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3・だから、それじゃない

 もちろん、クリスプブレッドが北の魔国でよく食される食品であると説明したように、魔族も複数個所に居住し、勢力を形成している。常には人族との交流も行われており、敵対的というわけでもない。


 当然だが、単に魔力親和性が高いだけなので、肌の色が青や緑と言う事はない。ただ、それぞれの地域によって一般の人族との差異は見られる。


 北の魔国であれば、森に棲み、魔獣を従えたり遠ざけたりする能力に長けており、耳が長く尖っていたり、獣の特徴を有している。いや、まあ、エルフや獣人っぽい容貌なんだよ。寿命が異常に長かったりはしないらしいが。


 そして、魔の森や砂漠に接する山岳地帯に居る魔族、東の魔国は、低身長でガッシリ体型というまさにドワーフだ。魔鉱石の採掘や加工に秀でている。


 とりあえず知ってる魔族はそのふたつ。他にも居るらしいけど、鬼がどうしたとかいう誇張された噂しか知らない。


 そして、電波を受信して暴れていた魔族も、昨年には電波の発信が止んだのか、静に、冷静になった。


 この様な事がどのくらいの頻度で起きているのかはよく分かっていないが、少なくとも今回は二百年ぶりで、その前は五百年とかさかのぼるらしい。


 詳細は分からないが、伝説や一部の国の伝承や建国記などには、魔王と言う存在であるとか、氾濫が何十年も続いたという事もあるとされている。正確な事はよく分からないという注釈付きで。


 

 そうこうしているうちに門をくぐった。


 彼らは冒険者だし、僕も諸国漫遊の為に冒険者登録をしてタグを持っている。


 少なくとも二百年前の反乱を機に、冒険者ギルドは人族国家間で共通資格化され、どこの国へでも入れるようになったという。

 そもそも、大氾濫が起きていなくとも、小規模スタンピードは地震や噴火のように日常的な災害なので、冒険者の移動が簡略化されているそうだ。


 そんな氾濫なんかは軍隊やら騎士団と言った国家組織がメインで対処しないのかって疑問があったが、あくまで対処は当事国内での対応と言うのが基本で、増援の主力は冒険者であるらしい。


 まあ、当然と言えば当然だ。小規模氾濫なんて、一国の中でおさまる規模なんだから、他国の兵力を引き込むなんて碌な事にはならないのだから。

 そこで役に立つのが冒険者と言う魔物・魔獣専門の傭兵集団というわけ。

 国や貴族が冒険者を厳しく支配しない代わりに、冒険者やギルドも政治への関与や介入はしない。もちろん、戦争傭兵をやるなら、冒険者ではなく、傭兵ギルドに入り、国や貴族と深く関わり合いを持つことになる。場合によっては取り締まりや討伐の対象ともなるそうだ。


 僕たち冒険者は門番には大した興味の対象ではないらしいが、バンアレンは大戦の功労者として名が通っているので特別であるらしい。


 そして。


「そっちの少女は見ない顔だな。バンアレンさんがまたどこかから?」


 と、僕にまで興味を持たれてしまった。彼さえ居なければ普通に近くの街から来た冒険者で済んだのに。


「妖精様だ」


 バンアレンもわざわざ僕の事を紹介してしまう。


 当然、勇者三人の事は知れ渡っているので、門番も知っている。


「そう言われてみれば、確かに聞いた容姿そのものだ」


 戦場を魔物の血をまき散らしながら乱舞する妖精。そんなトンデモナイ言われようの僕。召喚チートによって得たらしい底なし魔力による身体強化がもたらすけた外れの身体能力によって、常人もそこらの魔物や魔族も凌駕する動きが出来る。

 後の二人もそうなんだけど、その結果が、他を圧倒した戦果を生み出していた。目にもとまらぬ早業で相手を斬ったり突いたり叩いたりだもんな。


 じろじろ見てくる門番に苦笑で返す。そして、新しい街を訪れたら必ず聞く一言。


「この街の農地でコメは栽培されてない?粉にしなくても、炊いたり蒸したら白くてふっくらしたツブツブが出来る食べ物」


 いつものように「何言ってんだ?」という顔をされてしまった。


「ユウ。クスクスと何が違うんだ?」


 と、以前戦場でも聞かれた事を言って来るバンアレン。


「クスクスは粗挽き粉を粒状にした携帯食。僕が言ってるのは、外皮を剥いでヌカを取った実をそのまま炊いたり蒸したりして食べる事の出来る作物の事だよ」


 同じ説明を何度しただろうか。


「いや、それはお前、粥のこったろ?」


 いや、麦粥やソバのカーシャの話しはしてない。


 これまで東のドワーフ魔国へも行ったが、ラノベによくある東方国家なるものは寡聞にして知らないそうで、魔の森や砂漠の海を越えるには、僕のような戦闘力をもってしても難しいそうだ。

 そりゃあ、越えるのに数週間とか月単位でかかるのに、そこが魔物や魔獣の天国なんて、どうやっても無理がある。

 電波をキメても氾濫による狂騒よりも鍛冶や酒造に狂っていたドワーフをして、越えられない森や砂漠なら、僕には無理だと諦めた。


 そもそも、南下すれば赤道地帯は熱帯雨林で、稲文化もあるんじゃないかと思ったのだが、ある程度から南に大陸が続いておらず、地球で言えばユーラシアのインド以南が存在しない。シベリアに該当する地域は魔物や魔獣の世界で、中東に該当するところはそのまま大砂漠。中央アジアもステップの向こうは砂漠とあって、東アジアへ至る術がない。


 そんな砂漠には特有の魔物が居るので人が安全に往来することは叶わず、森も同様。きっと東方に人類文化圏はないんじゃないかな?あっても、別種人類だろう。


 なので、西進して南へ行ける地域を目指している訳だが、かなり西へ来たはずなのに、まだ稲がない。


 

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