第32話:海旅行 五日目
海旅行五日目、みんな昨日で力を使い果たしたのかぐうたらしていた。もちろん私も含めている。
「マリー……やる気起きない……」
「わたしも同じ状況よ……どうしたものかしら……」
ソファでくつろいでいる二人。何かをしようとしているらしいが信用性がない。多分動かないだろう。
「えへへ……冷たい床が気持ちぃ……」
サインはなぜか床に張り付いていた。発言からして暑いから冷たさを感じられる床がいいのだろう。
「ふぅ……お水が美味しいです」
マロンは水をコップに注いでそれを飲んでいた。美味しそうに飲むから私も飲みたくなってくる。
「……暑い……」
ルイはうちわで風を作り出して涼しんでいた。羨ましい。
みんなそれぞれのやり方でくつろいでいた。さて、本命の私はというと……
「涼し〜」
「――なんでそんなところにいるのよ!」
「暑いじゃん? てかこれくらい普通でしょ」
「普通なわけないやん! どうやったらそんな発想になるん!?」
よくわからないので首を傾げた。
――何言ってるんだろ、こんなの誰でも想像できるでしょ。逆になんでみんなしないの?
「シャルル、自分を水魔法で包み込むやつなんていないんだよ。しかも密閉してるし、呼吸どうしてるかめっちゃ気になる」
「まあまあそこは聞かないお約束。てかなにする?」
「切り替え早! いいけどさ」
今から何をするかという話題に一瞬で変わった。この状況に誰一人として違和感をもたないというのはどういうことだろう。私だけ気にしてる? ならいっか。
「一昨日やることやったやんな……逆になにしたらいいんやろ」
「ん〜……夏といえばなんだろ……」
「夏といえば? 食べ物ならスイカ……スイカ!」
「「「「「スイカ?」」」」」
スイカ、という言葉に私たちは疑問に思った。確かに夏といえばスイカと思う人もいるかもしれない。だけどスイカは食べるもの、どうやって遊びに使うの?
「ほんとーに昔なんだけど、スイカ割りっていうのをしたことがあるんだよね。マリーとルイ覚えてる?」
「ん……あ〜あれ? みんな外して笑ったわよ」
「リリアは場所完璧なのに横方向に振ったから絶対当たらなかったよな」
「むぅ! 今は違うもん!」
リリアが頬を膨らませて否定する。なんかハムスターみたいだなと思ってしまう自分がいた。
「てことで今からスイカ割りね!」
私たちに拒否権というものはないらしい。強制的に決められた。
「右右!」
「そこ左!」
「えぇ……」
みんなからの指示に困ってしまう。目隠しをされてるからどこかわかんない。あ、もちろん水着を着ている。
「そこ上だ!」
「上!?」
「いや下やで!」
「下!?」
わけのわらない指示に戸惑ってしまうがとりあえず従うことにした。どういう動きをしているかわからない……なんか変なことなってないかな?
「そこ!」
「わかった! えい!」
バリッと割れる音がした。なので成功ということだ。やったね!
「じゃあシャルル! 目隠し外して!」
「あ、うん!」
目隠しを外すととんでもない光景が見えた。ルイやサインが上とか下とか言っている意味がわかったかもしれない。てかわかった。ここは……
「なんで海の上にスイカを浮かせてるの!」
そういうこと。つまり私をここまで運ぶためにあの指示をしていた。途中から地面の感覚がなかったのもこのせい。
「はぁ……もういっか。じゃあ次誰が――」
その時だった。海の向こう側からこっちに迫ってくる黒い影が見えた。海の生き物かな?
「えっと……いや、一旦戻ろ」
私はマリーたちと合流することにした。大型だとしても一人で対処できるけど大人数のほうが効率いいからね。同時攻撃とかしやすいし。
「マリー、戦闘準備」
「? なんでよ」
「なんとなく」
「……わかったわ。全員戦闘態勢をとりなさい。きっとなにか来るのでしょう?」
「うん」
六人で集結してその影が現れるのを待つことにした。心当たりはあるんだけど……なんで来るのかわかんないんだよね。
数分後、その影は来た。
姿を表すと、正体がわかる。クラーケンだ。深海の底からここまで来たのだろう。心当たりが的中した。
「クラーケン!? なんでこんなところに?」
「わかんない」
「……なんか、敵対してないような気がします」
「「――え?」」
「だってすぐ攻撃してきませんでしたし……なんか待ってるみたいな目をしてます」
マロンの発言でクラーケンをよく見てみると、そうかもしれないところがぽつぽつとあった。観察眼すご……
「クラーケンさん、あなたは何をしに来たんですか?」
「……」
「用がないなら戻ってほしいです。みんなびっくりしてます」
「……れた」
「?」
「みこに、よばれた。だからきた。でもみこいない」
「喋った!?」
マリーはすごくびっくりしているみたいだった。それもそのはず、クラーケンが喋るなんて文献にすら書かれていない。まあ私は知ってたけどね!
「つ、つまり……このクラーケンは海の巫女に呼ばれてここまで来たってこと?」
「そうなりますね……」
「でも巫女がいないから困ってる……」
「みこ、いない。かえる」
「え?」
クラーケンはそのまま海の底に帰っていった。人騒がせだね。
「続きが気になる……!」
「もっとないの!?」
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