫の借金に気付かないとか、そういうことは地球でもあったから不思議じゃないけど……そう、例えるならハニートラップだ。


 甘い罠を仕掛けて、快楽を覚えさせて、手綱を握っているつもりがいつの間にか握られて、気付けば彼女は解放奴隷となり、財産を根刮ぎ奪っていなくなり、俺は汚い河に浮かぶ……なんて末路も考えられる。


 ……後半はともかく前半はあり得そうだ。

 エッチな事オッケーとか公言していた辺り、そういう魂胆が見え隠れしている。


 年上、ダメ……絶対。


(そもそも俺に奴隷を……というか人を使う能力があるかどうか疑問だが……)


 一応、奴隷には奴隷紋を刻む。

 犯罪奴隷のように全身に刻めば完全支配も可能だが、彼女はそうじゃないから身体の一部に刻む程度に留められる……こちらが望まなければ。


 ひとまず購入相手は決まったので、シャルロットを呼び、購入する旨を伝える。


「あの……私でよろしいのですか? 傷物ですし、他にもいい娘がいると思いますが」

「計算が出来るのと生活魔術が使えるのが決め手かな。俺は生活魔術使えないから火種が用意できるだけでもありがたい。前二人も能力的には申し分なかったけど、一人は明らかに玉の輿狙いだったからやる気がないし、もう一人は……なんか危険な臭いがした。それにシャルロットさんなら安心して仕事を割り振れると思う」

「そうですか。私のことをそこまで評価して頂き、ありがとう御座います」


 納得しているのか、していないのか……表情からは読み取れないが、表面上は納得したんだろう。


「で、改めて訊くけどキミを買う。いいね?」

「はい。宜しくお願いします」

「こちらこそ……店長、決まりました」


 面接も無事に終わり、外で待機していた店長を呼んで商談に移る。

 奴隷登録と身体に刻む奴隷紋……締めて二○ゴールド五シルバの出費となった。

 それが終わると奴隷に関する注意事項を教えられた。


 奴隷は個人の所有物ではあるが同時に国の財産でもあるので個人の判断で殺傷処分をしてはいけない。


 罰として叩いたり鞭打ちするのは許容範囲だが犯罪奴隷と違い、普通の奴隷は束縛も緩いので限度を超えた場合、奴隷が申告する場合があるので注意。


 衣食住の面倒は主人の義務、これは宿暮らしでも構わない。

 奴隷紋である程度の強制力は働いているが本当に嫌な命令は聞かない、言い聞かせたければ追加料金を払って下さい、夜の奉仕は基本業務に含まれてる……とのこと。


 但し、束縛が強くなると感情が死ぬ場合があるのでそこは自己責任で。

 税金の支払いは年末、傷物とは言え高級奴隷に分類されてるシャルロットは年間一ゴールドの人頭税を支払わなければならない。


 毎年払うのが面倒臭いと感じるなら纏めて払ってもいいがその場合、何かしらの事情で奴隷を手放すことになったり事故死しても返金はないとのこと。


「人頭税は役所で払えばいいのか?」

「はい。ですが、購入した店に限りますが店の方でも支払いを受け付けておりますが、如何なさいます?」

「そうだな……まずは三年分で」


 金貨三枚を取り出して奴隷商に支払う。

 金に無頓着、とまではいかないが経営者のように執着するほど神経質でもない。


 俺みたいな平民が即金で払うのが意外だったのか、店長は一瞬だけ目を丸くする。


「確かに受け取りました。他に何か質問は御座いますか?」

「大丈夫です」

「ありがとう御座います。あぁそれと、今後私の店をご利用する際はこれを提示して下さい。基本的に再発行は受け付けておりませんので無くさないように」

「分かった」


 基本的……ということは貴族のような例外は別なんだろう。

 店長から渡された六角形のメダルを受け取り、シャルロットと店を出る。


 ──俺は、ついに奴隷を買ったのだ。

プロット段階では子供にしようと思ったけど色々あってやめた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ