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元いた世界の技術と異世界の魔法

 俺とドラゴン、二者はお互いのことを殺伐とした表情で睨みつける。


 互いに互いの体を破壊した。


 俺はドラゴンの左翼を。ドラゴンは俺の右腕を。


 高周波ブレードは右腕と共に落下し、地面に突き刺さっている。そこまでの距離はだいたい二百メートル。


 本来なら気づけなかったであろう距離にあるその自分の腕がある場所は、腕をちぎられたという意識からか、自然と目が追ってしまい、すぐにわかった。


 かの魔物に隙を見せぬまま、取りに行くのは不可能とみてもいい距離だ。


 思考を一気に進めていく。

 次にどうすべきか、ドラゴンよりも早く動くにはどう行動をすべきか。

 

 そんな俺のことを包んでいく、緑色の優しい光。

 それは、俺の右肩からの出血を徐々に止めていく。無理のないように修復していく。


 それは魔法。

 エイダが放つ回復の魔法。

 

 右腕そのものをつなぎなおしたり、もう一回作り直すのは、技量と時間が必要だ。


 その技量はカバーしているので、俺自身でも行うことが出来るものの、さすがにこの場では不可能。


 そして、エイダにはその能力があるかは分からないが、この場でそこまでの時間を確保するのはどちらにせよ不可能だ。


「さて、と。やっぱり強いねぇ…」


 俺は呟く。

 心の中からそう思う。


 ドラゴン。

 その存在は圧倒的だ。

 絶対的だ。


 標準の魔力をつぎ込んだ身体強化。それをしているこの体の腕ですら、尻尾を振り落すことで、引き千切った。


 それはあと少し、狙いが中央寄りであれば、間違いなく死んでいたということを示している。


 それは考えるだけで、ぞわりとする事実だ。


 こんなふうに冷静に分析が出来ているのは、エイダの痛覚遮断をする魔法が効果をなしているが故のこと。


 そして、体を動かすことが出来るのは後ろから回復を担ってくれているエイダがいるおかげ。


 そう、彼女は俺のことを信じ、サポートしてくれている。


 それも十分なほどに。


 あとは俺次第だ。

 俺が、かの魔物を仕留めればいい。

 

 ただ、それだけだ。


 俺は一回深呼吸をし、決断した。


 ドラゴンを殺す一手を。

 決死の思いで臨む最後の一手を。


 俺は左手に魔力を集める。

 そうしながらも、左手に銃を握る。


 この世界には存在し得ない、俺の世界の武器。

 それは人を殺すには容易く、圧倒的な脅威と言えるものだ。


 だが、この世界においてはその限りではない。少なくとも、ハンドガン程度ではたかが知れている。


 ゆえに、この世界だけにある武器、魔法と組み合わせる。


 不可能を可能とする力と組み合わせる。


 それは俺の世界にあった技術と、人間が出来ないこと、しにくいことを実現するというある意味ではよく似た力。


 現実世界の技術と異世界の魔法。似たモノ同士を組み合わせる事で、この世界でも通用する武器となる。


 ドラゴンと言う絶対的な伝説の存在。

 銃という高速で、絶対的な殺しの武器。


 それのどちらが勝るか、これがこの戦いの行方を最後に握るものだ。


 ゆえに、俺は信じる。

 この世界の魔法と銃という現実における武器を。


「行こう。これで終わりだ」


 俺は再度走り出す。

 ドラゴンと言う名の魔物。

 それを打ち破るために。


 目標は、銃弾をドラゴンの頭にぶち込むこと。


 俺は走りながらも、ドラゴンからを目を離さなかった。


 ゆえに、気づいた。

 ドラゴンが大きく息を吸い込み、火炎を放とうとしていることに。


 だから、俺はその瞬間を待つ。


 ドラゴンが炎を吐き、俺を狙うその瞬間。


 そして、その時は来た。

 

 ドラゴンの口から吐き出された炎。それは食料を求めるかのように荒々しく、そして、確実に俺の方へと向かってきている。


 それはここら一帯を焼野原に変えた元凶。

 人を、動物を、魔物ですら、消し炭に変える業火。


 それを見て、俺は一気に膝を曲げる。姿勢を低くして、右に跳ぶことで避ける。魔法、それによって強化された筋力が成し遂げる跳躍は、普通では考えられないモノ。


 元いた場所から三十メートルはあろうかというところまで、一秒足らずで到着する。


 ドラゴンの業火は避けた。

 あとは距離を出来る限り詰めて、銃弾をドラゴンの頭に貫通させるだけ。それで、かの魔物は殺すことが出来る。


 いくら、竜の体から見れば、小さな弾丸とは言え、貫通すれば、大量の出血を生む。

 それを頭に撃ち込むのである。

 当然、それ相応のダメージを与えることが出来る。


 さらに言うなら、打ち込むのは普通の弾丸ではない。


 進行速度と回転速度、それらを魔法によって高めた、衝突すれば、強い衝撃波を生む弾丸だ。


 それは人に当たれば、易々と体を破壊するもの。


 一発目は胴体という、まだ穿っても生きてはいられる場所だから、動いている。まぁ、動いてはいるものの、ドラゴンの体内は銃弾の衝撃波で傷つけられている。


 着実に、体力は削っている。


 今ならば。


 そう思い、俺は銃を構える。

 そして、狙いを定め、放とうとした。




 だが、放てなかった。


 視界左方から迫りくる尻尾に気付いたからだ。あの尻尾の速度、それをもとに遠心力で、体ごと回転させられれば、銃弾が外れる確率が高まる。


 とは言え、避けられるほどの余裕もない。

 銃弾には魔法をかけた。


 ならば、最後の覚悟を決めるか。


 俺は左半身に全ての魔力を回す。残るすべての魔力、それを使い果たせば、これ以降魔法をかけた銃弾を放つことはしばらくできなくなる。


 この村にその魔法を使えるほどの魔力を持った人間もいない。


 ゆえに、これは最後の賭け。

 死ぬかもしれない。上手くいくという保証はない。


 諸刃の剣。


 失敗すれば、待つのは俺の死とこの村の壊滅。


 だが、必ず成し遂げる。そんな決意が、熱意が、意志が俺にはあった。


 そして、衝突する鋼のような尻尾。


 それは俺の右腕を破壊したモノ。それは研ぎ澄まされた刀のような切断力と、大槌のような破壊力を持ち合わせたモノ。


 それを俺は左腕でつかみこむ。


 俺に存在する莫大な魔力、そのすべてを注ぎ込んで得られた身体強化の魔法。それは、七メートルはあろうかという巨大な尾を受け止める。


 一種の賭け。

 全魔力をつぎ込んだ身体強化で、尻尾を抑え込めるか、抑え込めないかという。




 そんな賭けに俺は勝った。

 現実的に考えればありえないという不可能を、魔法の力という不可能を可能に変える力によって。


 ゆえに、俺が見るのはドラゴンの目の動き。

 そして、ドラゴンの頭部。


 ドラゴンは俺の左手によって尻尾を抑えられ、動けない。

 その状態のまま、俺は一気に尻尾をこちらに引っ張ってドラゴンの体制を崩す。引っ張られたことにより大きく体制を崩し、こちらに向かうそのドラゴンに魔法の銃弾を放った。


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