七話【魔法の指導の不思議なやり方】
闘技イベントから数日たったある日のこと、白はヒイナとルリネに魔法の指導をしていた。
ルリネは冒険者登録の際に魔法の適性検査をしており、その時に魔法を使う適性があることは分かったらしい。
だが、これまで魔法の指導をしてくれる人はおらず、またわりと早い段階から剣を使っていたので魔法に関しては手付かずだった。
それを聞いた白がせっかく適性があるならとルリネに魔法の指導をしようかと提案したところ、是非にということで魔法の指導を行うことになる。
この時点ではルリネだけのはずだったのだが、どこから聞きつけたのかヒイナも自分にも魔法の指導をしてほしいと頼み込んで来たのだ。
だが、ヒイナはまだ魔法の適性検査をしたことがないらしく、そもそも魔法が使えるのかすらわからないらしい。
そこで、白は実験も兼ねて白が適性検査を行うことを提案してみたのだが、当然のごとく不思議な顔をされた。
それもそのはずで、この世界では属性や魔法適性というのは特殊な魔法具を使わなければ判別できるものではなく、一流の魔法使いも検査をしなければ自分の適性など分からない。
にも関わらず、白は魔道具を使わずに検査ができると思うなどと言うのだから不思議な顔になるのも無理はない。
だが、白には多分適性の強さはともかく、属性と最低限魔法が使えるかどうかくらいは判別できるだろうという自信があった。
これはまだトータスの街にいた頃のことなのだが、ウィリルと一緒に魔法の練習をしていた頃、白は練習をしていくうちに自分の中の魔力の流れを認識する力が異様に高いことが分かった。
自分の構築される魔法による魔力の流れや属性の力を高いレベルで認識し、制御することで異様な早さで魔法をものにしていったのだ。
しかも、白はそれだけではなく、相手に触れることで相手の魔力の流れをも認識し、流れに干渉が出来ることもわかった。
その技術を使い、ルテラに風の上級魔法の制御を体感的に練習させてみたところ、普通よりもかなり早く上級魔法を習得させることができたのである。
その時にもとても驚かれたが、まあそれはともかく白は体内魔力の識別能力と制御力が極めて高い。
そこで、ルリネの魔法の指導をしようと思ったのだが、一応似たようなやり方で魔法の適性などを見ることもできるので、ヒイナの魔法適性を見てみようと考えたのだ。
だが、そんなことを説明してもヒイナやルリネが理解できるわけもなく、二人は白は凄いから出来るのだという理由で納得したようだった。
いよいよ始める白流魔法適性診断。
白は右手をヒイナの背中に当てると、ヒイナに声をかけた。
「よし、じゃあいくよ?」
「は、はい」
ちょっと緊張したようなヒイナの返事を聞き、白は目を瞑って意識を集中する。
直後、白の脳裏に大きな池のイメージが浮かぶ。
意識を池の中に向けると、白の脳内には風と癒しのイメージが伝わってきた。
ちなみに、最初に見えてきた水場のイメージ──今回ならば池──はその人の魔力の大まかな量を示し、その次に見えるなんらかの概念のイメージ──今回ならば風と癒し──はその人の属性を示している。
白は人の魔力適性を見るのは初めてに等しいので断言は出来ないが、ヒイナは魔法はそれなりに使え、属性は風と回復に適性があるのだろう。
なお、白が自分で見た時には、水場は海が、概念はごちゃごちゃしすぎて意味がわからなかった。
まあ白が規格外なのは今更なのでそれはともかく、今はヒイナに結果を伝えるのが先だ。
白は目を開け、ヒイナの背中から手を離すとヒイナに声をかける。
「終わったよ、ヒイナ」
「どうでしたか!?」
白が終わったことを告げると、ヒイナは勢いよく振り向いてそう聞いてきた。
白はヒイナの頭をぽんぽんと優しく叩くと、ヒイナに結果を告げる。
「ヒイナの属性適性は風と回復、魔力量も魔法をちゃんと使えるくらいにはあると思うよ」
「回復属性が使えるんですね」
白が告げた結果にヒイナは目をキラキラとさせながらそう言った。
回復属性は他の属性よりも戦闘以外でも役立つことが多い、それにルリネは冒険者であり、怪我をしてくることもあるだろう。
そう言った時にもわざわざ回復魔法の使い手に頼まなくてもヒイナが手当てをしてあげられる。
冒険者になるつもりのないヒイナとも相性のいい属性だ。
それから、白はルリネとヒイナに魔法を教えた。
まず詠唱を覚えさせ、そして魔力の制御を白が補助して慣れさせる。
それを繰り返すことで魔法の習熟を早め、二人に教えていたが、今日のうちに白が覚えている初級魔法で属性があうものは全て、中級魔法も半分近くは習得させることが出来た。