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開発を始めるために

「電話、それがどのようなことを実現するのかは、アルバートの屋敷で話した通りだ。だから、これから具体的にどのような原理なのかということについて話していく」


 これから話していくのは原理。

 何をどのように配置し、どのように動作させていくのか。



 だが、その前にすべきことがある。


「メニュー」


 俺はそう言って、指で丸印を描く。


「視界共有level1、エイダ」


 俺は続けて、そう言葉にした。


 フレンドリストに追加するための条件で存在した視界共有。それがエイダのようなこの世界に住むような人間に対しても有効なのかという試行。


「どうだ、エイダ?」

「蒼真の近くに、色々な文字が書き込まれた青い板が見えます。なんですか、それ?」


 どうやら、成功だ。


 視界共有のlevel1。それはメニュー画面を他人にも見えるようにするというモノ。見えるようにするだけなので、厳密には視界共有とは言わないのかもしれないが、βテスト時代そう呼ばれていた。


 使った試しはないが。


 あとはlevel2以降続いていくわけだが、level2以降は対象とする相手の視界を自分の視界と同期させるので、その時はそれを行うかどうかの承認・非承認の画面などが相手の視界には浮き上がるはずである。


「これは一種の魔法だよ。普通は見えないようにしているんだけどね」

「蒼真って一体…?」

「冒険を続けていくうちにね、色々なことを知った。ただ、それだけさ」

「そう…なんですか…」


 だいぶと罪深いことをしていると思う。


 百パーセント嘘かと言うと、そうではないものの、都合のいい解釈をしやすいように情報を小出しにしている。


 正直、詐欺師に近いと言ってもおかしくはないと思う。


「というわけで、これを用いて説明するから、ちょっと隣に来てもらってもいいか?」

「分かりました」


 彼女は座る。


 俺の隣。

 拳一つ分くらい間隔を空けて。


 まぁ、引っ付かれすぎても、困るだけだし、離れられすぎても、エイダが画面を見ることが出来ない。


 ゆえに、これぐらいの距離がちょうどいいだろうと思う。


 それを確認してから、俺は画面上のメモと書かれた箇所をタッチする。


 そうすると、今まで、ステータスだとかオプションといった色々な文字が記されていた画面が何も書かれていない状態へとなる。


 広がるのは青いフレームだけ。


 試しにそのフレームの中の空白部分に指をかざし、そこに慣れた手つきで文字を書いてみる。


「あっ。”エイダ”って書かれました!?」


 メモとしての機能も健在なところを見ると、このメニューで出来ることは大抵βテスト版と同様だろう。

 ログアウトが出来ないというぐらいで。


「さて、電話についてだけど、まず図を描こうか」


 そう言って、俺が描くのは電話の仕組みを説明するための図。


 膜があり、その中央にキャップのようなものをつける。

 膜から見て、キャップをつけた側に、キャップから少し距離を離して、膜に対して垂直に鉄の棒を置く。


 そして、それを囲うように配置するコイル。


 そのコイルから出てくる線を出力として出したり、入力として置くというもの。


 なお、このキャップのようなものには磁力を持つようなものを入れる。


「声、さらに言うなら、音ってどんなものか分かるか?」

「音は耳に響いてくるものですよね」


「ああ、そうだ。じゃあ、何故耳に響くんだ?」

「音によって鼓膜が震えているから、ですよね」


「震えている、それは確かにそうだ。じゃあ、どうして、音の高い低いが理解できているんだ?」


 その質問に対し、エイダは黙り込んだ。


 音によって、鼓膜が震えている。それは言うなら、医療の分野、すなわち、回復の魔法を用いるうえで必要となる知識の一つ。


 だが、彼女はそれによって、どうして音が認識できるのかと言うことを知らない。いや、それに似たモノなら知っているはずなのだが、それに結び付けられていない。


「音は波なんだ」

「波って言うと、あの波ですか?」


「ああ。海とかで生じているあの波な。あれが非常に細かくなっていったのが、音だ」

「なる…ほど。その震えている幅とかは音の大きさによって、違ったりするわけですね」


「そういうこと。言うなら、弦楽器が近いかな。あの伸びた糸は、糸の途中に指を添えると、音の高低が変わったりするだろ?」

「なるほど、そういうことなんですね。確かに、言われてみれば、そうです」


 さて、これが下準備となる説明。

 本格的な説明はこれから。


「今回はこの膜を音によって、振動させる」

「磁石を入れたキャップも一緒に振動しますけど、これで何かが起きるんですか?」 


 俺はその言葉に、はっとする。


 この世界は電磁誘導と言う概念すら常識ではないのか。いや、この世界で言うなら、魔磁誘導とでも呼んだ方がいいのかもしれないが。


「魔力を流す線、それを巻いた物をコイルと呼ぶんだが、それと磁石を素早く近づけて遠ざけてを繰り返すと、魔力が発生するんだ。おそらくな」

「えっ!? そうなんですか!?」


「まだ俺の理論であるから、実験してみないといけないけど、おそらくそうなっていると思う」


 宮本正邦が追求したというリアルさ。


 その言葉に間違いがなければ、その現象は生じる。いや、レポートに偽りを記すとは考えにくいので、ほぼ確実にその現象は発生する。


 その二で書かれていた、電気がなく、その代わりに魔力が存在するというのはそういう意味だろうと信じる。


 出来なければ、その他の方法を考えなければならないが。


「まぁ、それを仮定として話を進めるよ」

「はい。実験したら、分かることでしょうし」


 そう、これは仮定だ。


 おそらく、魔力は電気としての役割に、魔法を使うための源という意味合いを付加しただけにすぎない物だと俺は思っている。


 そうでもなければ、物理法則が全て歪みだす。


 もし、違うのなら、自分で一から物理法則を作っているわけだが、リアルさを追求する上ではおかしい。


 リアルさを追求するなら、魔法がそもそも異端なわけだが、それはゲームにする上で、つけなければファンタジーらしくないとかそんな理由でついたのだろう。


「これによって、生じる魔力、それを話す相手側に作った同じ機械で再生する。さっきは、膜を音の振動によって、動かして、魔力を作るだけだったけど、受け取る側はその逆。魔力によって、膜を振動させ、音を作るんだ」


 原理上、この方式で作れるはずだ。

 だが、これは、俺の世界にあったような電話というものを想像してはいけない。


 少なくとも、あれほど綺麗に音が拾えると期待してはいけない。

 あくまで、俺は二ヶ月で作って売ろうとしている。



 正直言って、期間が短すぎる。


 上手く出来て、相手に一定の言葉を伝えられる程度。ノイズはいくらか乗るのは確定と言ってもいいだろう、よほど運がよくなければ。


「機械そのものはそこまで複雑な作りをしているわけではないから、材料をそろえることも踏まえて、二、三日で実験することが出来るんじゃないかな」

「理解できたような、出来ていないような、と微妙なところですけど、実感がわかないだけだと思います。明日から実際に作りましょう。そうすれば、分かることも色々ありそうですし」


「そう…だな。確かに実感はわきにくいと思う。だから、とりあえず、実際にやってみよう。よろしく頼むよ」


 そう明日から。

 明日からが勝負だ。


どうも、レイアンです。


さて、今回は初めてとなる技術の原理面の話でした。

なお、本小説では技術面に関して、ある程度簡略化したり、分かりやすいよう解釈を行うことがあります。


そのため、本職となされている技術者の方がご覧になると、これは厳密に言うと、違うよなぁとか思われたりするかもしれません。


その点に関してはすみません。


私なりに、分かりやすいようにということを目指して、書かせていただきました。


今回はまとめると、

磁石をコイルに出し入れすると、電流が発生する(電磁誘導)けど、その電磁誘導を声(音)の振動によって、やってみるということとなります。


なお、今回も、活動報告にて、詳しく書いてみたので、興味のある方はどうぞ。

http://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/171223/blogkey/857585/

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