57話 『軍師の背中』
命は脆すぎる。
いつだって簡単に、この世界から零れ落ちて無くなってしまう。
だから享楽者はーー
軽々と生命を使い捨てる。
壊れやすいものなど、ただの消耗品だと
その事実を、嗤うように……。
***
木の葉は色を失い、乾いた風に砕けていく。
白い吐息が、宙へ溶けて消えていく頃。
枯れた季節を切り裂くように、その通達は届いた。
ーー逆奪者に、裏切り者がいる。
僅か一行の伝令。
だが、それだけで組織は一斉に動き出した。
疑念を排し、真実を暴き、
内部に巣食う“黒”を炙り出すために。
だがーー
その正体が明かされたのは、
すべてが焼け落ち、地獄が沈黙した“後”だった。
ーー上層部の静止を振り切り、
一人の王子は現場へ駆けた。
破壊の残響がまだ大地に残るその場所で、
ウォーレンスは遂にーー再会した。
すべてを失った少女と。
「……ミネェ!!!!!」
喉が裂けるほどの叫びだった。
爆炎の残り香がまだ漂う。
焦げた鉄と血の匂いが混じり、地面は黒く焼け爛れている。
足を踏み出すたび、その"現実"が嫌というほど絡みついた。
だがーー
彼女は、生きていた。
失われた手足。
血で染った身体。
それでもなお、震える体でこちらを向き……
ゆっくりと、いつものように笑った。
「……ウォーくん。」
掠れた声で……。
「…………ッ!!!!」
両手で優しく抱き寄せる。
初めて担いだ彼女はーー死ぬほど軽く感じた。
冷たい絶望は、変わっていない。
消えた命が戻るわけでもない。
それでも。
それでもーー
ミネが、生きていた。
ただその事実だけで、ウォーレンスは膝が折れそうになるほどの……“感謝”に包まれた。
その後、ウォーレンスは
ーー“二人の少女”を抱えて帰還した。
瀕死の重傷を負ったミネ。
そして、瓦礫の影で気絶していた妹、セラ。
腕に伝わる微かな体温だけが、
二人がまだ“生きている”と告げていた。
振動ひとつ与えまいと慎重に。
しかし、一秒でも早く戻ろうと急ぐ。
その矛盾を抱えたまま、
ウォーレンスはただ、無言で荒野を駆けた。
そんな彼の胸元から、弱い声がこぼれる。
「……セラちゃん……無事だった……かな……?」
痛みに震えながらも、
真っ先に妹の名を口にするその姿はーー
酷く、胸を締めつけた。
「セラは無事だ。
……いいから喋るな。」
ウォーレンスは短く言い切り、
腕に重みを支え直した。
ミネは薄く目を伏せて、小さく微笑む。
「……そっか……。
よかった……。」
弱々しい声。その一言だけが、
焦燥にせり上がる心の奥深くに刺さった。
彼女の“安心”だけが、
何よりも重く、何よりも痛かった。
***
ーー旧メイン拠点 / 治療室
低く一定に続く電子音が、
無機質な白い空間に脈のように響いていた。
消毒薬の匂い。
ガラス越しに差し込む淡い照明。
生命維持装置のわずかな振動。
そのどれもが、現実を容赦なく突きつける。
「……助かるかは……これから次第か。」
ストレッチャーに乗せられ、
治療班の手で奥へと運ばれていく二人を見送りながら、ウォーレンスは低く呟いた。
彼女を戦わせたくなかった。
笑っていてほしかった。
ーーそんな願いが、
まるで嘲笑うような形で、現実へと変わった。
拳を強く握った瞬間、骨が軋むような痛みが走る。
それでも、握り直す。
震えは止まらない。
怒りなのか、悔しさなのか、恐怖なのか。
判別できないほど混ざり合って、胸を焼いていた。
「……背負うと……決めたのに……。」
誰に向けたのかも分からない言葉が、
喉奥から漏れ落ちた。
治療室の扉が閉まる音だけが、
残酷なほど静かに響いた。
その余韻は、冷気のように全身へ染み込み、
ウォーレンスはただ、立ち尽くすしかなかった。
ーーどれほど時間が経ったのか分からない。
一瞬にも、永遠にも感じられた。
落ち着こうと意識を集中させるほど、脳は逆に騒ぎ立てる。
焦りと怒りと恐怖が奔流のように渦巻き、情報の整頓すら出来ない。
(……考えるな。落ち着け……)
そう念じても、
胸の奥で固まった感情は、言うことを聞かなかった。
思考がようやく“音”として外へ戻ったのはーー
名前を呼ばれた、その瞬間だ。
「ウォーレンス!!
……おい! 無視をするでない!!」
鋭く響いた叱責の声が、
混濁した意識を、強引に現実へ引き戻した。
反射的に視線を向ける。
救難に向かう俺を静止した
上層部の一人『ルド』
彼は焦げた外套を翻し、烈火のような目で立ちはだかっていた。
その姿は、いつもの老将ではない。
怒気と、心配と、戦場の重圧を全て背負った“軍師”そのもの。
「何を考えおるかは知らぬが……」
ルドは静かに言い、こちらへ歩み寄りながら手を上げた。
「……。」
叱責が来ると思った。
――いや、殴られると覚悟していた。
命令を無視し、戦場へ勝手に飛び込んだのだ。
その程度の処罰は当然だと、ウォーレンスは目を閉じた。
だが――。
ポンッ。
頭に落ちたのは、
衝撃ではなく、驚くほど“軽い”音だった。
ルドの掌が、そっと頭に置かれていた。
見上げると、小さな軍師はわずかに背伸びをしていた。
身長の足りなさを補うように、腕を懸命に伸ばして。
怒号も、叱責もない。
ただ、少しだけ不器用な仕草と
「……お前の判断は正しかった。」
低く、確信のこもった声で
「結果的に……二人の命を救えたのだからな。」
凍りついていた心を溶かす言葉をくれた。
胸の奥に積もっていた濁りが、流れ落ちていく。
ウォーレンスは、深く息を吐いた。
「……ルド……」
世界に色が戻っていく。
世界に、少しずつ“色”が戻っていく。
白んでいた視界が輪郭を取り戻し、
ぼやけていた現実が、静かに形を結ぶ。
その中央にーー
双子の姿が立っていた。
声も物音も耳へ届いていなかったのだろう。
ルシェが隣にいたことすら、気づけなかった。
ウォーレンスの驚きを察したのか、彼女はすぐに柔らかな微笑みを向け、一礼した。
その仕草を見届けて、ウォーレンスは胸の奥がわずかに痛んだ。
(……気づかなかった。
それほどまでに、俺は……。)
自分がどれほど“壊れかけていた”のか、
今になって理解する。
ウォーレンスは戻る視界と共に、傷心していた事実を自覚した。
ルドはその変化を確かに捉え、
ゆっくりと息を吐くと、静かに問いを投げかけた。
「……ウォーレンス・アストレイン。
アストレイン家の、第一王子よ……。」
その声は、優しさでも、慰めでもない。
上へ立つ者だけが知る、信念の音だった。
「お前にはまだ……
“背負う覚悟”はあるか?」
言葉が空気を震わせる。
その問いは、ウォーレンスの胸の奥――
深く沈んでいた“誓い”の核心へと突き刺さった。
即答は……できなかった。
胸の奥に沈んだ痛みが、まだ完全には消えていなかったからだ。
震えた手の感覚も、喉奥に残る残響も、何一つ整ってはいない。
それでもーー
決意だけは、揺らいでいなかった。
いや。
あの日からずっと……もう、決めていた。
ウォーレンスはゆっくりと顔を上げ、
まっすぐにルドを見据えた。
「ーー当たり前だ。」
静かに、しかし凄まじい熱を孕んだ声音。
「俺が……“すべての重荷”を背負ってやる。」
一つの宣告。
だがこれは、ただの言葉ではない。
失われる未来を繋ぐため、クイーンの王子が掲げたーー魂を込めた"約束"だった。
******
ーーノード・キング最前線
過去の情景が胸に滲み返る。
焼けた風。
伸ばされた手。
守ると誓った背中。
そして、血に濡れた笑顔。
それらすべてが一瞬で現在に重なり合う中で、ウォーレンスは静かに拳を握りしめた。
「……結局、変わらないのは俺もだな。」
その呟きと共にーー背後から迫った強化デブリの巨体が一撃で弾け飛んだ。
肉片が夜風に散り、血が細い雨のように降る。
その向こう側から、ゆっくりと影が現れる。
荒野の熱気をまとった拳。
理応変換機構を振りかざした青年が、立っていた。
血煙と風の隙間で、彼は静かに言葉を落とす。
「覚悟でも、誓いでも、重荷でもいい。」
砂に落ちた血の粒が、月光でかすかに光る。
「どんな綺麗事だろうがーー」
喉奥にあった声が、震えながら零れ……
「……お前が生きているのなら」
本音を告げた。
「ーーそれだけでいい……。」
その一言は、叫びではない。
苦悩でもない。
願いでもない。
ーーただの真実だった。
クイーンの王子『ウォーレンス』
彼を中心に、逆奪者たちへと火種は広がる。
その炎はーー反逆を宿す力となっていく。
「行ける……!」
「まだ戦える!!」
「折れるな……俺たちは、負けない!!」
爆音と血煙に混じって、声が連鎖した。
そしてーー
「ーーうぉぉぉおおお!!!!」
逆奪者たちの咆哮が、夜空を震わせる。
絶望に沈みかけていた戦場が、
たった一つの“希望”で光を灯す。
だがもちろん、その熱は前線だけに留まらない。
〈解析班・簡易テント〉
諦めが漂っていた解析班たちにも、希望が戻る。
止まっていた手が、自然と動き出す。
光が戻る。
色が戻る。
迷いが消える。
まるで、戦場全体に“笑顔”が広がったように。
そして、彼女もーー
「…………お姉ちゃん。」
自らの姉を信じ続けた心が、ゆっくりと解かれ溶けていく。
唇が震え、鼓動が早まっていくのがわかる。
生きていた。
帰ってきた。
声が聞こえた。
落ち着かせるように息を吐き、彼女は胸へと手を当てた。
凍えた空気が頬をなぞる。
冷たく無慈悲なその風も
何故か今はーー暖かく感じられた。
***
ーーノード・キング最前線
直前まで前線部隊の前に立ちはだかっていたのは、強化処理を施された三体のデブリ。
逆位相砲ですら“焼き切れなかった”個体群は、耐久力だけでなく、振るう腕の威力も、他のデブリとは比べ物にならない。
だがーー逆奪者はもう、止まらない。
ウォーレンスによって肉塊となった"それ"は、既に行動を停止していた。
残る強化デブリは二体。
その瞬間までは……"二体"だった。
ーーザンッ!!
着地音と同時に、鈍い音を立てて首が転がる。
金色に閃く残光だけが、そこに刃が通った証を残していた。
数瞬遅れて、胴体が膝をついて崩れ落ちる。
断面は灼け、溶岩を流し込まれたかのように黒く泡立っている。
赫迅刀。
リオンが握るその剣は、熱量を刃へ凝縮する“灼熱の剣”。
ウォーレンスの後を追うように、彼は前衛部隊と、一個体を撃破した。
「みんな、怪我は無いか?」
リオンの言葉が、薄い蒸気となって夜気に溶ける。
仲間の安否を確認し、彼はゆっくりと刀を構え直す。
残る強化デブリは一体。
リオンは敵を見据え、熱を帯びた呼気を吐き出す。
その隣で、ウォーレンスも鋭い眼光を、同じ敵へと向けていた。
彼らの殺意が向かう先で、巨大な影は鈍く蠢き、焦げた地面を爪で抉る。
ーー最後の強化デブリ。
荒野の風さえ止まったように、空気が張り詰める。
最前線に立つ軍師として、彼は即座に戦局を測った。
「……前線を下げる前に、こいつだけは“片づけておくべき”だな。」
防衛陣形とは、本来“散らされた脅威”を受け止めるための形だ。
多方向からの攻撃に対しては、隊列全体で衝撃を分散できるため、非常に強固な防壁となる。
ーーだが、その利点は裏返れば弱点にもなる。
一点に火力を絞られた場合、分散させる余地がなく、陣の厚みは活かせない。
突破を許し、陣形が崩壊する可能性が高い。
(だからこそ……今この場で優先すべき脅威は一つ。)
デブリの群勢が雪崩れ込む前に、この個体を必ず落とす。
それが最も損害を抑え、戦線を維持するための“最適解”だった。
それは、軍師として経験を積んだリオンにも、瞬時に伝わっていた。
「はい!
ここで確実に、仕留めます……!」
迷いのない返答。
彼の声には、ウォーレンスの意図を完璧に汲み取った者だけが持つ“確信”があった。
二人は同時に、重心を落として構える。
足元で砂塵が低く跳ね、風の流れすら変わった気がした。
溜められた殺気が、荒野の空気に軋みを生む。
ーー戦士と軍師。
思考の役割は違えど、前線で命を預け合う者たち。
互いの呼吸を測る必要はない。
背中にある信頼だけで、連携を行う情報は十分であった。
並んだ肩がわずかに震え、
二人の視線は同じ一点へと収束する。
「…………!」
刹那ーー
砂が跳ね上がり、剣士の輪郭は影へと沈んだ。
そこから先は、もう“見えない”。
ザザ……ッ。
強化デブリの周囲で、砂塵がふくらむ。
まるで“何か”が高速で横切ったかのように、
細かい砂が一方向へ押し流されていく。
次の瞬間、別の地点で土煙が螺旋を描いた。
姿は映らない。
だが確かに、駆ける音だけが空気を震わせる。
キンッ……!
金属を交わったような高音が、虚空から響く。
そしてーー
斬撃が先に走った。
視界に現れたのは刃ではない。
斬られた“結果”だった。
強化デブリの腕が、何の前触れもなく宙へ跳ね飛ぶ。
遅れて、反対の腕が霧散するように弾けた。
ーーそして両足に、薄く線が入り始めた時
リオンの声が、ようやく風の中で届いた。
「……幻影残虚。」
残心の姿勢で刀をわずかに下げた後ろでーー
支えを失った巨体が宙に浮く。
瞬間ーー
ーーバチッ!!!!
強化デブリの下から、紅い稲妻が轟く。
――ドドドドド……!!
拳は既にーー握られていた。
落下するはずの巨体は、空中で“揺れた”。
ーー止めを刺すために。
ウォーレンスは、すでに踏み込んでいた。
地を砕く衝撃が、砂塵を噴き上げる。
轟音と共に拳が振り上がった瞬間ーー
周囲の空気が、重力そのものを押し潰すように沈みーー爆ぜた。
ーーーバチィッ!!
紅い雷光が拳から地面へと走り、
理応変換機構は補正する。
「終撃!!!!」
荒野の夜を貫く咆哮。
拳が強化デブリの胴体へ触れた瞬間、
世界が一拍遅れて悲鳴を上げた。
———ッッギャアアアアアンッ!!!!
空間そのものが軋む。
巨体は、抵抗する暇すら与えられずーー
中心から潰された。
肉片が周囲へ爆散し、
衝撃波が砂丘を抉り飛ばす。
ウォーレンスの拳の余波だけで、
遠くの瓦礫までもが弾け飛んだ。
飛び散る破片の中、
王子は静かに拳を下ろす。
力を振り切った右腕からは、まだ赤い稲妻が消えていなかった。
***
二人の英雄によって、
前線の強化デブリは完全に殲滅された。
しかしーー戦場は終わらない。
むしろここからが、“本番”だった。
散った肉片の血煙がまだ地表へ落ちきるより早く、ウォーレンスは軍師としての顔へと戻る。
「全隊、防衛部隊を主軸に、防御陣形を取れ!
決して……構えを緩めるな!」
重く響く指示が、兵士たちの鼓膜を震わせる。
英雄として前線を粉砕した男がーー
一瞬で“最前線の軍師”へと切り替わった。
兵士たちはその声に反応し、
剣を構え、盾を重ね、陣形へと走る。
砂塵がまき上がり、金属音が連鎖する。
ウォーレンスは焦げた風を読み、無線へと連絡する。
「ルド、ミネ。
前線の強化個体は全て殲滅した。
こちらはいつでも対応可能だ。」
その隣でリオンも、戦況の境を感じで一息つく。
新たに現れたデブリの郡勢。
未だに姿を見せない享楽者。
戦いそのものはまだ終わらないが、一瞬の安堵が訪れたのは事実だった。
ーーだが……。
その場に落ちたのは、爆音でも怒号でもなくーー
異様な静寂だった。
血の匂いも、砂埃も、すべてが急に遠のいたように感じる。
「……?」
リオンは違和感に眉を寄せ、
隣で立ち尽くすウォーレンスを見上げた。
さっきまで敵を粉砕していた男とは思えない。
揺らぎひとつない、
感情をすべて切り落としたような横顔。
「どうしたんですか、ウォーレンスさーー」
リオンの問いは、最後まで言葉にならなかった。
ウォーレンスが、
その刹那だけ“別の世界”を見ているような目をしていたからだ。
そして、短く告げる。
「……リオン。
前線を任せる。」
ーー戦場の空気が、凍りついた。
それは逃避でも、弱気でもない。
限界まで研ぎ澄まされた軍師の声。
“これから起きる何か”を、
ウォーレンスだけが察知したかのようなーー
そんな、決定的な静けさだった。
***
ーー司令塔
ぽたり……ぽたり……。
天井から落ちる赤い雫が、床に黒い染みをつくっていく。
その音だけが、異様なまでに大きく響いた。
自分の足が言うことを聞かず、壁際まで後退したところで、イヴは膝から崩れ落ちた。
冷え切った床が背中を奪う。
呼吸ができない。
肺が、凍ったみたいだった。
視界が揺れながら……彼女は、ゆっくりと“上”を見た。
「……ミネ……?」
自分の声が、ひどく遠かった。
そこにはーー
固い拘束ベルトで吊り上げられ、
身体のあちこちへ無造作に槍を突き立てられたまま、微動だにしないミネの姿があった。
腕。
肩。
胴体。
突き刺さった槍の隙間から、赤い雫が落ち続ける。
ぽたり……ぽたり……。
「…………ッ……!」
喉から声にならない悲鳴が漏れた。
震える指先で床を掴み、逃げようとしても、力が入らない。
息の音が響くほど静かな室内が、余計に恐怖を膨らませる。
そこへーー
ふ、と微かな音がした。
「……はぁ。」
短い吐息。
ただそれだけの、何気ない仕草。
だがその瞬間ーー
イヴの身体は、反射のように震えた。
恐怖を抑え、必死に視線を動かす。
そしてーー
その“背中”を、彼女は震えながらも瞳に焼き付けた。
ーー小さき軍師 『ルド』
彼の右手はーー
真っ直ぐとミネに伸びていた……。
幻影残虛は、新たにリオンが習得した剣撃の一つです。
セラの改良によって、熱循環効率の上昇した赫迅刀による姿を眩ませるような斬撃。
赫迅刀とE.A.Fとの同調を、限界まで高めることにより、発動可能となる。
最高温度まで熱せられた刃から放たれる
"陽炎"を利用することによって、相手の視界から自分の姿を歪ませ、視覚を錯乱させる。
そして、完全同調したE.A.Fによる理応繊維が、装着者の神経伝達能力を大幅に向上させる事で、肉体の速度自体を跳ね上げる。
結果、リオンの動作は第三者からは “消失” に近く見え、斬撃先行・結果の後出しという
逆転現象にも似た軌跡が残る。
連続、長時間の使用は、装着者の筋繊維と神経束に負荷をかけ、E.A.Fの理応繊維が焼損する可能性があるため危険。




