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第7話:魔物の進行

 休日。

 

 シャルルは珍しく用事でいなかった。

 

「マリー、シャルル知らない? みんなでカフェでも行こうと思ったんだけど」

 

「知らないわ。なにかすることでもあるんでしょう」

 

「わ、私もそう思います。シャルルちゃんは暇人なので……」

 

「そうね」

 

 マロンの『暇人』という単語がしっくりきた。気になるがその欲求に耐える。

 

「じゃあさじゃあさ! 三人で行かない? 『笛の海炎』ってところなんだけど」

 

「最近授業が難しくなってるので羽根を伸ばすのにちょうどいいですね」

 

「わかったわ。ルイはどうするの? あの子誘ったら絶対来るわよ」

 

「んー、秘密にしとこ! 女子会ってことで!レッツゴー!」

 

 わたしたちはルイを忘れて新しくできたカフェにゴーした。

 

「はっくしゅん!」

 

 ルイがくしゃみをしたがそのことを知るものは本人以外知らないだろう。


  ♔

  

 ――フローズン王国王座――

 

「――巫女殿、今日は急に呼び出してすまん」

 

「いやいや、全然大丈夫。あなたがそれほど焦っているところを見るのは数年ぶりだし、今も笑いを堪えるので必死だよ〜」

 

 海を思わせる青色、毛先はエメラルドグリーンのロングヘア、黄色の瞳を宿し、巫女服を着ている少女がわしをからかうように話す。その顔は笑っており、袖で顔半分を隠していてもわかった。まさに蒼と表現していい。

 

 巫女は、生きているのだ。

 

「あのときは仕方あるまい。対策が甘かったのだ、許してくれ……」

 

「その件はもう許してるよ。さて、なにがあったの?」

 

 巫女は話題を変えた。『なにがあったのか』、わしが焦るということはそれほど大きな出来事なのだ。

 

「そうだな。最近魔物の活動が活発でな、我々人類に危害が及んでおる。なんとかしてくれんか?」

 

「それ相応の対価を貰うよ?」

 

「承知のうえだ。前回と同様の対価を払おう」

 

「……わかった。人間界と魔界の境目の壁、結界を強固なものにしておくね。魔物はいずれ息絶えるよ」


 巫女は渋々承諾した。まあ仕方あるまい。

 

「わかった、すぐ馬車を用意する。門の前で待っておいてくれ。――にしても巫女殿は変わらんな」

 

「それ褒めてる?」

 

 ――本当にないのか。だがしっかりと刻まれておる、いつか思い出すだろうなぁ

 

 国王はでそんなことを考えながら昔を思い出した。だが、すぐ巫女との話に切り替えた。

 

「それよりお主の国『アクア・アイランド』はどんな調子だ? ちゃんとしておるか?」

 

「うん……今も昔も変わらず、そのまま」

 

「それはよかった」

 

 世間話の後、巫女は国王の指示通り城の門の前に行った。


  ◇

 

 私が待っていると、馬車が到着して運んでくれる者らしき人が近づいてくる。

 

「巫女様でお間違えないですね。なるべく目立たぬよう運びますのでご心配なく」

 

「うん、よろしくね」

 

 私を乗せた馬車は結界の方向に進み始めた。

 

 街を過ぎた辺りから雰囲気が重くなっていくような気がした。色々な人が馬車を見たが、すぐ興味をなくした。

 

 そして、結界から少し離れたところで馬車は止まる。

 

「私が運べるのはここまでになります。あとはご自身で歩いて進みください」

 

「運んでくれてありがとう。必ず目と耳を塞いでおくこと。破ったら怒るからね()

 

「はい。私はここで待っていますから、終了したらここに戻ってきてください」

 

「はーい。じゃあまた」

 

 私は結界の方向に歩き始める。

 

 運んでくれた人は指示通り目と耳を塞ぎ、視覚も聴覚もなくした。



  

 数分歩き、結界の目の前に到着した。

 

 私は笛を取り出し、吹き始める。黄金の笛に、水色の竜がまとわりつくように彫られていた。

 

 音色は美しく、どこか(はかな)く感じるものだった。

 

 数時間後に音色は()み、巫女は馬車の方向に歩き始める。結界はさらに強化され、蒼いような紅いような不思議な色をしていた。

 

「もう外して大丈夫……やっぱり体力使うね結界展開するのって……」

 

「お疲れ様でした。巫女様はお休みになってください。戻りましょう」

 

「そうしよ……」

 

――あぁもう無理……数時間ぶっ通しでするとか地獄でしょ……絶対いいの請求してやる

 

 私は馬車に乗って仰向けになり、すぐ眠りについた。

 

「そろそろ暗くなりますね。出発します」


  ○ 


「ケーキとかプディングとか美味しかったぁ……めっちゃ甘い匂いするし建物が木造だからおしゃれ!」

 

「そうね、雰囲気も自然って感じだったけど……特にあのクリーム……口でとろけたわ。いちごも美味しかったし、全体が宝石みたいだった。レシピでも聞いてくればよかったわ」

 

「流石にそれは秘密ですよ……知ってしまったら誰でも作れるじゃないですか」

 

「それもそうね」

 

「もう帰ろっか……ん?なんか雰囲気変わった?」

 

 ――リリアがそういうこというの数年ぶり……なにか変わった?

 

 ――なんだろう……すごく守られてる気がする……

 

 3人とも結界が変わったことには気づかなかったが変化したことはわかった。

 

 その時、後ろから馬車が来た。

 

「こらこら君たち、危ないから退いて」

 

「す、すみません……」

 

「馬車なんて珍しいわね……なにかあったの?」

 

「――これはマリー様、失礼致しました……実は急用でして」

 

「そう……あとで聞かせてね」

 

 馬車は街を通り過ぎ、城に向かっていった。運転している人以外にもう一つ気配がしたが、きっと気のせい。

 

「わたしたちも寮に戻りましょう」

 

「うん! そうしよそうしよ!」

 

 わたしたちは学園の方向に歩き出した。その頃にはシャルルが用事でいないことなど忘れていただろう。

「続きが気になる……!」


「もっとないの!?」


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