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竜と魔法

「ガガァアアアア!」


 轟音。


 そう表現するにふさわしい咆哮が辺り一帯に響き渡る。それは大地を震わせ、人々に恐怖を与える。


 俺も、背筋が凍るかのような悪寒を感じた。

 だが、その悪寒に負けて少しでも臆してしまうようなら、動きが鈍くなってこの戦いでは負け、結果死に至ってしまうだろう。

 だから、自制心で怖いと思う心を抑え込んだ。


 この世界で、死がどのような扱いになるのか、それは分からない。

 ただ、分からないからと言って試すわけにはいかない。実際に死ぬのかもしれないのだから。


 ゆえに、俺は身をかがめ、地面に手を置くと、呪文を唱えた。


 言葉によって、魔力を魔法に変換する作業。

 口が早いほど、そして、ステータスが高いほど、魔法の完成が早まる。


 そして、形成が完了する魔法。

 あとは発動するだけ。


 そして、そんな俺に迫りくるのは、竜の業火。あと二秒もあれば、ここに到達し、俺の体を焼くであろうというそれを見ても、俺は焦らない。


 落ち着け、落ち着いてやれば、問題はないんだ。

 焦らないで、魔法を発動する。


 地面に亀裂が走る。


 その亀裂は、俺の前方に放射線状に広がるかのように進んでいく。そして、隆起する。土は盛り上がり、形成されるのは壁。


 分厚く固められた壁は業火を通さない。


 壁は壊れない、そんな自信を持って放った魔法。


 だが、そんな自信があっても、響き渡る焼却音は、俺の心に焦りを生む。そして、後方に漏れてくる熱された空気は、肌を焼くような感覚すらするほどに熱い。


「エイダ、痛覚遮断をよろしく頼む」

「はい、分かりました」


 前に進めない。

 ドラゴンが放つ業火はとどまることを知らず、全てを飲み込まんと対象を焼き続けている。


 それを超えることは困難。


 ゆえに、俺は今のうちに痛覚を遮断することにした。


 高位の治癒魔法師のみが使うことが出来る、その魔法は秘儀だ。

 人間が普段痛みという形で体に危険が迫っていると知らせているリミッターを解除して、無理やり危険を顧みず行動できるようにするということなのだから。


 そう、それは危険な所業だとは分かっている。



 けれど、それは使っておかないとここぞという時に動けなくなってしまう。ハイゴブリンの時の二の舞踏めば、必ず死ぬ。


 腕の一本や二本だって失いかねないのだから。体の一部を失う苦痛は、想像を絶するモノだろうから。


 それに、このような、まだ何もダメージを受けていない状態だからこそ、受けなければならない魔法だ。


「できました!」

「よし、ありがとう。ここからは、回復に専念してくれ」


 そして、俺は窺い見る。業火を放つ主の姿を。この村を破滅に導こうとする者の姿を。伝説とか伝承にのみ存在するような生き物の姿を。


 それを瞳に焼き付けながら、俺は左手でホルスターから銃を引き抜く。


 それと同時にかける魔法。

 それは加速。

 通常は自分の体を対象にする魔法。

 

 だが、今回の対象は銃弾。


 銃弾が発射され、飛んでいく上での速度ベクトルの向きを定義し、スカラー量も定義するという魔法。


 さらに、銃弾にかかる回転速度も定義する必要がある。


 人体の場合は、魔法の発動に補助がついているのか、ベクトルの向きは走っているならその方向に自動で定義されるし、回転速度は基本ゼロで、特に定義はしないので、簡単である。


 そう、それらを頭の中で定義をしなければならないのが魔法だ。


 まぁ、補助を行ってくれて、定義をしなくてもいいという方法はあったが、それは自分で定義するよりかは幾分か発動速度が落ちる。


 さらに言うなら、物理は技術者としては得意にならなければならない教科。この程度の数であれば、容易にとは言わないまでも自分で定義できなくもない。


 ゆえに、俺は自分で、様々な値を定義する。


 要するに、この世界における魔法はプログラミングみたいなものなのだ。


 変数を定義して、その変数を関数に入れて、結果を得る。この時の変数が自分で定義する改変内容で、関数が魔法そのもの。


 そして、結果が魔法によって生じた現象だ。


 なお、この時の改変が大きければ大きいほど、魔力と呼ばれる魔法を行使するためのステータスを消費する。


 速度ベクトルの向きは、銃口から直進する方向。銃弾に持たせる速度ベクトルのスカラー量は、2000m/s。


 回転数に関しては150000rpm。

 これで定義は完了。


 あとはそれ相応の魔力を消費するだけ。


 この定義は異常な数値だ。

 俺の現実世界で考えても。


 ゆえに、その改変は非常にきつく、魔力もそれ相応の量を消費する。



 効率が良い攻撃だと断言できるものではない。

 もっとより良い攻撃方法があるかもしれない。


 だが、俺に出来る、考えられた手段、それがこれなんだ。



 だから、この銃弾は外すことは許されない。



 そして、俺は躊躇することなく、その銃弾を放った。


どうも、レイアンです。


今回は、ベクトルとかスカラー量とかいう物理的な話から、弾丸の速度とかの話まで色々な話が出てきました。

その話について、解説とかを活動報告にて書こうと思います。

興味のある方はどうぞご覧下さい。

http://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/171223/blogkey/839191/

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