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01_キノコの王_2/4

「第一・第二・第三の各埠頭チームへ。各埠頭、これより来航する船舶は、デッキの一番から順に、係留してある船のペイロードへの誘導願います。牽引艇は第三から第二配備へ移行。苦力クーリー社さんは、空いてる輸送台ターレットを順次待機位置に回してください」

【第三埠頭トナです。誘導ビーコン出します?】

「大丈夫だと思います。要請があれば都度回します」

【第三埠頭了解】

【第一埠頭、フュラミラより。了解しました】

【第二、ルルブより。同じく把握】


 ……そんな各部門との調整まで含め、最終的には十五秒刻みのダイヤグラムに落とし込み、艦発着の予定に際しての微調整時間の余裕を含めた臨時運行表が組み上げられて行く。

 トメをぐるりと囲っていた積層情報領域のポップは大分その数を減らし、時折ぽこんと投影される、定時連絡や銀河方面ローカル航路の発着状況、航路閉塞や開放などの日常業務を示す、見慣れたものが増えてくる。

「そう言えばお母さん。今の例外処理、妙に多くなかった? 臨時運行表まで作ってたし」

 そう。駅員が「舞う」状況は、多くの場合、混沌を生み出す(インシ)と予想される状況(デント)時がほとんどだ。

 事故に限らず遅れでさえも、航路閉塞による近傍航路への切り替えや、接岸埠頭の切り替え、乗客の乗り換えや案内、荷の積み替えに至るまで、多くの艦の航路再調整が必要になる。

 特に銀河方面と連絡船航路が入り乱れるアモリとハクディトは、客足と定期便の数こそ往時より減ったとは言え、営業区間が広いうえ、それに比して航路の営業キロ数も長い。

 事故や遅れなどの例外処理発生時は、いくつかの、あるいは全ての主要ターミナル駅とそこで管理している管轄域の駅まで含めて、全航路調整が必要になる場合も少なくない。

 とは言え、現状ではインシデントを予想させる状況は特にない。

 のみならず、アモリ駅管理下にある全埠頭に対して、来航する船舶を係留している連絡船のペイロードへ誘導するように指示を出すに至っては、明らかに相当数の来航が予想されている状況であることは明白だった。

「ああ、銀河方面は確認と微調整だったんだけどね。ハクディトもそうだけど、早ければ今日からにも、お祭り好きな連中が大挙して押し寄せるだろうから、調整をね」

 なんて言ったトメの目の前、最前面の目の前に、黄色に黒文字でいかにも注意してくださいと言わんばかりに出現したそのポップは、いくつかの星系文字で≪解析結果≫と書かれたうえ、上下を黄色と黒の虎縞模様のラインが這い回る、やたらと目立つものだった。

 ポップの内容は、防衛宙域のわずか外側に瞬間停止クレイドルキャッチ予定の艦艇の解析結果だった。

「『蜜壷蟻ミルメコシスタス』か。この辺じゃ珍しいものを引っ張り出してきたな」

「ミルメコ……って、昆虫型知性体インセクティアヌス系の艦だっけ?」

蜘蛛蜂人アラクニダアピス系。大方、イーナラ氏が面白がって引っ張り出して来たんでしょ」

「アラクニダアピスのイーナラ氏……って……、まさか」

「『紅茶キノコ』の輸出でひと山当てて、自社製品をブランドにした会社の社長だか会長やってたはず。確か」

「あああやっぱり! 『プロトン』って言ったら一流ブランドじゃない!? イーナラ氏……ってまさか会長本人!?」

 紅茶キノコ。それは、アラクニダアピスが持つ共生菌の子実体である。

 アラクニダアピスは、ある種の植物の葉を分解する菌と共生することで生存競争に勝ち残った種族である。

 食べた植物はアラクニダアピスの体内で菌に分解され、副産物として生成される物質とカロリーを摂取したのち、残りは吐き捨てられる。

 吐き捨てられた残滓ざんしに付いた菌は、さらにそれを分解し、子実体……キノコとなる。

 成長したキノコは、さらにアラクニダアピスに食べられることで胞子を宿主に取り込ませ、アラクニダアピスは主食では足りない栄養素を補う。

 そのキノコを乾燥させてから煎じた出汁は、発酵食品によく見られる独特の芳香を醸し出す茶として瞬く間に知性体生存圏ハビタットに広がり、多くの知性体がその香りを愛した。

 それを足掛かりに自社ブランドを立ち上げ、今となってはロイヤルギフトにさえ選ばれることもある、超が付くほど高級な紅茶キノコまで作り出している。

 とは言え、安価に流通する物の品質にも手は抜かない。

 それが品質と信頼の「プロトンの紅茶キノコ」であり、それにこだわるのがイーナラと言う人物であった。

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