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真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました 作者:ざっぽん
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26話 今日は嵐の日


「よーし、雨戸全部閉めたな。庭の薬草も吹き飛びそうなものは全部回収したし、残りはまだ採取できない、まぁだめになっても仕方がない」
「看板とか壊れちゃいそうなものは全部はずしたよ」

 ゾルタンに嵐が来た。
 南洋で生まれた嵐は、世界の果て壁に沿って南から北西へと抜ける。
 秋口にくるのは少し珍しいが、数年に一度程度にはよくあることだ。

「じゃあ次は洗面所ね!」

 すでに外は風が強くなっている。
 空は黒く、雨が降り出すのも時間の問題だろう。

「鉱竜気象台の発表では、明日の夜明けくらいから本格的に嵐の中に入るんだっけか?」
「うん、若い鉱竜達が飛び回って警報出しているよ」

 光の四老竜の1人、黒く輝く雲母うんもの身体を持つ老鉱竜(エンシェント・ミネラル・ドラゴン)『フユ』は、ハイヘルム山の山頂に水晶の天文台を含む鉱竜大学を設立したアバロン大陸最高の地学者だ。
 若き鉱竜ミネラル・ドラゴンや地学者を志す人やエルフの若者などが訪れ、彼らに老いた鉱竜は惜しみなく知識を伝えている。
 老鉱竜大学にある部門の一つである、老鉱竜気象台は、アバロン大陸全体の気象を観測し、災害を事前に警告する活動を行っている。
 嵐に悩むゾルタンは、この老鉱竜気象台の情報が欠かせない。
 船乗りにしても、農家にしても天候は重要な要素である。大陸中の国々が、老鉱竜が運営する学問の城を援助し、不可侵かつ有事の際は各国が共同して防衛にあたることを宣言していた。

 鉱竜は、ドレイク種ではなくドラゴン種である。
 彼らは賢く、自然科学を研究することを好む。
 その鱗は雲母でできており、ドラゴンをよく知らない者からはストーンドラゴンと呼ばれることもあるが、その場合彼らは、「自分は鉱竜ミネラル・ドラゴンだ」 と、強く間違いを訂正する。その際は、自分の鱗を相手の目の前に突きつけ、その黒い輝きをしっかりと説明するのだ。
 光の四竜にとって、鱗の輝きは誇りである。

 いろいろな場所で研究室を作り何十年も研究を続けることから、光の竜の中でも、輝竜ラディアント・ドラゴン達と並んで身近なドラゴンだろう。

 輝竜は、未来の英雄の門出を祝福するのを生きがいとする。幼い子供が冒険に出るとき、輝竜は人間に化けてそっと手助けをし、冒険の中で子供が育つのを楽しむのだ。これも比較的よく見かけるドラゴンだ。
 まぁ口の悪い者に、ショタコンドラゴンだのロリコンドラゴンだの言われていたりするが。
 俺も騎士団見習いの頃に一緒に冒険したことがあった。
 なにか嬉しいことがあるたびに空気を読まず歌い出すもんで苦労したが、というかなんで子供の俺が気を使わなきゃならなかったんだ……まぁいいやつだったよ。確か名前はアルハゼンと名乗っていたっけ。

 残りの光の竜は、工学者である蒸気竜スチーム・ドラゴンと法の番人である雷竜ライトニング・ドラゴンだ。

 暗黒大陸由来の闇の四竜には、虚無主義の真空竜バキューム・ドラゴン
 停滞と破壊の塩竜ソルト・ドラゴン
 子供さらいの灰竜アッシュ・ドラゴン
 土地を汚染する不浄竜ダスト・ドラゴンがいる。

 ドラゴンは、人、エルフに次ぐ第三の主要種族として、このアヴァロン大陸で暮らしている。もっとも、このゾルタンにはいないようだ。ドラゴンにも魅力のない土地として見えるのだろうか。

「ほらそこ! サボってないで手を動かす!」

 怒られてしまった。

「嵐が来たら水道はダメになるんだから、今のうちに水を貯めておかないと」

 河川から水を引いている水道は嵐の前に河川側の流入口に蓋をされる。泥水が溢れることになるし、激流で破損することもあるからだ。
 井戸も大雨で濁りしばらくは使えない。
 水源豊富なゾルタンでありながら、嵐の直後は水不足になるのだ。その対策として、俺は水道が出るうちに水を袋や樽につめ、生活用水の備蓄をしているというわけだ。
 どの家庭でも同じことを行っているため、水の量はちょろちょろとしか流れない。時間だけが過ぎていく虚しい作業だ。

「って、昨日のうちにやろうって言ってたのに、ゴンズと一緒に遊びに行っちゃったのレッドじゃない!」
「だって誘われたから……」

 大工のゴンズは嵐の後は街中の家の修理で大忙しになる。さすがにこの時ばかりは怠惰なゾルタン人も休日を返上して働くことになる。
 そのため、ゴンズは嵐が近づくと、先に休もうなど言い出して遊びだすのだ。タンタの教育に悪い!

「あなたも一緒に遊びに行ったんでしょうが!」

 文句を言いながら、ぴょんとリットは俺の背中にしがみついた。

「さあ働け働け」

 騎手の真似をするように俺の尻を叩くふりをする。

「へいへい、働きますともリット様」
「……昨日いなかった分、私のことも構ってよね」
「分かってるよ、どうせ嵐で明日か明後日まではどこにもいけないんだから」

 おっと、手が止まってしまった。
 俺はぎゅっと腕に力を込めたリットの体温を感じつつ、黙って作業を続けた。

 ん、なんかこの感じ、昔同じようなことしたような……。

(……あっ、思い出した)

 あの時も嵐が来ていたな。ゾルタンを襲う嵐に比べたらずっと弱いものだったけれど、嵐に慣れていない、故郷の村人達は慌ててたっけ……。
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