第40話:言い間違いのレベル越えちゃってるよね
よろしくお願いします!
それはほんとに無意識で、気付いたときには俺はもう恵を抱き締めていた。
気付いたならすぐに離れれば良かったのだが、何故だか離れようと思う自分の心に反して、俺の身体は言うことを聞かず、離れることができなかった。いや....たぶん離れたくなかったのだ。
抱き締めたと言うことは、自然と身体は密着するわけで...どうしよう...俺、今身体熱いし、心臓の鼓動も凄まじく速いんだけど、変なこと思われねぇかなぁ...
なんてことを俺は思ったけど、それは大丈夫かなってすぐに思った。
俺の鼓動が相手に伝わるのなら、相手の鼓動もこちらに伝わると言うことなので、恵の鼓動も俺に伝わっていた。
恵の鼓動は俺なんかよりずっと速く脈打っていて、音も微かにだが聞こえてくる。それに、身体の熱さは頭から湯気がでてるんじゃないかってぐらい熱い。
さすがに湯気はでていないが、顔を見ると、真っ赤になっていてまるで蒸発したかのように、さっきまでの涙はとっくに消えていた。
沈黙が辺りを包む...そんな気まずい状況を打破したのは恵だった。
「...お、お兄ちゃん!?」
恵の声は緊張しているのがはっきりとわかるぐらい上ずっていて、俺はその声でやっと我にかえり、
「...ご、ごめん!」
と言って、恵の身体から離れようと背中にまわした手をほどこうとした。
でもそれは恵によって止められてしまった。
「離さないでお兄ちゃん!」
そう言って恵は俺の胸の前にあった手を、俺の背中にまわして思いっきり俺を抱き締めてきた。
それにしても...力強すぎ!恵はこう見えて力が強く、俺が両手で閉めようとしたドアを片手で止めてしまうほどで、今も俺の背骨がぎしぎしと軋むような音をたてている。
それを知ってか知らずが、さらに抱き締める強さを強くしてきた。
「離しちゃ嫌!」
そんなこと言われても、お前の力が強すぎて...そうなれば自然と俺の体は海老ぞりみたく反り上がり、背中にまわした手も、自然と離れていってしまう。
だから、これは俺のせいではない。
「そんなこと言われても...恵...痛い...息苦しい...」
「う ぇえ!?」
...どうやら恵は知らずにやっていたらしい。
無自覚でこの威力...今後、恵を怒らせるようなことはやめよう。
「ご、ごめんなさい!」
恵は、どうしたらいいのかと少し慌てていた様子だったが、一度手を離し、また俺の胸の前に持っていくと言う答えに落ち着いたらしかった。
「............」
「............」
それにしても............
いつまでこうしてればいいんだろーう?
いや、最初にやったのは僕だけども...てか、恵が離したってことは離してもいいってことなんじゃ?えっ、いいよね?いいんだよね?離すよ?離しちゃうよ?
「ねぇ、お兄ちゃん?」
「は、はい!」
急になんだよぉ...びっくりするじゃねぇか。
でも、そんなことは序ノ口で、次に恵が言うことは俺をさらに驚かせた。
「...なんで抱き締めてくれたの?」
....................................どひゃあああああああ\(^-^)/
...どうだろう?驚きが伝わっただろうか?
いや、こんこと言ってる場合じゃない!やばい!これはやばい!
別に答えがない訳じゃない。ただ、その答えが...だって、可愛かったからだよ!?そんなのただの変な人じゃん!変態じゃん!
こうなったら違う答えを考えなくては...そうだな...
...お前の泣いている姿がたまらなく可愛かったからだよ。
だから、可愛いはNGなんだよ!てか、俺CHARA!
なんでこんなせりふが思い付くんだよ!我ながらセンスねぇな!
違うやつ違うやつ...
...泣いてるお前がほっとけなかったんだよ!
うーん...ま、こんなもんかな。
そんじゃ...ごほん、
「泣いているお前がたまらなく可愛かったからだよ」
「...ふぇ?」
「ぼんっ」という音とともに、恵の顔はまたまた真っ赤になった。
...セリフがまざったあああああああああ!!
なに真顔でこんなせりふ言っちゃってんだ俺!
どんだけCHARAいんだよぉぉぉぉぉ!!
あー、だめだ。マジでシニタクナテキタ。
「それ、ほんと?」
「...ああ、ほんとだよ」
ここまで来たらもう吹っ切れるしかない。
もうどうなってもいいよ。煮くなり焼くなり好きにしてくれ。
「...う、嬉しい///」
「えっ?そうなの??」
「うん...だってそんなことお兄ちゃんに初めて言われたから///」
うわっ!まぶしっ!恵を直視できねぇ!
なんて可愛らしい乙女なことを言うんだ君は。
もうなんか逆に恥ずかしいわ。
「でもどうしてそんなこと言ってくれたの?」
言い間違えただけだよ。なんてことは言えるわけがない。
「...お前が俺に見てほしいって言ったからだろ」
「言ったけど....」
「だから俺が言いたいのは、お前のことはちゃんと見てるってこと。見てるからお前の...その、可愛いとことか分かるんじゃねぇか」
「...うん」
「そう言うことだからさ、もう思い詰めるなんてことするなよ」
俺は、恵の頭に手をのせて、ポンポンと軽く叩いた。
「てゆうか、俺はお前にも助けられたんだからな」
「えっ?」
「あの時お前、俺を見つけてすぐに向かってきてくれただろ。その時の俺、自分は一人ぼっちだと思ってたんだ」
「............」
「でもそんなとき、恵が来てくれて、心配したって言ってくれて、俺ほんとに嬉しくて、ほっとしたんだ...一人じゃないって」
「...お兄ちゃん」
「あんときはありがとな恵」
俺が言ったことは、あながち嘘ではない。
恵のことは別に見てないって訳じゃないしそれに、助けられたって言うのも本当だ。
あの時は嬉しくて、涙が出そうだったな。
「...じゃあ、私はお兄ちゃんのそばにいてもいいの?」
「...別に、いいんじゃね」
「...うん、わかった!」
そう言った恵は少し顔を赤らめて、優しい笑顔で俺の方を見ていた。
俺は、ちらっと見ただけですぐに目をそらしてしまう...そのまま見ていたら理性を保てる自信がなかったからだ。
「もう用はすんだだろ」
「えー、今日は一緒に寝よ?」
「アホか。いいからさっさと戻れよ」
「はーい」
恵は少し残念そうに、でもどこか嬉しそうな感じでベッドから立ち上がり、
「じゃ、おやすみなさいお兄ちゃん」
と言って、部屋をあとにした。
「さてと...」
俺はベッドに横になり、目をつむった。
「............zzz」
そして、すぐに眠りについたのだった。
うん、今日は疲れた世マジで。
お読み頂き感謝です♪
冬アニメも終わっちゃったからなんか寂しい今日この頃...
てか、春アニメの準備まだやってねぇー。
何が面白いのか...わからん。




