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白の賢者 ~転生先は魔法の世界~  作者: 春野霞
第一章 
8/44

8 妹だった


 この世界では本はあまり普及していないみたい。絵本も存在はしているらしいけれど、すごく値段が高い様で、まだ見た事無いのよ。ひょっとしたら製紙業とか印刷業が発達していなくて、手で紙漉き、手で写本とかなのかもしれない。

 だからあたしの知る世界は自分の目で見た事の有る場所だけで、とっても狭いのよね。

 家の有る集落、100戸くらいの・村と言った方がいいのかしら。多分全部のおうちの人と顔を合わせた事が有ると思うの。と言っても畑もあるから面積は結構広い。幸い住宅は結構中心に纏まっているから、あたしの足でも半日有れば一回りできるくらい。

 あとは家の裏に広がる原っぱ。元々は農業用地だったらしい。とうさまのお仕事が農家じゃなくって衛兵さんだから耕してなくて、雑草が生えまくってるのね。

 

 もちろんテレビもラジオも無い。新聞も無いから社会がどうなって居るのか知る由も無いのよ。まあ、学校って所に行ったらもう少しあたしの世界も広がるんでしょうけど。



 と言う訳で、あたしは毎日を主に家の裏の原っぱとその奥の探険で過ごしているの。

 あの泉にも何回も行ってるよ。樹の精さんはお引越しがうまく行ったようですごく元気になっていた。埋めてあげた魔石の影響で樹の精霊になってしまったとの事。土の精さんも同様に土の精霊に。

 二人ともあたしに契約を迫ってきたから、仕方なくOKしました。一人の人間が複数の精霊達と契約するなんて殆どないらしいけどね。


 樹の精霊さんは、以前宿っていた老樹の幹をあげるから魔法の杖を作ったらどうかって提案してくれた。横で聞いていた土の精霊さんが、おお、わしが作ってやろうって言い出した。精霊が宿っていた樹は精霊樹といって、とても貴重らしい。魔法の媒体としての性能も高いみたいだけれど、まだあたしには必要ない。そのうち貰う事にしたわ。


 何回目かに遊びに行ったときに、風の精さんが遊びに来ていたの。以前頭の上を通り抜けて行った、あれがやっぱりそうだったみたい。水の精霊さんたちが皆んな成長して精霊になっていたのが悔しかったらしくて、自分にも寄越せとしつこかったから、仕方なく魔石を作ってあげたわよ。

 風の精は実体が無いからどうするのかなと思ったら、魔石を風で宙に浮かせて、周りをぐるぐる回りながら吸収して行ったの。つむじ風って、あれの事ね。風の精さんも無事に精霊さんになって、姿を見せるようになった。

 風の精霊さんにも契約をせがまれた。もう、諦めた、どうにでもして頂戴。


 精霊さん達から色々と教えてもらったよ。火、水、風、土の精を四大精霊って言うらしい。その他にも樹の精さんも居るし、花の精とか、種類は多いみたい。精霊さん達を呼ぶときに名前があったほうが良いので、風の精霊はシルフィード、水の精霊はウンデイーネ、土の精霊はノーム、樹の精霊はドリアードと呼ぶことにした。もちろん記憶の中の百科事典で調べたわよ。思いつかないんだもの。

 名前が長いから、普段はシルフさんとかデイーネさん、ドリさんって呼ぶの。ノームさんは・・・そのままで良いや。いや、決して手抜きじゃないからね、


 会話するときは頭の中で精霊さんを思い浮かべて、話しかければ良いらしい。ディーネさんは水のある場所、ドリさんは樹が生えている所が姿を現しやすいとの事。ドリさんの枝を1本貰ったからお家の庭に植えておく事にしたの。根付いてくれると良いなぁ。


 またお話聞きに来るって約束して、家へ帰りました。




 少し前、あたしは2歳になって、また家族みんなで誕生日のお祝いして貰ったよ。言葉もだいぶ話せるようになって来たの。「かーさま」、「とーさま」もちゃんと「かあさま」、「とうさま」って言えるし、自分の事もメアリーって言える様に成ったんだよ。二つ目のぬいぐるみはウサギさんだった。もちろんベッドの中で一緒に寝てる。


 そのかあさまなんだけど、最近なんだか調子悪いみたいなのね。病気かしらと思って、久しぶりに【認識】君。最近は【魔力操作】で魔石を作ったり吸収したりしてトレーニングしていたから、あかさまに【認識】君なんてしてなかったのね。


 「人・女性・妊婦」 うわ、赤ちゃん出来てたんだ。


 妊婦さんに面倒かけちゃいけないと、あたしは至ってお利口さんに過ごしましたとも。でも目を盗んで探険に行くのは、子供のお仕事ですから諦めてくださいな。

 

 弟かなぁ、妹かなぁ。前世では一人っ子だったあたし。本当は妹が欲しかったのよね。少し年が離れていたらお人形さんみたいに着せ代えとかしてあげて、楽しいのになあと思っていた。え、歪んでるって?余計なお世話ですってば。



 かあさまのお腹はすくすくと育っています。重そうだなぁ。余り太るとお産が大変になるんじゃ?



 「人・女性・妊婦・臨月」 


 あ、あの、そろそろ生まれるんじゃない?

 よけいな事がわかると、余計な心配も抱え込むのよね。


 かあさまより、あたしの方がそわそわとしていたら、知らない人が我が家に来ました。かあさまの学校の先輩で、大きな町(王都って所らしい)で治療師さんをしているそうです。ケイトって言う名前で、かあさまが出産するので手伝いに来たんだそうな。お医者さんが居てくれるのはすごく心強いですよね。


 ばたばたと慌しくしていたら、赤ちゃんが生まれた。女の子だったよ。かあさまの横で小さな体の子が眠ってるのを見ると、面倒見てあげなくちゃとか、一緒に遊べるかしらとか、念願の妹が出来てとっても嬉しい。手も足もとっても小さいのに、きちんと爪がそろってるのが不思議だったわ。


 シャルロットという名前が付けられたよ。シャルちゃんって呼ぶね。眠っている時にやわらかいほっぺを撫ぜてみた。かあさまの愛情がこの子に向くのは仕方ないけど、あたしにも少し残しておいてねと、かあさまの手をつかんだら、頭撫ぜ撫ぜしてくれた。

 シャルちゃんはかあさまの横ですやすや。3歳になったあたしは別の部屋で寝る事になったわ。少しさびしいけれど、お姉ちゃんだから我慢しないとね。






 シャルちゃん、うるさいわ。お腹減ったくらいで泣くなよぉ、眠れないじゃないか。


 現実は結構厳しかった。


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