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真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました 作者:ざっぽん
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58話 古代エルフの遺跡


 古代エルフ。
 神代かみよ有史ゆうしの間の時代、世界の黎明期れいめいきに地上を支配したとされる、最初の種族だ。


 まず妖精と精霊の住まう第一世界があった。
 第一世界は、一年中春の陽気に包まれ、不老不死の妖精たちが踊り、歌い、享楽を続ける楽園であった。
 だが、彼らには争いも苦痛もなかった。ゆえに彼らにとって毎日がこの上ない幸福の日々であり、何かを変えようという意思がなかった。
 楽園ゆえに、第一世界は永遠の停滞の世界。
 那由多なゆたの間、第一世界を眺め続けられた至高神デミスは、その有り様に不満をお感じになられた。

 そこで第二世界。すなわちこの世界を作られた。

 一日目に宇宙を作られた。
 二日目に天地と太陽と月と星々を作られた。
 三日目に糧となる虫と動物と植物を作られた。
 四日目に地に満ちるモンスターを作られた。
 五日目に知性を持つエルフとドラゴンとデーモンを作られた。
 六日目に支配者として第一世界で最も優秀であったある妖精に似せた古代エルフと、自分の姿に似せた人間を作られた。
 七日目はすべての仕事を終えたとお休みになり、夜の間にアスラが生まれた。
 八日目に挨拶に現れたアスラに、神は「私はお前のようなものなど作ってはいない」とお怒りになった。


 聖方教会の書物によれば、世界の創造はこのような流れになっている。
 古代エルフという表現は今の時代に合わせた表現で、現存する最も古い書物だと、古代エルフは単にエルフと表記され、五日目に作られたエルフを“フェイ”と表記している。

 異説を唱えるエルフ学者もいるが、暗黒大陸に住む、ドワーフとオークもエルフ種である。また両大陸に繁殖しているゴブリンも、もともとは暗黒大陸由来のエルフ種の成れの果てだ。
 現在存在するエルフを整理すると、

○古代エルフ(絶滅)
→ワイルドエルフ

○エルフ=“フェイ”
→ウッドエルフ(絶滅)→ハーフエルフ
→ハイエルフ
→暗黒大陸のエルフ種(ドワーフ、オーク、ゴブリン)

 と系譜を立てるのがエルフ学の主流派である。

 古代エルフの話に戻るが、彼らは現代よりも遥かに優れた文明を持っていたというのだけは間違いないが、多くのことは謎に包まれている。
 一時的とは言え加護のレベルを上げることができるエルブン貨幣や、逆に下げるワイルドエルフの秘薬など、古代エルフは加護をある程度解析していたと考えられる。
 聖職者にはそうした傲慢さが、神の怒りに触れ、滅ぼされたと考えるものもいた。

 結局のところ、滅んだ理由は不明である。
 ただ、この時代に初代魔王と初代勇者が生まれ、最初の魔王は最初の勇者に滅ぼされた、という伝承は残っている。
 つまり、最初の勇者は人間ではなく古代エルフだったのだ。


 だったら、今の時代もエルフが勇者をやればいいのに。
 そう考えながらルーティは目の前にいる、不快な金属のきしむ音を立てる歯車クロックワークの巨人を降魔の聖剣で両断した。

☆☆

 レッドが薬草を取りに来る山の中にある古代エルフの遺跡。ルーティ達が調べたところ、幸運にも遺跡は生きていた。
 上層はキマイラや古代エルフの財宝目当てのゾルタンの冒険者が入り込んで荒らされてしまっているが、 下層に移動する昇降装置は無事だ。
 エネルギーを供給しているマナクリスタルは、一時的にパワーを枯渇していた為、設備が休止状態になっていたが長い年月をかけて再充填されていたため、再起動には問題なさそうだ。

 これまで古代エルフの遺跡を何度も攻略してきたルーティは、慣れた手つきで装置を動かし、下層へと進んだ。

 そこでは古代エルフの遺跡ではお馴染みの、歯車獣クロックワークモンスターが配置されており、それらを制御する親歯車クロックワークマザーを探して探索しているところだ。

「ふぅ……」

 ティセは額に浮かんだ汗を手の甲でぬぐった。
 涼しい顔で戦うルーティと違い、ティセは何度かあやうい場面もあり、表情に疲れを見せている。

(護衛用のクロックソルジャーばかりじゃない、他の遺跡なら親歯車の前に1機程度しかいないクロックワーク・ジャイアントがすでに4機も。他にも侵略兵器のクロックワーク・デストロイヤーや潜水兵器のクロックワーク・リヴァイアサンとまで戦った……なんなのよこの遺跡は)

 ティセは内心悪態を吐いた。
 それでも、敵が単体で現れた場合はルーティが1人で決着をつけてしまうため、ティセはこの異常な脅威度の遺跡をなんとか進むことができている。

 やがて2人は遺跡の最奥にある親歯車の部屋へとたどり着いた。
 ここを破壊すれば、すべてのクロックワークモンスターは活動を止める。その部品を売るだけで10万ペリル以上の収入になるのだから、古代エルフの遺跡の攻略は冒険者にとって、まさに一攫千金のドリームだ。

(これを見て、一攫千金だなんて喜べる冒険者っているのかな)

 ティセは思わず半歩だけ後ずさった自分を自嘲しながら、そう思った。
 すべての歯車達クロックワークスを制御する歯車の塊である親歯車。それを守るように立ちはだかるのは、輝く金属の集合体であるクロックワークドラゴン。
 動くたびに不快な騒音を立てる他のクロックワークモンスターとは違い、芸術的なまでに精巧に組み合わされた身体は、歩いてもきしみ音一つしない。体内には熱したタールが充填され、開いた口からはちろちろと点火用の種火が赤い舌のように見え隠れする。

 かつて同型が先代魔王によって修復された兵器として利用され、先代勇者の旅立ちからの仲間を殺し、一度は先代勇者を敗走させた究極兵器だ。

「勇者様!」

 一時撤退してギデオンさんとリットさんにも参加してもらおうと、ティセは言おうとしていた。
 これは2人で挑むには強大すぎる。

「問題ない」

 だがルーティは、相変わらず涼しい顔のまま、だらりと聖剣を右脇に下げ構えもせずに、古代エルフの作った人造の竜へと向かっていった。

☆☆

 ルーティが俺の店に来てからもう2週間が過ぎた。
 最初に再会してから3日間、ルーティはゾルタンを離れていたようだが、その後は基本的にゾルタンにいるようだ。
 ティセと2人で冒険者に登録し、積極的ではないにしろ時折町の近くのゴブリン退治の依頼を受けているようだ。
 2人の実力からしたらゴブリン退治など不相応もいいところなのだが……おそらくは加護の衝動の解消が目的なのだろう。
 勇者の加護の人助けと、アサシンの加護の殺人衝動、この2つを解消するために村を襲う人型生物であるゴブリン討伐がぴったりというわけだ。

 たかがゴブリンなのではあるが、相手がどんな数であっても気にせず2人で依頼を請け負い、まるで散歩に行くかのような気軽さでゴブリンの住処に乗り込み、壊滅させてから戻ってくる姿に、頼れる新人として話題になっているようだ。
 それにゴブリンは、人間よりも小型で身体能力も知性も劣っているが、戦いと略奪の中で生きているため、たまに高い加護レベルを持つものがあらわれたりして油断のならない相手でもある。放置していると意外な脅威になったりもするのだ。
 もっとも、自分の実力を隠すようなことはしないため、ちゃんと情報収集すれば、そうした手強い相手がいるということを事前に察知できる相手ではある。やはり駆け出しの冒険者向けという看板に偽りはない。

 また2人の過去を詮索するものも、流れ者の多いゾルタンではしないのが当然という暗黙の了解があるため、その点でも2人はのんびりと冒険者をやれているようだ。

 そして……

「いらっしゃいませ」
「ひっ!?」

 今日、なぜかこうして俺の店を手伝いに来ていた。
 カウンターに立たせて見たのだが、やはり強者のオーラがあるのか、店に入ってきた客を見ながら挨拶すると、反射的に悲鳴をあげられてしまうようだ。
 本人はいたく傷ついている。

 だが、新しい発見もあった。

「多分、もっと笑顔になれば悲鳴あげられなくなるんじゃないですか?」
「そう?」

 ルーティが傷ついていることに気がつけるのは俺だけかとおもっていたが、ティセも気がついているらしい。
 ティセはこうしてアドバイスをしてくれている。

「そうだな、もう少しだけ笑顔になればきっと大丈夫だ。もうちょっとカウンターを任せていいか?」
「いいよ」

 ルーティは小さく拳を握って頑張るという仕草をしていた。
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