第10話:戦争の準備と巫女の日常
――あの出来事から数日――
「今回の件、戦争に繋がるやもしれん」
フローズン王の言葉に、議会にいた全員の耳に届いた。50人ほどの人類にとって重要人物が集まった大きな会議だった。
「そ、それは本当ですか!?戦争の時期が早まるのは避けたいのですが……」
ローズガーデン王が立ち上がる。
黒髪にしっかりとセットした短い髭、背が高く、王らしい服装をしている。
「魔王はそこを突いてきたのだろう。戦力不足のうちに壊滅させたいとわしは予測している」
「静かにしてください。私からは一つ、海を汚さないで。これだけ守ってくれればなにしてもいい」
「巫女殿、そんな言い方……!!」
「ローズガーデン王よ、仕方あるまい。巫女殿にとってこの戦争はどうでもいいのだ、結界を管理してくれてるだけありがたいと思うのだ」
――ありがたいねぇ……条約を忘れてないなんてさぁ……
「……取り乱した、申し訳ない」
巫女は腕組みを解かず、そのまま目をつぶる。中立の立場なのでこの会議は意味をなさないようだ。
「……巫女殿は協力をしてくれない、そんなこと昔からわかっている。だからこそ、我々人類が団結して対抗しないといけないのだ」
「その通りです。私たちダークネス家も協力いたしましょう、国家だけでは限界がありますからね」
黒いドレスを纏い、長く飛ばしたストレートヘア。瞳はマロンと同じ紫色をしている。
「助かる、戦力を確保するためそれぞれ技術者を派遣してくれ。」
議会にいた巫女以外の全員が頷いた。その空気は先程までの冷たいものとは違い、一体感があった。
「では私はここで。久しぶりに国に戻りたいので」
――久しぶりに帰れる……!くぅぅ!待ち遠しい!
席を立って出口の道を進む。歩くことで空気の抵抗が起き、巫女服がふわふわと浮いていた。
――アクア・アイランド――
巫女が数時間をかけて国に戻ると、民たちが気づき一目散に向かってくる。
「シャルル様ー!!!会いたかったよぉ!!」
子供が巫女に向かって突進してくる。その衝撃を和らげるために足に力を込めて受け取る
「おっと……前も言ったけど突進はやめて……」
「やだ!!久しぶりなんだもん!なら毎日帰ってきて!」
「学園があるから月二しか帰って来れないんだって……」
「ほーら、我慢して。シャルル様、お帰りなさいませ」
「ユラ、ただいま」
ユラと呼ばれた少女は子供を抱き上げ、嬉しそうに笑顔を作った。その笑顔に嘘偽りなく、純粋な笑みだった。
青い髪にウルフカットされた髪が特徴的で、瞳は水色をしている。
「ユラも変わってないね、少し髪長くなった?」
「わ、わかりますか!?いつも首の真ん中くらいまでなんですけど最近は肩まで伸ばしてるるんです…!」
「やっぱり?やっぱ私天才――ウゲェ!!」
背中にチョップを食らった。そして――
「シャルル様、お食事の時間です」
「ちょっと待っ――アイ!服引っ張らないでよぉー!!伸びるじゃぁん!!」
「食事が先です」
ジタバタしたが効果はなし、ユラは連れ去られるシャルルの目の前にいて、「ユラ助けてー!!」と叫ばれたが軽く流した。
アイと呼ばれた少女は巻き髪の腰まで伸びたロングヘアが特徴的。髪色は水色、瞳は青色をしておりユラと逆だった。
食事処に着き、座った。
いつの間にか子供は帰ったようで、部屋にはシャルルとユラ、アイのみだった。
「最近の学園生活はどうですか?」
「いい感じだよ!友達もできてるし、楽しく過ごせてる」
「それはよかった……」
「ユラとアイはどう?ここ守れてる?」
「もちろんです!」
「じゃなきゃここにいません」
その会話の途中で食事が運ばれてきた。張り切ったのか豪華でとても美味しそうだった。
海鮮が中心で、野菜の上にロブスターが乗っている。刺身も多くあり、シャルルの大好きなものばかりだった。
「うわぁ!!美味しそう!!んー独特のいい匂い!」
「お刺身もありますよ」
「やったぁ!!」
シャルルは大はしゃぎで並べられたご飯を食べていく。時々ご飯が頬につくことがあった。その姿はまるで、「たった一人の元気な女の子」のようだった。
「アイ、今日だけは好きにさせよ」
「わかってる」
二人はシャルルの食事を見守りながら、食べ進める。この主の姿を守るのは自分たちだと、決心が固まったようだ。
数十分でご飯は平らげられ、三人とも満腹だった。
「ふぅ……お腹いっぱい……」
「私もです……こんな量久しぶりで、嬉しかったです」
「私も」
アイは素っ気ないが、その言葉とは裏腹に顔は満足そうだった。
食事処をあとにして、寝室に繋がる廊下を歩く。
「ねぇ、今日は一緒に寝ない?ユラとアイの温もり感じたくて……」
「っ……もちろん、ですよ…!」
「……シャルル様がそうおっしゃるなら」
「アイも嬉しいくせにー」
「うるさい」
「ほら!行くよ」
二人の腕を引っ張って自身の寝室に向かう。
部屋を開けると最初に目に入ったのはキングサイズのベッドだった。いかにもお姫様みたいな部屋だが、全体的に青が多く落ち着きがあった。
三人はベッドで寝転がった。シャルルを中心に、左にユラ、右にアイという形になった。
「ユラ……アイ……おやすみ……」
「はい、おやすみなさい」
「今日はごゆっくり」
数分経ったころにはシャルルの寝息が聞こえた。ユラとアイはその無防備な顔を見ながら微笑んだ。そして就寝する。
――シャルルは、「海の巫女」だったのだ
――時期を遅らせるわ。これは海の独断だから、変更はできない。シャルルちゃん、その日々を噛み締めて……いつかその日が来るから。
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