↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白の賢者 ~転生先は魔法の世界~  作者: 春野霞
第一章 
7/44

7 泉の畔は大忙しだった

 魔石の充填=魔力の結晶化である事を掴んだあたしは毎日魔石を作っているの。種となる核が無くとも結晶化出来る事が判ってからは、自由に魔石を作り放題って訳。充填ではなく、生成って事ね。作った魔石からの魔力吸収も覚えたのよ。さしずめ魔力の出し入れ自由自在の【魔力操作】って感じかしら。

 時間を掛けて魔石を育てると、灰色の魔石じゃなくって、綺麗な色の魔石が出来上がる事もわかったのよ。まるでルビーやサファイアみたいに綺麗な透き通った石。魔宝石って名づけたんだけど、単結晶というか、クリスタルね。これを作るのは結構大変なのよ、しくじると色が濁ったりして。まあ、失敗したやつは吸収して証拠隠滅するから。ごみはきちんと処分しないとね。


 【魔力操作】を始めてからみるみる魔力値が上がってくのがわかったの。体の魔力をほとんど放出してしまうのだから、空になった分成長するって事よね。何もしていないときにも自然放出みたいに魔力があたりに拡散していた事にも気づいたから、抑えるようにしてみたの。元の魔力が多くなっていたから自然放出された魔力もかなり大きかったはず。あたり構わずに騒音撒き散らす迷惑隣人とかっていやじゃない?


 かーさまの気配も自然放出の結果みたい。相当魔力有るのかなあ。村の人達にはかーさまほど魔力の有る人いないし、村以外の人と比べる事が出来ないからなんとも言えないけど。そう、あたしはまだ人が沢山居るところに行ったこと無いのよ。町とか市場とか行ってみたいなぁとは思ってるんだけど、なかなか実現しないのよね。

 

 とーさまのお仕事場は歩いて2時間くらいの所らしいの。衛兵長みたいなお仕事だとか。そういえばとーさまは貴族だったよ。

 メアリー・フォン・フリードマンがあたしの名前だそうだ。一番下の騎士って貴族らしくて、領地とかは無い一代限りの名誉職みたいなものね。公爵令嬢とか伯爵令嬢とかってお城に住んでみたかったとも思うけど、この場所にいたから水の精霊さんとも知り合えたんだし、まあいいか。所詮中身はごく普通のパンピーだったんだし。



 数ヶ月経って、久しぶりにあの泉まで行ってみようと思い、精霊さんへのお土産に魔宝石を一つ作った。集中しないと失敗するし、じっくりと育てないといけないので、2週間くらい掛けてやっと1センチ程の結晶を育てたわ。魔宝石をポケットにしまって、あと魔石を二つ三つポケットに入れて泉へとてくてくと歩いて行ったんだけど、途中で生えている草ががさごそと揺れたのよ。


 なんでしょうねと、草をかき分けると・・居ました、うさぎさんが。 

 白い毛に長い耳、まさしくウサギそのもの。額に角らしき突起があるのを除けばだけどね。ひょっとすると、この子が角ウサギってやつ?

 可愛らしい外見に騙されてしゃがみこんで撫ぜようと手を伸ばしたら、見事に齧られたよ、肉食ウサギかこいつは。思わず手を引っ込めたけど、指が切れて血が出てしまった。角ウサギはぴょんと跳ねて、あっという間にどこかへ逃げて姿が見えなくなってしまったけど、どうしよう・・・怪我なんてして帰ったらまたかーさまに怒られてしまう。

 

 治癒の魔法が使えればこんな小さな傷くらいすぐに直るのになあ、生憎とまだかーさまから治癒の魔法なんて教わってないからどうしようも無い。ふと、水の精霊さんってそういうのに詳しくないのかしらと思い立ち、幸いなことに傷は大きくないからと傷のついた指をしっかりと逆の手で握りながら泉へと急いだのよ。

 

 「こんにちは~水の精霊さん居ますか~」

 「あら、しばらくぶり」水面から静かに水の精霊さんの姿をとって水が空中へと浮かび上がり、にこやかに話しかけてきたのであたしはすかさずお願い事を。

 

 「精霊さんって治癒魔法使えます?」

 「・・・メアリーさんって、ほんとに何も知らないのね。治癒魔法って言うのは本来私達水の精が持っている力なのよ」

 水の精霊さん曰く、自分が使えなかったらいったい誰が使えるのかと。魔法に関しては殆ど知識のないあたしとしては、なるほどと頷くしかなかったのよね。教えられるままにやってみたけど、なかなかうまくいかなくって、何度も何度も繰り返し、やっと【治癒】が成功した時にはさすがにほっとしたわ。かーさまに口を直してもらった時と同じ様に出血が止まり、痛みも引いていくのが判って、不思議よねぇと思いつつ精霊さんから詳しい話を聞きだした。


 【治癒】は魔法で傷を治すわけではなく、自然治癒力を魔法で高めて促進するらしい。だから傷は直るけど、その分体力・生命力は消耗してしまう。病気についてはそもそもの原因を取り除かないと一時的に回復したように見えるだけで完治しないし、骨折とかは骨をきちんと真っ直ぐに直してから治癒しないと折れたままで繋がってしまう。なかなか使い所が難しいらしい。ゲームのように治癒魔法かけたら瀕死の人が瞬く間に元気になるって事は在り得ないのね。なかなか使う場面やタイミングが難しいみたい。【治癒】じゃなくて、生命力自体を委譲する魔法もあるらしいけど、こんな小さなあたしが生命力委譲したら、すぐ無くなっちゃうわ。そのうち聞く事にしておいた。

 

 水の精霊さんには散々迷惑をかけてしまった様だけど、途中で角うさぎっていうアクシデントが有ったから仕方の無い事。もともとここに来るはずだった用件を済ませないとね。


 「これ、お土産に持って来たの」ポケットに入れておいた魔宝石を取り出して水の精霊さんに渡すとすごく驚かれた。

 「こんな純粋な魔力で出来た石をもらえるなんて。本当にうれしいわ。私で力に成れる事があれば何時でも呼んで下さいな。水が有る所ならどこでも直ぐに行きますから」

泉の中へと魔宝石をそっと入れながら真剣なまなざしで答えられてしまった。

 「うん。そんな場面が有ったらお願いします。ところで樹の精と土の精にもこれを・・・」

余分に持ってきた魔石を取り出して渡してもらおうとしたんだけどね、水の精霊さんは少し困ったような顔になってしまったの。


 樹の精さんは、もう大分とお年のようで、樹そのものがもう寿命なんだとか。もう枯れて行くばかりで、手の施しようがないらしい。治癒の魔法で回復しないのか聞いてみたけど、それは一時凌ぎにしかならないのと一言でかたずけられてしまったよ。

 別の場所でまた樹の精として生まれ変わるから良いのよって言われても何も出来ないのも悔しいじゃない。新しい樹に移ったり出来ないのか聞いてみたんだけど、元々がその樹から魔力を引き出しているから、離れられないって。


 ん?なんか閃いたよ。


 「樹から離れたら魔力が途切れてしまって新しい所に移れないって事は、離れるときに魔力が途切れないように別の所から供給されればいいんじゃない?あたしの魔力じゃ駄目かしら」


 そう、あたしが魔力タンクの役割を果たそうかと提案してみたのよ。樹の精さんに頑張って姿を現してみて貰ったら、確かに力弱い姿だったわ。

 そっと触れて魔力を放出してみたら、思っていたよりも吸収できるみたいで、樹の精さんの体の緑の輝きが少し増してきたの。

 行けるかも、と樹の精さんを抱きしめるようにしながら魔力を渡して、老樹から引き離し、傍に生えている若い樹のほうへと連れてった。老樹よりは細いけど、そこそこの太さの幹に樹の精さんを近づけながら、その樹の幹へも逆の手で魔力を注ぎ込むと、同じ魔力同士が引き合うのか樹の精さんは幹の中へするっと入ることが出来たようで、お引越しが完了?


 「移れた?」樹に向かって話しかけると、樹の精さんは顔だけ幹から浮かび上がらせて、「大丈夫みたいです。まだ落ち着かないけど・・」

 「これ、どうしたら良いかしら」と魔石を見せると

 「根の所に埋めてほしい。そうすればゆっくりと吸収できるはず」


 さて困った、スコップが無いから穴が掘れないわ。


 あたしの困り顔に水の精霊さんがヘルプしてくれた。

 「土の精に掘って貰いましょう」


 そう、もう一人いたのよ、3人で住んでいたはずの最後の一人、土の精さん。岩の傍の地面に魔石をそっと置くと、小さな人の形をした土の精さんが姿をみせて、いいのか?と言いたげに見上げてくるので、「いいよ、あげる」と頷いてみせる。

 土の精さんは岩の傍の地面に穴を掘って、置いた魔石を埋めると、見る見る大きく成長し始めて、白い髭を生やしたお爺さん風の姿に変わって行ったの。

「すまんのぉ、こんな上等なものを貰ってしまって。ワシは土の精いや、もう精霊になりかけて居るか。水の精だけでなく、わしまで大きくしてもらって、全く在り難い事じゃ」

 話し方も見たとおりのお爺さんだったわ。


 樹の精さんの根のところに穴を掘ってもらい、残っていたもう一つの魔石を埋めてあげた。多分今度ここへと来た時には樹の精さんも力を回復してるんじゃないかな。


 なんだか、精霊さんに振り回された一日だったわ、今日は。


 なお、樹の精さんのお引越しなんて、精霊さんがこの世界に誕生して以来前代未聞だそうだ。


あたしって、やっぱりこの世界のイレギュラー?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。