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真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました 作者:ざっぽん
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23話 アルとタンタ


 カランとドアの鈴が鳴った。

「レッド兄ちゃん、遊びに来たよ」
「こ、こんにちは」

 そろそろ昼食にしようかと思っていた時、タンタとアルのハーフエルフキッズコンビが店にやってきたのだ。

「よう、タンタ、アルよく来たな、ちょうど昼飯を作ろうと思っていたところなんだ。食べていくだろ?」
「うん!」
「ご、ご迷惑じゃなければ」
「迷惑なんて子供のうちは気にしなくていいんだよ。すぐ作るからちょっと待ってろ」

 2人は居間の方で待ってもらう。
 リットは庭で素振りをしていたから、そろそろ戻ってくるだろう。

☆☆

「わ、ミートスパゲティ!」
「私もこれ好きよ」

 無邪気に喜ぶタンタとリット。
 だが、アルは困ったように目を泳がせている。

「なぁリット」
「なに?」
「アルが困っているから、上にジャケットでも羽織ったらどうだ?」

 多少涼しくなってきたとはいえ、まだ昼間は暑いゾルタン。日差しの中で素振りをして汗をかいたリットは、ここにくるまえに洗面所で汗を流してきたようだ。
 今は、上はタンクトップ、下はショートパンツと気軽な格好をしている。それが思春期のアルには刺激が強いようで、アルはチラチラとリットを見ては顔を赤くして困っている。
 だが、俺がそうリットに言うと……

「だ、だ、大丈夫です! ボク、全然見てませんから!!」

 とアルから悲鳴のような叫び声をあげられた。
 あ、あれ?

「レッドー、今のは無いわよ」
「え、あ、あれ? 俺が悪いのか?」
「そうよ、ああいうのは気がついても知らないふりをするものなの。思春期の男の子はそういうの人にバレたくないんだから」
「レッド兄ちゃんはデリカシーがないよね」

 あ、あれー?

「なんか、ごめんな」
「だ、だ、大丈夫です! それよりご飯食べましょう!」

 真っ赤な顔をして、目尻に少し涙を浮かべたアルが叫んだ。
 ごめん、本当にごめん。

☆☆

 最初はギクシャクしていたアルも、食が進むに連れて打ち解けていった。

「お代わりあるぞ」

 と教えると、目を輝かせるところは、やはりまだ子供なんだと微笑ましい。

「じゃあ私お代わり!」

 真っ先にリットが声をあげたのも、きっとアルとタンタが気兼ねなくお代わりできるように気を使ったのだろう。

「大盛りね!」

 多分気を使ったのだ。

 食事を終えると、アルは幸せそうな顔でお腹をなでていた。
 多めに作っていて正解だったな。

「美味しかったです」
「私はこれを毎日食べられるのよ」

 なぜか偉そうなリットに、タンタはいい加減リットの性格が分かってきたようで、じと目で呆れている。
 俺は笑いながらタンタに話しかけた。

「リットはこういうやつだ。結構いい加減」
「でもそこが?」
「可愛い」

「バカップルだ!」

 タンタのジト目が俺にも注がれていた。
 うん、俺もちょっとポンコツになっている自覚はある。
 タンタは大げさにため息をついた。

「アルー、オレたちお邪魔かな?」
「あはは」

 お茶とクッキーをテーブルに置き、俺たちはふざけ合いながら和やかに談笑した。

「そういえばレッドさん、僕も昨日加護に触れられました」
「そうか、どうだ?」
「不安はあります……けど、今のところ衝動のようなものはないですね。ただ漠然とした不安があるというか」
「多分、自分でどの武器を極めるか決めてないからだな。大きな衝動もないかわりに、ゆるやかな不安のみを感じているんだろう」
「じゃあ、ずっとこのままなら僕は僕のままでいられるんでしょうか?」

 やはり、まだ加護の衝動が不安なのか。

「でもずっとその不安を抱え続けるのはつらいぞ。それに加護から与えられるスキルがないと、何をするにしても不便だ」
「このままコモンスキルだけで生活していくってできないのかなぁ……」

 思わず言葉を失ってしまった。
 コモンスキルだけで生活か……。

「できないことはないが、大変だぞ」
「そうですよね、あー、僕もお父さんみたいに闘士ウォーリアーの加護だったら良かったのに」

 闘士の加護は、ありふれた最下級の加護だ。固有スキルは身体能力の向上のみで、特別な能力はない。
 利点としては衝動が弱いこと。いわゆる、その他大勢、一般人の役割を求められる加護と言えるだろう。

 ウェポンマスターという強力な戦士であることより、アルは一般人であることを望んでいる。

「せめて武器は普段の生活にも役に立つものを選ぶといい」
「普段の生活に役に立つ?」
「アルは将来何になりたいんだ?」
「んー、分からない。お父さんは船着き場で荷降ろしする仕事をしているけど」

 荷降ろし労働者か。
 そうだな……。

「例えばナイフ。荷物を縛るロープを素早く切ることができるし、他の人では切れないような頑丈なロープだって切ることができる。まぁ武器としてはあまり強いとはいえないが。
 他にはロープダーツ。これはロープの先に15センチほどの金属の刃をつけた武器なんだが、これに習熟すればロープの操法にも役立つ。
 変わったところだと、バトルラダー。これはもともと小規模な砦の攻城戦に用いられる1.5メートルほどの梯子だったんだが、これを運ぶ兵士が、白兵戦でも使えるよう武術体系を編み出したんだ。普通の梯子にくらべて幅が狭く、単純に鈍器として振り回すほか、相手の足にからめて引き倒すという使い方もある。スキルを得ていくと、副次効果として梯子を使った高所作業が得意になるという利点もある」

 俺はいろいろな変わった武器をアルに教えた。
 最初は武器なんて興味なさそうだったアルだったが、つぎつぎに登場する見たこともない変わった武器の話に、少しずつのめり込み、やがてどんな武器があるのかと詳しく説明をせがむようになっていった。

「すごい! モンスターも武器を作るんですね!」
「ああそうだぞ、トロールハンマー以外にも、ゴブリンブレードというものもある」
「ゴブリンブレード?」
「ゴブリンは知っての通り身体が小さいんだが、でっかい武器が好きでな。体格にあわない人間用のグレートソードやグレートアクスを使いたがるんだ。でも重すぎてまともに扱えない。そこでゴブリンは普段使わない頭をフル回転させ、武器に穴を開けて軽くするってのを思いついたんだ」
「え……」
「それがゴブリンの刃ゴブリンブレード。大体武器の重さが半分になるくらいに穴を空けるようだぞ」
「それって武器壊れないんですか?」
「壊れる。重さが半分になるかわりに武器の耐久性は悲惨だ。戦っているうちにポキンと折れて、ゴブリンが首を傾げているうちにやられてしまうって、笑い話はよく聞くな」

 アルは楽しそうに笑った。
 加護に対する不安を武器に対する興味が上回ったようだ。

「ウェポンマスターの武器選択は一度だけ。選択したら二度と変更できない。焦らずじっくり決めるといい」
「うん……ありがとうレッドさん。また色々教えて」

 若きウェポンマスターの門出だ。
 俺がアドバイスできるのは最初の頃だけだろうが、それでもこの子が自分の加護によって、納得できる人生を歩めればいいなと、そう思った。
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